煉獄コンビニ 第四話「帰還と再起」
第四話「帰還と再起」
部屋に戻ったのは、いつの間にか日付が変わった後だった。
けれど、窓の外はまだ夜のままだ。
カーテン越しに黒い空を見上げながら、ユウはジャケットを脱ぎ捨て、壁にもたれかかる。
「いつまで続くんだ、この夜は……」
右腕の傷はすでに止血されていたが、服には血がにじんでいる。
洗っても、たぶん落ちない。
ユウはシャツを脱ぎ、洗面台でざっと傷口を確認する。
深くはない。だが、鈍い痛みが抜けない。
部屋には冷蔵庫、電子レンジ、そして買ったままのカップ麺。
第一話で買ったそれに湯を注ぎながら、ユウはつぶやいた。
「カップ麺食って、ちょっと歩いて、ボコられて……。なんなんだよ、黒魔女って」
カウンターに腰掛けて麺をすすりながら、ユウはPCを開く。
モニターにはLINEの通知が点滅していた。
『状況報告を』
司令からの短いメッセージ。
「銃撃戦あり。亡者兵三体、すべて旧式装備。だが、行動パターンは洗練されていた。黒魔女は健在。接触し、戦闘。こちら損傷、帰還」
返信を打ち込むと、すぐに返答があった。
『了解。黒魔女の記録は過去に存在せず、情報不足』
「ふざけてんのか。人間の動きじゃねぇぞ、あれ」
ユウは湯気の立つカップを見つめながら、眉をひそめる。
あの少女の姿。
獣のような直感。
だが、斬撃は無駄なく整い、声には意志があった。
「……あいつ、何か目的があるのか?」
『黒魔女は獣狩りの狩人だ、彼女はお前の事を獣だと思っているらしい』
それ以上の司令の返信はなかった。
「俺が、獣?どう言う事だ?」
ユウは立ち上がると、クローゼットから予備装備のケースを開ける。
弾倉、マガジン、携帯食料、手榴弾、防爆ゴーグル、そしてポーチに入った新しい指示書。
そこには「防衛省 提供支援物資」と記されていた。
「誰が……これを? 司令、お前か?」
『そうだ……これで敵を倒し夜明けを目指せ』
ユウはバックパックに必要な装備を詰め直すと、深呼吸をした。
「……今日はもう寝よう」
外を見るとまだ夜は続いていた。
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