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あふれる
あたしは…
何のために在るの?
夢の中で沙織が叫ぶ。
そうしたら夢に雨が降ってきた。
両手の掌いっぱいに溜まった雨水を一気に飲み干すと、沙織は透明になった。
涙が、全身を覆う。
目が覚めると、頬が濡れていた。
おひさまは今日もにこにこ笑って憎い。
朝ご飯は家族みんなで食べる唯一のとき。
だがママもパパも笑わないしお喋りしない。
喋ってるのはテレビだけである。
テレビとお話しながら沙織は朝ご飯を食べ終わる。
「いってきます」
沙織の小さな声はテレビに打ち消された。