第三十八話 思春期の苦悩
最近の僕達はラーンさんやアルリシャさんに会いに魔道具研究所によく足を運んでいた。
ラーンさんはいつも大型魔導装置の研究をしている。
なんでもこの大型魔導装置はラーンさんの子供からの夢なんだそうな。
「私は子供の頃から身体が弱くて、あまり外で遊ぶ事は出来なかったのです。いつも1人で家に籠もっては冒険者の旅記録や見聞録を読んでは心躍らせていたものです」
確かにラーンさんの見た目はいつも不健康そうだ。しかしそんな子供時代があったとは。
「それとこの大型魔導装置は何か関係有るんですか?」
「この大型魔導装置は古代の賢者が発明したという転移装置なのです」
「てんい装置?」
「そうです。転移装置とは一瞬で任意の場所へ移動できる装置の事です」
「そんな事が可能なのでしょうか!?」
「勿論まだまだ時間は掛かりますが。けして理論上不可能ではないはずです。実際にあともう少しと言う処まで来ました。ただ色々複雑でして、失われた技術というのはそう簡単には復活させられません」
「でもそれが有れば色々な所に旅ができますね!」
「そうです。私の様に身体の強くない者でも色々な所に行き、色々見ることが出来ます。国王陛下も幼少期から病弱で見聞を広める事が出来なかったそうです。陛下はそんな私の想いを知ってか知らずか、この研究を是非にと勧めて下さいました」
「そうか…陛下も」
「不敬かも知れませんが、私にとって陛下は同じ志を持つ仲間なのです」
「同じ志を持つ仲間……」
「プロキオン君も是非そんな仲間を沢山作って下さいね」
〜後日〜
実家に帰省したとある日、父上と母上に学園での活動を話しした。
両親はとても嬉しそうに話を聞いてくれた。
そして今自分が悩んでいる事も相談した。
「僕は今まで恵まれた環境で過ごしていたんだなって。分かってるつもりだったけど…」
「どうしたの急に?」
「世の中には辛い人が沢山いて、少しでも役に立ちたいと思うけど、まだ僕にはそんな力がなくて……」
「お前の出来る事を、成すべきことを1つづつやっていくしか無いだろうな。焦っても仕方ないさ」
「プロキオンの人生はまだまだこれからよ。どんどん成長して貴方の言う力を手に入れていけば良いじゃない?」
「たまに……困っている人を安心させたいのに、その気持ちを伝える方法が見つからないと、無力感に押しつぶされそうになります」
「………」
「どうすれば良いのか……」
「側に居てあげて」
「側に…?」
「なにかする必要も言葉も必要ないと思うぞ」
「それだけで良いのでしょうか?」
「それだけよ。出来そうで中々出来ない事よ」
「それだけで…」
「何があっても側に居てあげてね」
〜王立学園〜
今日もニハルは自信無さげで、だけど最初より笑顔が増えた気がする。
メイサは相変わらずメイサだけど、最近は暴れたりせずよく話を聞いてくれるようになった。
スピカはずっとスピカのままで優しくてしっかり者で……でも最近は色々自信が付いたような。
そうか、皆成長してるんだ。
僕は成長してるのかな……
いつか皆でこの学園を卒業する時、僕はどれだけ成長出来ているのだろう。
これから先どれだけの人と会って、どれだけの人に助けられるのだろう。
そしてどれだけの人に手を差し伸べる事が出来るのだろう。
「ちょっとプロキオン早くしなさいよー!」
「プ、プロキオンいくよ?」
「忘れ物は無い?教科書持った?ほら〜寝癖が付いてるよ〜」
(あれ…スピカってこんなに……)
「あ…だ、大丈夫だよ」
「プロキオンどうしたの?」
「う、ううん何でもない。行こうスピカ」
「うん!」
兎の尻尾達が嬉しそうに揺れていた…
アオハル編 完
やっとアオハル期が終わりました。
これも読んで下さっている方々のお陰です。
しかし物語はこれから激動の時代へ突入します。
長い作品になるとは思いますが、是非今後とも宜しくお願い致します。




