星座の輝き
成野淳司は乙女座である。
急に何を言い出すんだ、こいつ。などと思った方もいるだろうか。
小一のころ、乙女座であったがゆえにからかわれたことがあった。今回は、その話をしようという次第だ。
「男なのに乙女座なんてあるわけねぇだろ」
言ったのは、同学年の幼なじみの男子である景織。幼なじみの中でも、特に小さなころから一緒に遊んでいた幼なじみ中の幼なじみだった。
突っ込みどころがあるのは分かっている。星座は生まれた月日で決まるもので、性別は関係ない。
おそらくではあるが、影織は乙女と乙女座を混同していたと思われる。
その後、男子にも乙女座がいることまでは受け入れたようだったけれど、どうにもバカにしていた。
『乙女座? 女みたいな星座だな』
実際にそのような修正したくなるようなセリフを言ったわけではないが、そのような心持ちであっただろう。
あれは、学校の外の、遊具もある遊び場で鬼ごっこをしていた時だ。
鬼をしていた僕に対して、景織と他数名は大して高くはない滑り台の踊り場にいた。小一でも、ジャンプをすればあるいは届く程度の。
はしごを登れば、斜面(滑る方)へ逃げられる。斜面から逆走したら、はしご側へ降りて逃げられる。
ここは、ジャンプをしてタッチ一択しかない。
でも、僕は背が低かった。
どんなに跳ねようが、無情にも手は届かない。彼らの足どころか、踊り場の下側にさえも。
「あいつ、乙女座だからジャンプ力が低いんだ!」
もちろん、言ったのは男子の乙女座をバカにしていた景織だ。
女子はジャンプ力があまりない(男子と違って無闇に跳ねないだけだろう等のツッコミは置いておく)とみて。
『ほらな。あいつは乙女座だから、ジャンプ力も女子並みなんだよ』
ということだろう。
もう、全国の乙女座にも乙女(女子)にも謝ってほしいところだ。
悔しさのあまり、泣きながら鬼ごっこを続行したことを覚えている。
くっ!
星座カーストを生み出したあの漫画の影響が、この時もまだ残っていれば。
(当時、僕もよく知らなかったけれども)
『人はおろか、天使や悪魔でさえも降って伏せろ』
なんて、カースト上位の乙女座として意気がっていられたのに。
とはいっても、このあとすぐに影織は僕のことを乙女座だからとバカにすることはなくなった気がする。
僕と同様に漫画好きの景織。あの漫画を読んで『乙女座はバカにしないでおこう』と思ったのか、別の要因かは定かではないが。
僕はといえば、この件もあって一時は乙女座であることが嫌であったりもしたと思うけれど、あの漫画もあったからか、いつの間にかそんなことはなくなっていた。
そして、今ではもう嬉しさにあふれてさえいる。
「乙女座の私には、なんちゃらリズムな運命を感じられずにはいられない」
このセリフを、全力で言うことができるのだから。




