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2に多少の追加ありデス

ヒロイン予定その1登場

2~3週間ほどたった頃やたらと立派な城壁に囲まれた街に着いた

これまで立ち寄ったところはせいぜい村としか言えない規模だったので王都かそれに準じた街なのだろう


此処に着くまでに私以外のコボルトは全員目から光が消えている、俗に言うレイプ目というやつだ

全員が目を覚ましたあと2匹の魔物(それぞれ虎と熊に似ていた)を従えた男が脳に直接響くイントネーションの変なカタコトの言葉(おそらくスキル、この男は所謂魔物使いなのだろう)で自分達がこれから人間に売り飛ばされるという事実を知らされた

当然騒ぎ出す者がいたが首輪を発動(全身に激痛がはしるっぽい)され大人しくなった

それからというもの逆らったり騒いだりしたら首輪発動(あの男以外でも札のような物を持っている護衛も発動できるようだ)、メシ(ご飯とは言いたくない)は何かドロっとしたまずいスープとちょっとすっぱいパンを1日1回ではこうなるのも仕方ないだろう


私達は今城壁の外に作られた特設会場的な場所(魔物が入った檻付き馬車が整然と並べられていてる)で特別な市とやらに出品されている、現在3日目(全7日間)

主催しているのは国のようで販売交渉をしているのは商人ではなく騎士だった

魔物はランクでエリア分けされて販売されているようで、当然私達がいるのは低ランクの魔物を集めたエリアだ

客は魔物使いと貴族のようだ、もちろんほとんどの貴族は魔物使いも連れている

意外なことに弱い魔物の需要もそれなりにあるらしく私と共に連れてこられたコボルトも半分が売約済みの札を首から下げているか連れられていってもうここにはいない

どうやら買うためには金銭だけではなくギアスという魔物使いが持つスキルで魔物を支配下に置かなければならないようで、これに失敗すると当然買えない

もっともコボルトで抵抗に成功したのはいない

ギアスがかかると体のどこかに紋様浮かび上がってきて主人の言葉を理解できるようになるようだが同時に命令に逆らうこともできなくなるようだ

檻の外で枷や首輪を外された瞬間逃げ出そうとしたコボルトが動きを止められ自分で自分の顔を殴り続けるという罰を与えられていた

おそらく売れ残って奴隷になった場合この首輪をしたまま強制労働なのだろう


今、私は檻の隅で柔拳法の気殺(気配を殺す技術)と審眼を使って客の観察をしている

気殺を使って動かずに居ると視界に入っても注目されることはないので買われる心配はない

良さそうな客が現れたら気殺を解こうと思っているがコボルトを買おうとしている客の中には今のところ現れていない、むしろ審眼が「ダメ、絶対!!」と主張しているのばかりだった

しかしこのまま売れ残っても碌な事にはならない気がする

どうしたものかと悩んでいた私の耳に怒気をはらんだ声が聞こえてきた

声のする方を見てみると裕福そうな中年貴族が中学生ぐらいの娘を叱責しているようだった

その娘を見た瞬間、審眼が「OK、この娘だ!逃がすな!!」と伝えてくるのがわかった



「こんな下級の魔物すら従えられんとは情けない

兄のニゲラは中級のブラッディファングを見事に従えたというのに、よくもシュヴァルツ侯爵家の家名に泥を塗ってくれたものだ」


「……申し訳、ありません…お父様」


中年貴族は侮蔑の色を隠そうともせず、おそらくは実の娘であろう少女を見下ろしていた

少女は俯き震えながら父親の視線に只管耐えている

そこに赤黒い狼のような魔物を従え、中年貴族の横にいた少年(おそらく彼がニゲラだろう)が口をはさんできた


「父上、もう帰りましょう

コリアンダーに従えられる魔物なんてきっといないのですよ」


「ふん、確かにこれ以上遅くなるとヴァイス侯爵との約束に遅れてしまうな

しかし、シュヴァルツ侯爵家の娘が魔物を使役できないことなどあってはならん

コリアンダー、この際どのような魔物でもかまわん、従えて帰って来い

それができるまで我が家の門をくぐれると思うなよ

オレガノ、コリアンダーに付いておれ」


「畏まりました、旦那様」


中年貴族は少年の意見を聞き入れ帰ることにしたようだ、娘と執事1人(他にもぞろぞろ使用人をつれていた)を残して


彼女は涙を堪えながらギアスかけていっている

こちらに向かって順番にかけていっているところを見るとちゃんとランク順に並んでいるらしい

私的には彼女に私以外の魔物を従えてもらっては困るのだが、彼女の必死な様子を見ていると早く楽になってもらいたいという相反する気持ちが湧いてきてしまう

が、私と同じような気持ちになっているのはどうやら少数派のようだ

執事は無価値な物を見るような目で見ているし、大半の人間は面白い見世物でも


見ているような表情をしている、民度低すぎだろう


ようやく彼女が私のいる檻の前に来た

彼女の顔色は悪く呼吸も乱れている、この檻担当の騎士も心配そうに見つめている(彼は少数派に属する人間のようだ)

おそらくギアスの使いすぎと精神的なプレッシャーのせいだろう

私は気殺を解き前に出て彼女と視線の高さが合うようにしゃがんだ



SIDE コリアンダー


また駄目でした

お兄様の言うとおり私に使役できる魔物なんていないのかもしれません

私はシュヴァルツ侯爵家の……お母様の名誉に傷を付けるだけの存在なのかもしれません

そう思うと涙が溢れそうになります

体もギアスの使いすぎで熱を出したときのように重く息苦しいです

このまま気を失えたら、いえ、いっそ死んでしまいたい

そう思いながら次の檻に着くと1匹のコボルトが私の目の前まできてしゃがみ、じっと私を見ています

その行動はまるで自分にギアスをかけろと言っているようです

そして私を見つめるその目はお母様の様に優しい

もしかしたら今度こそ、そんな思いを胸に震える手をかざしギアスをかけます

コボルトの体を淡い光が包みやがて光はコボルトの右手の甲に集まり紋様となりました

騎士様がコボルトを外に出し、首輪と枷を取って私の前まで連れてきて言いました


「おめでとう、このコボルトの主は君だ」


その光景を唯呆然と見ていた私はその言葉を聞いてようやく実感が湧いてきました、どうしようもなく涙が溢れてきます

コボルトの顔を見ようとしても涙でよく見えません、それでもなぜか微笑んでいるような気がしました


そこで私の意識は遠のいていきました

意識を完全に失う前にどこか遠くで聞こえた『よく頑張ったな』という言葉は騎士様のものだったのでしょうか?それとも……


SIDE OUT



震える手を私に向けてギアスをかける彼女


彼女のギアスを受けて彼女が他の魔物を従えることができなかった理由がわかった

おそらく一般的なギアスは服従を強制してくるのだろう

だから魔物側の抵抗を上回れるかどうかで成否が決まる

だが彼女のギアスはただ従うか拒否するか問いかけるだけ、魔物側に決める権利があるのだ、拒否権があるのに相手に従うなんて魔物はまずいない

彼女のギアスが成功しないのは当然の結果だ

これが彼女の優しさからくるものなのか、元からの仕様なのかはわからないが……


何はともあれ私は彼女のギアスを受け入れ右手の甲に紋様が浮かび上がった

それを見た騎士が檻から私を出し首輪と枷を取り彼女の前に連れていった

呆然としていた彼女だが騎士の言葉を聞きようやく再起動を果たしたようだ

表情は呆然としていた時のままだがちゃんと私を見ている、もっとも号泣と言っていいレベルで涙を流しているので視界はぐちゃぐちゃだろうけど

下心ありで彼女を主とした身としてはちょっと心苦しいが、こうまで喜ばれるとやはり顔が緩んでしまう

とはいえ、いつまでもこのままという訳にはいかない

執事も支払いを終えたようだし、とりあえず彼女に泣き止んでもらうべく行動しようとしたとき彼女が崩れ落ちた

少々焦ったが彼女が地面に倒れる前に抱きかかえることに成功した

安心して気が緩んだせいでいっきに疲れがでたのだろう

「よく頑張ったな」

と思わず呟いてしまった、幸い誰にも聞かれていなかったようで一安心だ

彼女をお姫様だっこして目線と仕草で執事に帰ることを伝える中年貴族達が帰って行った方に歩き出した

上手く伝わったようで何よりだ

視線が合った際に執事が若干青ざめたようだが自業自得だろう

必死な彼女をあんな目で見ていたのだ、私が彼に向ける視線が少々冷たいものになっても仕方ないことだよね、うんうん


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