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第四十八話  卒業と失踪5




ここは学園の地下室なのか?こんな所があったとは。

プロキオンが光魔法で明かりを灯してくれた。

するとそこには誘拐された生徒達が魔法陣の上に並べられている。コペルニクス先輩やニハルも居た。

そしてその中心にサルガスを抱えた黒い影が立っていた。


「貴様!殿下からその薄汚い手を離せ!」


サルガスは黒い手の様なもので拘束されている。

するとその黒い影は段々と霧が晴れると共に正体を表した。

なんと騎士科の貴族で最初に姿を消した生徒だった。


「ア、アルファルド……貴様」


「やあサルガス…不様だな。いい気味だよ」


「何が目的だ!この貴族の出来損ないの玉無し野郎!」

(最近のシリウス……ダビーの影響かしら…)


「出来損ない?出来損ないはそこの平民共じゃないか!その平民を庇う貴族も又愚民だ!」


「おい、コイツ多分人間じゃねえ…ちょっと違う…そんな感じがする」


ダビーの言うことだ、多分そうなのだろう。


「こんな事して、何が目的だ!」


「目的?良いだろう…こいつ等は俺様より無能のクセして何故就職先が見つかったのだ!俺様はこいつ等よりも良い成績を収めてきた!何故俺様が失敗しなければならないのだ!子供の頃から父上に言われてきた!俺様は貴族としてこの国の中枢で働くのだと!なのに…なのになのになのになのになのになのに!!なぜ俺様がこんな目にーーー!!」


「その性格じゃねえのか?今時俺様とかこの国じゃ王族でも言わねえよ。そこで抱えてる殿下ですら言葉遣いは俺よりよっぽど辨えてるぜ」


「五月蠅い…五月蠅い五月蠅い五月蠅い五月蠅いーー!…だがもう良いこれで終わりにしてくれる。俺様は人智を超える力を手に入れるのだ!」



「ヤバい!構えろ!」


すると魔法陣が黒く光りサルガス達人質から魔力を吸っていく。

アルファルドの身体は見る見るうちに禍々しい姿へ変貌を遂げもはや人では無い何かに変わっていっく。


「フッフッフッフ。俺は神の…神の眷属になるのだーー!」


魔族だ…誰に言われるまでもなく皆がそう直感した。その時だった!

フェリスが一瞬の隙にサルガスを拘束していた影に一撃を入れ奪い返したのだ。

その行動が合図と言わんばかりに一斉にアルファルドへ斬り掛かった。


「殿下大丈夫なのです?」


「ああ、助かった…フェリスだったか…?」


「良かったのです!じゃあフェリスも戦うのです!フェリスは強いのです!」


前衛4人がアルファルドへ攻撃している中カラとプロキオン達は学生達を救助した。

しかし今度は魔法陣から見たことのない魔獣や魔物が湧いて出てきた。


「スイッチだフェリス!」


コルの号令でフェリスとコル入れ替わった。


「フィールドデコイ!ストーンスキン!金剛力!学生達は俺の後ろで魔法を頼む!!」


召喚された魔物達はコルに集中した。

しかし強くは無いが次から次へときりが無い…

これではあの時と同じだ。

前衛4人はよく戦っている。むしろ魔族相手に圧倒的に押している。シリウスが聖銀のナイフで斬りつけるも倒れない。何故か致命傷にならない。正に万策尽きた感じだった。

しかしそこへサルガスが両手剣で斬り掛かった!


「エンチャント!シャイニングブレード!!」


光魔法武器付与術だ。

サルガスの一撃がアルファルドの胸を切り裂く。

苦悶の叫び声を上げたアルファルド。


「勝てる!殿下の攻撃を援護しろー!」


アケルナルの一言で前衛の動きが変わった。

流石は全員実戦のプロである。

キッチリ仕事を熟す。


「許せ…アルファルド!」


サルガスの剣先がアルファルドの胸を貫いた。


「が…ば…馬鹿な…俺様は…不死身……神…の」


アルファルドが元の姿に戻ってゆく。

召喚された魔物達も煙の様に消えていった。


カラがアルファルドに駆け寄り全力で回復魔法を掛け始めた。

致命傷過ぎる…


「回復魔法を使える人は全員彼に!早く!」




…夜が明け事後報告が行われた。

誘拐された生徒達は皆衰弱し魔力枯渇を起こしているものの生命に別状はなし。

アルファルドは一命を取り留めたが未だ意識が戻らず昏睡状態だという。

現在アケルナル様によって現地で実況見分が行われているそうだ。


「此度は皆の協力の下、事件を究明する事が出来た。感謝する」


「犠牲者が出なかったのが幸いでした」


「けど魔族なんて御伽話だぜ。それがここ1年ちょっとで2回目だ」


「国としても対策を練らねばならぬな…」


「アルファルドさんの処遇はどうなるのでしょう」


後々分かった事だが、事件の首謀者であるアルファルドはザウラク子爵の息子で小さい頃から虐待にも似た過度な教育と期待を背負わされ精神的にボロボロだったのだという。

そこに就職失敗が重なりこの逆恨みの様な事件を引き起こし、自分より弱くて就職に成功した平民を無差別に狙ったと言うのが事の顛末だ。

貴族を誘拐したのはその平民と一緒だった為に巻き込まれたと言う。

因みに就職で失敗したのはダビーの言った通り普段の生活態度、つまり内申書が原因であった。

幸い死者は出ておらず、彼もまた犠牲者だったのだろうが余りにも身勝手過ぎる為情状酌量の余地は無くかなり重い判決が下ったという。


「アルファルドは目を覚まし次第、本人から話を聞いてから処遇を決めるつもりだ。ザウラク子爵は近々に審問会を開かれ、最低でも罰金刑と謹慎。降格となれば最悪領地の一部没収は免れぬであろう」


そこへアケルナルが報告に来た。


「陛下、殿下にお見せしたい物が有ります」


そう言ってアケルナルが取り出したのは首飾りだった。

そしてもう一つ。


「コレに御座います。これは地下で召喚が発動したと思われる魔法陣をデッサンしたものです」


そう言ってアケルナルが1枚の紙を机に差し出した。


「これは…」


学生達の顔色が変わった。


「こんなの人間業じゃありません。出来るとしたら最初から知ってて…狙わないとこの魔法陣は描けません!」


いつになくスピカが興奮している。


「どういう事?」


「これは…この魔法陣は9×9の陣術式で…」


「つまり?」


「その術式の数は…例える単位が有りません」


「良く分かんねえな…どういう事だよ」


「アンタねえ!まだ分からないの!?この術式の組み合わせの数は万とか億とか兆とか京とかの単位で表せないのよ!多すぎて表す単位が無いの!」


「だから魔法陣を発動する式にするのは、この大陸で特定の砂粒を1つ見つけるようなものなんです」


「そんなもんどうやって見つけるんだよ」


「知っていた…と見るのが現実的であろうな」


「そしてその首飾り…魔法陣発動の為か、自身を依り代にする呪具なんじゃないでしょうか」


「他に裏で操っていた奴が居るかもな」


「しかし…では本当に魔族が?」


「きっと人の弱みにつけ込む卑怯者なのです!」


「卑怯者ってお前…」


「いや、予もフェリスと同じ考えだ。マタルと言いアルファルドといい、つけ込まれたのやも知れん」


「どっちにしろ気を付けるしか無さそうだ」


こうして学園の行方不明事件は一応解決した。

誘拐された生徒達も数日で意識が戻り無事、卒業式に出席できた。


「別に俺達卒業式まで居る必要無かったんじゃねえのか?」


「まあまあ、事件解決したとはいえ油断は出来ないしね」


「ここのご飯は美味しいのです!」


「折角制服が似合っているのだからもうちょっと居ても良いのよ」


「まあ、いつまでもここに留まるわけにもいかないからな」


俺達はサルガスの卒業を無事に見届け、元の冒険者に戻っていった。











(やはり駄目だな人間というのは。馬鹿だから使いやすいが……まあ良い。やはりあれは危険だ…排除せねば…)




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