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おやつ  作者: 文歩
11/11

かげ

こはるはやさしく千秋の目を見つめた。



「千秋くんは誰からやさしさとか教えてもらったの?」



こはるのまっすぐな言葉に、千秋は泣き崩れた。



こはるは驚いて、とりあえず千秋に駆け寄った。



こはるを抱き寄せた千秋の体温は温かかった。



人って誰でも温かい。



なのに、その温かさに気付ける人って多くないんじゃないかな。



気付けたこはるはしあわせだなと、静かに思った。



ママはどんな温度だったかな…



こはるがママを想う頃、千秋は自分の母親を想っていた。





「おかあさーん!待ってー!」



幼い千秋が母親に駆け寄ると、母親は両手を広げて千秋を包み込んだ。



その瞬間、場面は変わり、母親は泣いている。



「千秋がそんなことするはずない…」



まわりの大人はきつねの目で口はカラスになり母親を見つめる。



「やめて…やめてくれ…!お母さんは何も悪くないんだ!」



千秋はそう叫ぶと我に返った。



「千秋くん…どうしたの?」




「ごめん!今な、頭の中でお母さんと会ってたんだ」



「頭の中?お母さんには会えないの?」



「生きてると思うけど、会っちゃいけないんだよ」



こはるはよくわからないがとても悲しい気持ちになった。



千秋くんはお母さんに会いたくても会えない。



こはるは…会いたいのかな?



こはると千秋くんは二人ともお母さんに会いたいのかな?



「なんで会っちゃいけないかわかる?俺に会ったらお母さん悪口言われちゃうんだよ。犯罪者育てた母親ってな」



千秋の影はあきらめとさみしさを映していた。



「犯罪ってなーに?」



無垢な瞳は千秋を見つめる。



「こはるはまだ小学2年生だもんな、わからないよな。俺2年前、人を殺したってことにされちまったんだ。つまりそれが犯罪者っていうんだ。殺してなんかないのに、みんな信じてくれないんだ。マスコミが俺を犯罪者に仕立てあげて、みんなを信じさせるんだ!だからテレビは嫌いなんだよ!」



表情を重くする千秋に、こはるは少し恐怖を感じた。



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