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ほんの小さな物語

作者: ハギ

ピアノの曲からイメージをもらって書いた作品なので、ぜひゆったりとしたピアノの曲を聴きながら読んでほしいです(^^)

「私、あのきれいな橋まで行きたい!」



 何度も言ってる私のわがまま。あなたはちょっとだけ表情を緩ませて、

「僕が連れていってあげる。一緒に行こうよ」

 って言う。優しいんだ。いじわるしたくなっちゃう。

「一人でも行けるもん!」

 小さくあなたは笑う。

 本当はあなたと一緒に行きたい。あなたと一緒ならどこまでも行けるって思えるの。

「うん、君なら一人でも大丈夫」

 あなたはとっても大人。いつも静かに私のそばで微笑んでくれる。ずるいんだ、その笑顔。

「でも……やっぱり遠いよ」

 そうなんだよ。あのきれいな橋って、いつもずっとずっとむこうにある。あんなにきれいなのに遠すぎる。

「行けるよ。いつか……きっと」

 本当にそうかな? でもあなたはうそを言わない。ずっと一緒にいてくれる。だから……

「そうだよね! いつか行けるよね!」

 あなたを信じる。きっとそんなこと言ったら、また顔が赤くなっちゃうんだろうなぁ。

「そうだよ、僕たちには立派な翼があるだろ?」

 私たちの背中にある、ちょっと頼りない翼。あなたはそれを立派だと言った。あなたの目はまっすぐで、ずっと遠くを見てる。

「……うん」

 次に見えた時にはふたりで行こうね。いつ見れるかな? さっきからずっと雨が降ってるし。

「次に晴れたら、きっと見れるよ」

 本当かな? 本当に見えたらいいな……。

「……あれぇ?」

 外を見るとさっきの雨がうそみたい。暗い雲のスキマからきれいな空が見える。

「あっ!! 見て!」

 やっぱり見えたね。きれいな橋。いろんな色の、大きな橋。

「行こう! ほらっ」

 翼を広げて彼のあとを飛ぶ。さっきまで雨宿りしていた木も、あんなにちっちゃくなっちゃった。

 でも、どんなに飛んでも橋に近づけない。どうして? 私達は行っちゃいけないの? どうして消えそうになっちゃうの?

「消えないで! お願いっ!」

 でも少しずつ色は薄くなって、どんどん見えなくなるの。やっぱりダメなんだね。

「……ごめんね」

 どうしてあなたが謝るの? あなたは何も悪くないんだよ。あなたに見せてあげたかっただけなのに……。

「ううん、ありがとう」

 ダメだよ、そんな顔しちゃ。私も頑張って笑うから、ね? お願いだからそんな顔しないで。

「うん」

 あなたの笑顔は私は大好き。だからあなたがステキに笑う顔が見たかったの。

 でもあなたはつらそうな顔をした。一番見たくない、あなたの悲しそうな表情。

「ごめん……ごめんね……」

 やっぱり私ってダメだよね。あなたを困らせて、悲しませてばかりだもん。どうしてうまくできないのかな。

「ねぇ、ほら見てみなよ」

 あなたが言うから顔を上げた。

「あっ……」

「見えたね」

 それは小さいけれど、すっごくきれいなたくさんの色の橋。あなたに一番近くで見せたかった、見てほしかった、世界で私が一番きれいだと思うもの。

「きれいだね。少し濡れちゃったけど」

 晴れてるのにここだけ雨が降る。でもいいんだ。あなたが笑ってくれた。一番ステキなその笑顔で私を見てくれた。

「そうだね」

 これからも私のそばにいてね。ずっとずっと、あなたの笑顔が見たいから。



     私、幸せだよ。





――小さな公園の噴水に、小さな小さな虹がかかる。そこには2匹のテントウムシが、寄り添うように飛んでいた。

いかがでしたでしょうか。おそらくテントウムシの小説を書くのはこれが最初で最後になると思います(笑)女の子(?)の視点で書くのは今回が初めてですが、30分ほどで書き上げた割にはまぁまぁうまく書けました。ほんの少しの、ほんの小さな幸せ。それが実は一番の幸せなのかもしれませんね。感想、評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 読み始めてから、当たり前のように主人公や相手は人だと思ってしまいました。最後にテントウムシだとわかった時、なんだか暖かい気持ちになれました。
[一言] 何だか可愛いお話ですね!短くて読みやすかったし、またこんな感じの作品を書いてホシイです(^O^)   絵本を読んでいる感じがしたので、子供にも理解できると思います!ハギさんの近くに子供がいた…
[一言] 読ませていただきました。読み始めたときには、描写不足が目立っているようで、なかなか情景が浮かんできませんでした。しかし、最後の一文を読んだところで、あえて描写を節制していたのだな、ということ…
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