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違う! そっちじゃない!

 あれは幼少期のこと。幼稚園のころであっただろうか。

 過去と今がリンクするけれど、あのころに倣って一人称は『僕』としようか。

 

 僕には、手痛いと共に笑える話がある。今回はそれについて語るとしよう。



 夜。

 外食にておいしい夕食を食べた僕たち家族は、家に帰ろうと父の車に乗り込んだ。


 父は運転席、兄は後部座席に乗る。そして、僕は助手席に乗る母の膝の上に座るところだった。

※ おおよその年齢がバレそうだけれど(今更か)、当時はチャイルドシートどころかシートベルトの着用義務すらなかった。膝の上はどうだったのかとか、義務がなければ安全を放棄していいのかという話ではある。時代のせいにするなという声もありそうだけれど、そういう時代だったということで話を進めさせてもらいたい。

 今は着用義務があるのはもちろんのこと、安全確保のためにも絶対に着用してください。このお話は着用しないことを誘引・勧誘・助長するものでは決してありません。


 父と兄は既にドアを閉めて準備万端。僕と母は二人ということもあって少し遅れていた。


 ややあって、二人の体勢が整ったと思った母がドアを閉めようとする。僕の手が、まだドアの閉まる位置に置かれていることも知らずに。

 当時の車はそれなりの強さで閉めないと、半ドアになってしまってしっかりと閉まらなかった。

 だから、()()()ドアは閉められた。


 バタン!


「ぎゃあああああああああああああん!」


 それは閉まった瞬間と同時だったのではないかと思うくらい、僕は一瞬にして泣き叫んだ。痺れも感じるような激しい痛みだった。


 皆が何が起きたのかと思っていたであろう中、父が真っ先に気がついた。


「手を挟んでる! ドアを開けろ!」


 その声に、母が反応する。

 そして、母は思いがけない行動をとった。


 窓を開け出したのである!


 まだ、窓がスイッチで開閉する車ばかりでなかったころだ。父の車もそうではなかった。そのため、母は手動でくるくるハンドルを回していたわけだけれど、どうだろう? その光景は笑えてはこないだろうか。

 僕のことは無視してほしい。当の本人が書いているのもあるけれど、こうして文章をダカダカとパソコンで打っているように、何の後遺症も残っていないのだから。


 事態が好転しないことに焦っているのか、母は窓を上げたり下げたりしていた。右にくるくる。左にくるくる。


「違う! そっちじゃない!」


 父のその言葉で気がついたようで、母はようやくドアを開けた。


 完全に痛みから解放されたわけではなかった。痺れも痛みも残っている。でも、いくらか楽になったのは確かだった。もちろん、その後で病院に行ってもいる。既に書いてしまったけれど、特に問題はなかった。

※ 挟んだのが手の平全体であったことなど、運もよかったのでしょう。どうか、皆様はお気をつけて。


 焦りと動揺のせいで奇想天外な動きをしてしまった母には悪いのだけれど、あの時の光景を思い出すとつい笑ってしまう。


 あり得ないミスなんてない。焦りと動揺で頭が真っ白になった人は、何をしてもおかしくない。

 だからこそ、人の失敗を過剰に責めてはいけないと思っている。

 社会で特に思い知らされたとばかり思っていた。

 でも、違ったようだ。


 なるほど。僕はあの時、既にそのことを教わっていたというわけか(笑)

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