第四十話 お試しパーティー
憲兵隊へ小悪党を突き出しこれでフェリスも自由の身になったのでようやく別れることが出来た。とても感謝された。
そのままドゥベ辺境伯の屋敷へ向かった。
小一時間位で屋敷の前に着いたがこれは屋敷と言うよりは宮殿に近い。お城とは言わないが宮殿である。
シリウスが門番に素性を話すとニワカには信じてもらえなかった。紹介状等も持っているわけではなかったが、王城の通行証とギルドのプレートを見せると急いで取次いでくれ、すんなりと入れた。
屋敷に入ると1人の貴婦人が出て来てくれた。
「シリウス?本当にシリウスなの?」
シリウスのお祖母様シャウラ・フォーマルハウトだった。
最後に会ったのは2歳。プロキオンが生まれた時以来の出会いだ。
「立派になって…元気で何よりよ」
今はドゥベ辺境伯とその息子、つまりカペラの兄フルド伯父さんは留守にしているという。戻りは夜なのでシャウラは泊まって行くといいと言うが既に宿を取ってしまった。
その後はシリウスの事プロキオンの事ベテルギウスやカペラが元気でやっているか等質問攻めであった。
今日到着した疲れも有り、明日また来ると約束し暗くなる前に屋敷をあとにした。
翌朝ドゥベ辺境伯とフルド伯父さんに会いに向った。
2人共快く迎えてくれた。
ドゥベ辺境伯は筋骨隆々のとてもお祖父ちゃんとは言い難い見た目だった。フルド伯父さんは母上に似てとても優しい目をしていたが、やはり偉丈夫といった感じだった。
パーティーの皆を紹介し、お互いの近況などを話した後、魔族の話をした。
やはり信じられないといった反応であったが、そのお陰で叙勲された話など、国王も承知している話をすると少し頭を抱えていた。
兎に角武者修行を兼ねてこの土地に来たことを伝えると暗い森のダンジョンを教えてくれた。
基本的に無害な為、年に何回か浅い部分しか討伐しないそうだ。そして奥には異様に強いハイフルフの様な狼が住み着いている為危険であまり近寄らないのだそうだ。
何度も討伐に出兵しているがとても広くて深いダンジョンの為、今解っている最深部に行くまでも一ヶ月近くかかるのだそうだ。
またダンジョンより南側はすぐに隣国アリオト民族連邦共和国の為、無駄に行かぬ様にと念を押された。
最後に選別として未完であるが最新のダンジョンの地図を貰い屋敷を後にした。
王都ギルドで受けた依頼の他に序にフォーマルハウトでも何か良い依頼はないかギルドへ物色しに向った。
〜フォーマルハウト領ギルド〜
「これなんかはどうだ?」
「なになに〜…暗い森ダンジョンの魔物討伐及びマッピング」
「良いんじゃないかしら」
遂行失敗ペナルティも無いので受けることにした。
するとそこにフェリスが居た。
「あー!探したのです!」
「や、やあ元気そうだね…」
「フェリスはパーティーに入れて欲しいのです」
「えー、どうしよう…」
理由を聞くとどこもパーティーに入れてもらえず困っているらしい。
しかしフェリスに何が出来るかも分からないので、二つ返事は出来ない。
「俺達は暗い森とダンジョンへ武者修行に行く。結構キツイ長丁場になると思うが付いてこれそうか?」
「大丈夫なのです!暗い森は熟知してるしフェリスは強いのです!それに命令は守るのです!」
仕方ないので1日だけお試しで組んでみることにした。
こうしてようやっと暗い森へと出発することが出来た。
移動しながらフェリスが何を出来るのか聞いておいた。
「フェリスは格闘なのです!」
「モンクみたいな感じで良いのか?」
「そうなのです!ただ魔法は殆ど無理なのです。でも獣転化出来るのです!」
「何ですって!?」
カラが酷く驚いた。
獣転化とは無属性魔法の1つで獣人や龍族などが血統本来の姿に変化する魔法だと言う。
フェリスの様な猫人族なら猫科の獣化。カラの様な龍族なら龍になれると言うが、混血が進んだ現在ではほぼ無理だと言われている。
そもそも獣人や龍族は混血から出来た種族だ。
「フェリスさん意識は?転化中に意識は有るの?」
「大丈夫なのです!」
「とても信じられないわ…」
「どういう事なのカラ?」
「獣転化って言うのはね、魔獣のような強さと引き換えに狂戦士のような破壊衝動で手が付けられないと言われているのよ。でも意識があるって言うことは制御出来ているって事よね?」
「メンタルスタビリティを使うのです!」
父上の、俺の今練習している無属性魔法だ…精神を制御しているのか?
「成る程…理屈は分かったわ。でもニワカには信じられないのよ」
そんな会話をしながら進んでいると遂に魔獣と出会した。
レッドマンティス、大型のカマキリ魔獣である。
「じゃあいつもの様にいくぞ!フェリスは自由に動いてみてくれ」
そうしていつもの様にコルが引き付けるとシリウスが斬りかかた。それにフェリスも追従した。
シリウスの一撃をレッドマンティスが前足の鎌で受け止めた。
「硬てぇー!!」
その隙にフェリスが腹に殴りかかった。
効いているようで怯んだレッドマンティスだがすぐに反撃してきた。
思った以上に機敏な動きに手こずっているとダビーが片側の羽を切り落とした。
「羽持ちのインセクトは飛ばれると厄介だ。あと弱点は火だ!」
カラがファイアーボールを放ち怯んだ隙にシリウスが腹下へ潜り込み薙刀を突き刺した。
「浅いか…」
その時フェリスはレッドマンティスの後頭部にしがみつきそのまま首をヘシ折ってしまった。いや、ネジリ折った…
余りにも豪快な攻撃に一瞬で呆気に取られていた。
倒れたレッドマンティスだったが、何故かフェリスは攻撃を止めない。
腰の節目辺りに一撃を加えた。
カマキリは動かなかった。
「今のは…?」
「虫型はしぶといのです!それで喰われた奴を何人も見てきたのです!フェリスはこの森の事は詳しいのです!」
頼もしい限りだった。




