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第四話  王宮と猛牛

洗礼の事故により王宮へ来た一行だったがそこで出会った王国騎士団長に稽古をつけてもらえる事に。




初めて父上以外の人と稽古をつけてもらう。

しかもそれが王国騎士団長なのだから贅沢この上ない。


「誰か!シリウスに木剣を渡してやれい」


猛牛様の一言で兵士10人くらいが皆、木剣を持ってきた。過剰すぎる…

アルデバラン様に父上と普段はどんな風に稽古をしているか聞かれたので正直に答えた。


「なんと!防具は疎か盾も使っていないだと!?」


猛牛様に驚かれた。周りの兵士も驚いた。

皆のヒソヒソ声が聴こえる。

「マジか」「ウソだろ」「誰なんだあの子」「死ぬ気か…」

全部聞こえてるから…


「シリウスよ、どうする。盾や防具を使うなら使っても良いぞ」


「いえ、いつも通りいかせてもらいます」


「あい分かった。ではお互い木剣で良いな?準備が出来たら何時でも来るが良い」


準備は出来た。さあ胸を借ります猛牛様!


「兄上頑張ってー」


「ああ、任せろー」


とは言うものの、対峙して改めて感じる。スキがない…

父上の時もスキはないが…

なんというか体格差があり過ぎる。

体格差がこれ程だとどう攻めたら良いか。

そして押し潰されそうな圧力。

いや弱気になるな。スキがないなら…

作れば良い!


「うおおおお!!」


「わああ、突っ込んでいったぞあの小僧!」

「なっ、速いぞ!」


低めに突っ込んで足払い!

(ヒョイ)

流石に避けるか…けど…突き上げ!

(カンッ)

弾かれたっ!か〜ら〜の〜…回転蹴り!

(スッ)

その瞬間アルデバランの袈裟斬りが迫った!


「ぬぅんっ!」

「ヤバい!」

(ガコーン!!)


「ぐあぁ」(ドスンッ)


痛ってぇー!!間一髪木剣で受け止めたけど腕力でそのまま飛ばされてしまった…


「ぉぃぉぃ…なんだあの小僧」

「あんな戦い方…何なんだいったい…」


考えろ…どう倒すか考えろ…

やはりあの巨体は下が弱いはずだ。

何か、何かあるはずなんだ。

なら、通用するまで攻め続けるのみ!


(シリウス…良い太刀筋だ、とても5歳とは思えん。しかしこの戦い方は…)


この後30分以上も止まること無く攻め続けたシリウスには、もはや周りの兵士達も目を輝かせ声援を贈っていた。何度倒されても立ち上がり向かってゆく。まだまだ未熟で幼く直線的ではあるが、その動きは野性的で、迷いなく、決して引かない攻めに、アルデバランにはトワイスの影がチラついていた、が少し違う。正攻法でも邪道でもない。シリウスの野性的な部分に強い違和感を感じていた。この時既にシリウスはボロボロの状態であった。にも関わらず一歩も引こうとはしない……

そこへ謁見の終わったアケルナル達が帰って来た。


「アルデバラン!貴様ァー!!」


(ビクッ)


シリウスはこの一瞬のアルデバランの隙を見逃さなかった。


(隙ありっ!)

「うおおおおおお!!!」


ッパーーン…


アルデバランも体を引き木剣で薙ぎ払おうとしたが、体の引きが甘く木剣の持ち手の甲にシリウスの一撃が届いた。一撃と言うには余りに軽く少し当たっただけであるが、確かに捉えたのである。


「うわあああああやったぞあの小僧」

「わはははは本当にやりやがった」

「マジか信じられないあんな小さな子が!」


見ていた兵士達は大喜びのお祭り騒ぎである。

何せたった5歳の子が猛牛と恐れられた王国騎士団長アルデバランから1本取ったのだ。

無論アルデバランも手は抜いていたし加減はしていた。

しかしどんなにハンデを与えたとて絶対に越えられるはずのない壁をこの小さな少年は越えてしまったのである。


(やっと…やっと届いた…)


「シリウス!!」


満身創痍で倒れたシリウスに駆け寄る面々。

すぐさまカペラが回復魔法をかけた。

そしてアルデバランに詰め寄るアケルナルである。


「アルデバラン!これはどういう事だ!貴様何をしたのか分かっているのか!貴様には騎士としての誇りやプライドはないのか!?相手はまだ5歳だぞ!大体貴様は前々からあれほど……(グチグチグチグチ)」


「……シリウス、ベテルギウスにカペラ、そしてプロキオンよ。申し訳無かった。ワシがもっと自重するべきだった。本当にすまない」


「アケルナル様。アルデバラン様を責めないでください。これは僕からお願いした事なんです。ですから…アルデバラン様、謝らないでください」


「シリウス…」


アルデバラン様は自責の念からかなかなか頭を上げなかった。

それがチョット心苦しかった。

僕を抱える父上の手が震えている。


「……お前は、ボロボロじゃないか…」


「……それより父上…アルデバラン様から1本…取りました」


「……ああ……ああ」


……見間違いだろうか。目の上も腫れてハッキリとは見えなかったけど、父上と母上が薄っすら泣いているように見えたし、少し笑っているようにも見えた。


「兄上、帰りましょう」


プロキオンは笑ってくれていた。




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