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ヒロイン候補その2、その3登場

SIDE オレガノ


なんだアレは、なんだアレは、なんだアレは、なんだアレは、なんなのだアレは!!

目が合った瞬間生殺与奪権を握られているのがわかってしまった、私は狩られる側なのだと、抵抗など無意味なのだと理解させられた

顎で使われたというのに攻撃されなかったことに心底安心した

なぜだ!!

アレはコボルトだ、上位種でもないただのコボルトだ、それは間違いない

レベル上限もせいぜい10程度の弱小の魔物

本来何十匹集まろうとも私の敵ではない

だと言うのに……


SIDE OUT


どうやって帰るのかちょっと心配してたけど、ちゃんと侯爵家の馬車が待機していた

城壁の内側に入るとそこにはヨーロッパの古い町並みから近代的なものを排除したような光景だった

もちろん遠くに城も見えている

少し離れた所に市場があるようで威勢の良い呼び込みの声と良い匂いがしてくる

王都名物という声も聞こえてきたのでおそらくここは王都なのだろう

匂いから察するに食べ物の味にはそれなりに期待できそうだがあの中年貴族が弱小魔物である私にちゃんとした物を食べさせてくれるか甚だ疑問だ

ドナドナ中に出たのよりはましな物が出てくるとは思うが・・・フラグを立ててしまっただろうか?


暫くすると人の行き来が減り建物のランクも上がってきた

おそらく貴族の住む区画に入ったのだろう

馬車はその中でも一際豪華な屋敷の外門を潜った

屋敷の入り口で馬車を降り中に入ると、そこには1人の見た目高校生くらいの猫耳美少女メイドが立っていた

ガチの猫耳美少女メイドである、私がちょっとくらいい思考停止したとしても仕方のないことだろう

その間に猫耳美少女メイドは射殺さんばかりの目で私を見つつ私が抱える少女を奪い奥へと駆けていった

……意外とパワフルだな

ハッ!?いかん置いてけぼりをくらった、追いかけねば

今なら匂いを辿っていけるはずだ(犬鼻万歳)


「あら、なぜコボルトがここに?」


追いかけようとする私の耳に上方からそんな声が聞こえてきた

声のした方を見ると赤い絨毯の敷かれたT字型階段(ヨーロッパ風の高級ホテルや劇場なんかにありそうなやつ)からニゲラと令嬢、それぞれの従者に魔物という団体が降りてきていた


令嬢の魔物は白銀の熊だった

私を連れてきた魔物使いの熊っぽいやつとは格が違いそうだ

その熊だけが私を警戒している、他の者達はコボルトごときどうとでもできると思っているのが態度からわかる

令嬢も最初はそうだったが自分の魔物を一度見ると驚いた様子を見せ興味深そうに再び私を見て近づいてきた


さすがに回りの者達は止めようとした(ニゲラ以外、どうやらニゲラは令嬢にあまり良い感情を持ってないようだ)が、それに構わず目の前までやってきた


「臭いますわね」


開口一番それかい!!

まぁ、あの市が始まる前に洗われたとはいえ石鹸なんて上等な物(あるのかどうかも知らないが)は使ってないのだ、森からここ(王都)に来るまでについた臭いがとれるとは思わない


……そう考えるとあの娘は執事に運んで貰った方がよかっただろうか?

臭いが移ってなければいいけど……


ともあれ、臭いのはお互い様だからね?

地球の貴族も風呂に入らず体臭を香水でごまかしていた時期があったが彼らもこのような臭いになっていたのだろうか?

前世でエレベーターの中で化粧の濃いお姉さま方に囲まれていた時のことを思い出してしまうよ

ひょっとしたら人間の鼻にはちょうどよい匂いなのかもしれないが今の私にはきつ過ぎる(犬鼻残念)

思わず口元が引きつってしまった

令嬢の眉がピクッと動いたが特に何も言わず私を観察している

一方的に観察されるのもあれなので私も観察させてもらおう


令嬢は多少幼さが残っているが綺麗と評していい顔立ちと美しい銀髪を持つ少女だ

胸も巨乳とまではいかないが大きめで腰もしっかり括れている

体幹も鍛えられているようだし手を見ても“ティーカップより重い物は持ったことがありませんなん”なんてことは無さそうなので何かしらの武術を修めているだろう

審眼で見たところ悪い人間ではないようだがプライドは高そうだ

総評するとちゃんとした矜持を持った貴族令嬢様と言ったところか


「いつまでコボルトなんぞを見ているつもりだ」


痺れを切らしたのかニゲラが苛立たしさを隠さず令嬢に文句を言ってきた

ちなみにこのニゲラも見た目は乙女ゲーだったら俺様系を担当しそうな黒髪の美男子なのだが何となく人として薄っぺらい感じがして小物臭が拭えない


「あら、殿方が女性をせかすものではありませんよ?

特にニゲラ様は私の婚約者なのですからもっと広いお心を持っていただかねば」


「ちっ、余計なお世話だ

だいたい女はでしゃばらず男の後ろに控えてればいいんだよ!」


「確かに殿方を立てるのが淑女としての美徳ですが、殿方にも相応の格がなければ立てようがありません」


うわ~、漫画やアニメだったら確実に火花散ってのよ

でもさっきからお互いの従者がオロオロしてるから止めたげなよ

従者の胃がストレスでマッハになるよ?

それにしてもニゲラは市の時と随分口調が違うな、父親とかの前でだけ良い子ちゃんぶるタイプか?


「っ、この俺様を侮辱する気か!?」


「とんでもありませんわ、ニゲラ様ならば素晴らしい格をお持ちになれると信じての苦言でございますわ

お心を悪くなさいませんようお願い致します

それでは今日はこれで失礼させていただきます、ごきげんよう」


相手をするのが面倒くさくなったのか、とっとと話を打ち切って令嬢は帰って行った

ニゲラは怒りに震えながらそれを見送っていたな

まぁ、『素晴らしい格をお持ちになれる』とか持ち上げるようなこと言ってたけど表情と台詞のニュアンスは『無理だろうがな』と露骨にいってたからな

一人称が俺様ってほどプライドが高いニゲラにとっては我慢ならないだろうね

もっとも、私も令嬢と同意見だがな!


「あの売女め、少しくらい従えた魔物の格が上だったからといっていい気になりやがって

何が俺様より優秀な男を見つけてその男から承諾を得たら婚約は解消してもらうだ、なめやがって

必ず俺様の前に跪かせて許しを請わせてやる」


周りには聞こえないような声でそう呟いて(犬耳なめんな?)ニゲラも去って行った

条件付とは言え婚約解消の話をしていたのかぁ、それで最初から不機嫌だったわけだ

…何か変なスイッチ入ってたっぽいけど令嬢は大丈夫かねぇ?

まっ、いくら心配したところで私に何ができるわけでもなし、気にしてもしょうがないだろう

それより現状では私の方がピンチだ

令嬢の香水のおかげで鼻が馬鹿になって匂いを追えなくなってしまった

下手に動いて何かやらかしたらただでさえ立場の弱そうな彼女にさらに迷惑をかけることになるかもしれない

どうしよう……

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