表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

24企画参加作品

寝言が答え合わせ

作者: 御田文人

なろうラジオ大賞6参加作品

 子供の声で起こされた。

 唸るような声、そして、もぞもぞ動いている。


「どうした?苦しいか?」

 明かりをつけようとした時、その唸りは笑い声に変わった。そして、手を叩いている。


「寝言?」

 同じく起こされた妻が言った。

「そうらしい」

 私は拍手が止まるのを見届けて、布団をかけなおした。


「まだちょっと笑ってるな」

 私は息子の寝顔を覗きこむ。


 今年小学校に上がった息子。

 色々あった。


「叩く子がいるから学校行きたくない」

 そう言って泣かれた翌日、先生と電話で喧嘩した。ただただ宥めるような先生の応答に納得がいかず

「何もしてくれないなら自分がやる!相手とその親と話をさせてくれ」

 と詰めよった。


 加干渉の懸念を盾に『まぁ、一旦落ち着いて』と言われたが

「子供がSOSを発したら、大人が動いて見せるのも教育です!」

 と引かなかった。


 その甲斐あってか、それなりの対応はしてもらった。ただ、学校からは、きっとモンスターペアレントと思われているだろうな。

 別にいいさ。


 他にも細かい心配事は、色々あった。


 いずれも解決し、「今は楽しいよ」と息子は言う。


(ホントかな?)

 自分を鑑みるに、いまいち安心できない。

 自慢じゃないが、私は小学校、いや、保育園年長の頃には立派に嘘をついていた。


「人を叩いたら、なんで悪いと思う?」

 そんなことを問われた時は、本心ではなく、親や先生が好きそうな内容を考えて答える子供だった。


「考えすぎだよ。この子は、そんなにヒネクレてません!」

 と妻は言う。


 しかし・・・オレの子だぞ。。。


 最近、何かにつけて思い出す。いじめられた時、特に親に悟られないように気を使っていたことを。


「この子はちゃんと相談したじゃない!パパとは違うよ」

 そうだろうか?

 生来、楽観的な妻とは、この件に関してなかなか話が合わない。


 そんな日々があっての今日だった。


「楽しそうだよ」

 妻が言った。そして、寝ている息子の頬をつついて、布団に入った。


「楽しそうだな」

 私も息子の鼻をつついて、布団に入った。


 さすがに寝言まで、親に気は使わないだろう。もし、そこまで気が使えたとしたら、逆に、たいしたもんだ。

 一旦は、そう思うことにする。


「だが、まだ安心は出来ないぞ」

「はい。はい。おやすみ」

「・・・おやすみ」

「ふふふっ・・・」

 しばらく断続的に、寝言笑いをしていた息子は、次第に深い寝息を立てていった。



 

お読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
寝言かあ。 安心したいけど、難しい問題だな。 ワタシも虐められた事は親に言わなかったし、父の懸念は解る。 ただまあ、問答無用の味方がいるのは嬉しいよね。
温かい気持ちになりました。 いざという時、両親が味方になってくれるというのは本当に嬉しいものなんですよね。
ほっこりする家族のお話、大好物です! 立派なご両親だと思います。 全力で息子さんを守ろうとするお父さん、息子さんを信じるお母さん。 どうぞ寝言の通り、息子さんが楽しく学校生活を送っていますように……!…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ