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はぁーぁ、また振られちゃったわ。

あたしってそんなに魅力無いのかしら。

…そう、朝日 由良は夜空を見上げた。


銀髪のポニーテールを揺らしてヒールの音を鳴らして街をトボトボと歩く。

ふとガラスに映る自分を見る。


綺麗…よね?

じゃあ何でよ…と一人問答を繰り返すが、いつも行き着く答えは同じだった。


「女じゃないから…よね」


小さく溜息をついて映る自分に苦笑いしてから駅へ向かおうと振り返る。


ドンッと人とぶつかってしまった。


「痛いじゃないのよ、どこ見て…」


ぶつかった人は、まるで王子の様に線の細い男だった。夜風にウルフヘアの黒髪がなびいていたのに、由良は目を奪われた。



「すまない。怪我は無いか?」


澄んだ声で由良を気にかける。

小さくコクコクと頷くと、男は綺麗に微笑んだ。


「良かった。では、失礼する」


靴音を鳴らして人混みへと消えていく彼。

一目惚れをしてしまった由良。


「あっ!ぼーっとしてたら連絡先聞くの忘れちゃったわ…。でも、ほんとに綺麗な子だったわね…」


さっき振られて落ち込んでいたことなど忘れてしまうほどの、由良にとっては衝撃的な出逢いだった。


「はぁ、また逢えるかしら…」



そして、自分を受け入れてもらえたら…

そう思いながらフワフワした気持ちのまま由良は帰路に着いた。




次の日。

いつも通りの時間に起きて身なりを整える。

由良はアパレル店で働いていた。

店長代行でなかなか仕事は出来る。


鼻歌まじりにアイシャドウとリップを上機嫌に塗っていく。


「そういえば今日から店長変わるんだったわね。

どうせ来るなら昨日みたいな…」


昨夜、ぶつかった彼を思い出す。

鏡を見ると頬が赤くなっていた。

そんな都合良い偶然ある筈ないのに、と由良は自分に言い聞かせた。


「よし!今日も綺麗よっあたし」


特注のヒールを履いて、お気に入りの赤いバッグを肩から掛けると家から出ていく。

そこで携帯電話が震えた。


「あら、誰かしら。こんな早く。

あぁ、鍵当番の音都(おと)ちゃんね。」


メール内容は、もう新しい店長が来ているとの事だった。


「もう来てるの?くそ真面目ね〜

仕方ないわね、タクシーで行こうかしら」


手を挙げてタクシーを停めると乗り込む。

暫くすると職場が見えてきた。

裏口へと周りチャイムを押す。


ガチャリ。

鍵が開く音。

扉が開かれ、由良は目を見開いた。



「えっ、ぇ…、うそ…」


扉を開けたのは昨夜出逢った、黒髪の彼だった。



「……、あぁ、昨夜の…

偶然だな。今日からここの店長になる。

蘭月(らんげつ) (みやび)だ。宜しく。」


凛としているが柔らかく笑いかける雅。

由良はまだ口をパクパクしていた。



「ん?口はある様だが挨拶は出来ないのか?」



やだ、好き…。

由良は心の中で呟いた。



「び、ビックリしただけよ…。

あたしは朝日(あさひ) 由良(ゆら)。店長代行よ。」



あ、女口調で話しちゃった…

引かれたかしら…


不安そうに雅を見るが、彼は気にしていないようだった。


「君が朝日 由良か。これから頼むぞ」


雅は手を差し出した。


「え…?」


「由良、握手を知らないのか?」



クスリと笑う雅。

由良、と呼ばれたこともそう、握手をして触れてしまったこともそう。

由良は胸を煩くさせていた。


「さ、入って色々この店の事を教えてくれないか?」


「わ、分かったわ…」



由良は、雅から目が離せなかった。



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