第三十七話 魔力暴走
大変申し訳有りません。エピソード37を入れる前に38を投稿してしまいました。
謹んでお詫び申し上げます。
落ち着いた日常を取り戻した僕達は魔道具の制作に取り掛かっていた。
無駄な魔力を抑えつつ、抑えた魔力を霧散する前に吸収する。そして溜めた魔力を自分の意思で放出する。
何かのアクセサリーとして常に身につけておける物で開発を進めていた。
「やっぱアクセサリーといったら指輪よ!指輪!」
「私は可愛いペンダントがいいな」
「ぼ、僕はブレスレットかな」
こういった物は作っている過程が面白いのは分かるが皆言いたい放題である。
「筐体は出来る物の大きさで最終的な判断をした方が良いんじゃないかな?」
まずは完成までのロードマップ作りだ。
最初に既に有る魔力蓄積魔道具を研究。
魔力を抑える方法を探し
その後、自身の無駄な魔力だけを吸収する方法を見つける。
最後に蓄えた魔力を自分の意思で使う。
と言うことになる。
「ねえちょっと!既に有る魔力を蓄積する魔道具って意図的に魔力を込めるのよね?魔力を抑えて無駄になってる魔力だけ吸収ってどうするのよー!」
「そ、それを考えるんじゃないの?」
「う〜ん…」
初手から躓いた。
「因みに魔法の杖も魔道具の1つなのよね?魔力に集中する為に有るよね?」
「ま、魔力を増幅させるんじゃないの?」
「魔力の流れの循環を良くするんじゃないの?」
「何よそれ!魔法のイメージを高めるんじゃないの?」
結局僕達は何一つ分かっていなかった。
埒が明かないので最初は実際に魔力蓄積の指輪を調べることにした。
「感謝なさい!お母様から1番いいヤツを借りてきてやったわ!」
「こ、この指輪…す、凄い高いんじゃないの?」
「いいのよ!どうせ使ってないんだから」
女王様に感謝しながら実際に色々調べたが、指輪自体に術式の刻印が1つしか刻まれておらず、嵌め込まれている魔石が魔力を吸収している事。
吸収した魔力は本人しか使えないことが分かった。
また、この刻印は放出する時に反応する術式なのが分かった。
「単純にこの指輪に、魔力を抑えて本人の無駄な魔力だけを吸収する術式を刻印すれば完成するって事だよね?」
「それは…ちょっと現実的じゃないかも」
スピカが困った顔をしている。
「それは、物凄い量の術式を計算しなきゃいけないの…」
「ち、因みにどれくらい…?」
「その指輪の刻印は4×4の単純なものなんだけど…放出という刻印と本人っていう術式と無駄な魔力って刻印と魔力を抑える刻印の術式の整合性を取らなくちゃいけなくて…4×4の術式は880通りで、最低でもその3乗だから…6億8147万2000通り…」
「………………」
「あと…」
「ま、まだあるの…?」
「指輪じゃ1つしか刻印出来ないの…スペース的に。表と裏でも2個が限界かも…」
「そうなの!?」
「もし3つも付与するとしても針のような細い魔法の杖で付与するような…私のタクトでも太すぎるし、そもそもそんな小さく術式は書けないわ」
「そりゃ……世の中にないわけね…」
「でも腕輪とかならスペースは問題無いと思うよ」
「でもそれでも大変だね…」
前途多難である……
〜1週間後〜
「かなり行き詰まってしまった様ですね」
「はい…コペルニクスさん」
「どうでしょう、ラーン所長のところへアドバイスを貰いに行くというのは」
「そうよ!研究所に行って聞くべきよ!」
「本当は頼りたくなかったんだけどなぁ」
〜王立魔道具研究所〜
ラーンさんに会いに行くと大型魔導装置の研究で手が離せないので少し待って欲しいと言われた。その間アルリシャさんと談話していた。
「へぇ〜、じゃあ私の後輩に成るんですね〜!」
暫くするとラーンさんが来てくれた
「君達が魔道具クラブに入ったのは少々驚きました」
「はい、ただ……行き詰まってしまって」
ラーンさんに事の経緯を話した。
「別に頼ることは何も悪い事では有りませんよ。ただ先ずは自分達でっという考えはとても素晴らしいと思います」
「有難う御座います」
「しかし、面白い着眼点ですね。私も興味が有ります。ただ今の時点で1つ思い付くのは、何か1つで起動しなければイケないと言う訳では無いのですよね?」
「どう言うことですか?」
「例えば…指輪を2重にするとか…あとはブレスレットを2連3連にするとかですかね?」
「それだ!」
「おやスピカさん何か思いつきましたか?」
「な、なんとなくなのですけど!術式を重ねて反転術式で同調させれば使えないかなと」
「成る程!」
「まだやってみないとわかりませんけど…それでも術式計算は880通りを2、3回だけで済むかも知れません!」
「試してみる価値は有りそうですね」
それから僕達はスピカの指示の下、四人で術式計算を分担する事になった。
〜2ヶ月後〜
「やっと術式は出来たね」
「やっぱり1個つづやっていくと時間掛るね…」
「一番大変だったのは魔力制御の刻印を1から探すのが苦労したね」
「も〜やだ…地味過ぎて死ぬー…」
「ぼ、僕は皆と出来て楽しいけど」
「後は筐体に刻印するんだけど、何が良いかな?」
「指輪は駄目なんでしょー?」
「金属じゃないと駄目なのかな?」
「刻印自体は布でも革でも出来るけど魔石の兼ね合いが有るからね」
「な、悩むね」
「マイラさんのお店でも行ってアイデアを盗もうか!」
「賛成ー!」
〜マイラの魔導具屋〜
(カランカランコロン〜)
「いらっしゃい〜、あ、プロキオンさんとスピカさん〜今日はお友達も一緒〜?」
「はい、同級生で同じクラブなんです」
マイラさんに事の経緯を話すと快く受け入れてくれた。
「あ!聖銀の……ほ、包丁?」
「へへへ〜個人的に発注してみました〜」
「あははは、今度母上か兄上に伝えておきます。すぐに買いに来ると思いますよ」
「あ!こ、これなんてどうかな?」
それはアンクレットだった。
「それ良いじゃない!赤ちゃんなら腕より足の方が良いだろうし!」
「でもお披露目する時に足首だと分かりにくいね…」
「じゃあお披露目用にバングルか…アームレットにしようか」
原理はこうだ。
まず地肌に魔力制御の刻印を施した布を巻く。次に革製のバンドを重ねてつける。このバンドには表に無駄な魔力という刻印と裏に自分のっという刻印を施した。
次に魔石が付いた金属製のバングルを最初の革製のバンドの上に重ねて付ける。
この金属製のバングルにも革と同じ様に刻印を施した。
この双子の様な刻印を反転術式で行ったり来たりリンクさせた。あとは魔石が勝手に吸収してくれるので台座に独立して放出と刻印したのだ。仕組みは単純だが表と裏、3枚重ねなんて誰も思いつかなかった事だ。そして今回の功労者はやはりスピカだった。
「刻印は付与出来たよ」
「いよいよ実証研究だね!」
「…………」
「誰がやるのよ……」
「メ、メイサじゃないの?」
「何でアタシなのよー!」
「だって、1番放出得意じゃない」
「メイサ、あまり集中せずに無責任に魔法放ってもらってもいい?」
「なんか腹立つわねその言い方…いきなり腕が吹き飛ぶとか無いでしょうね?」
「………」「なんで黙るのよー!」
結局メイサが実証実験してくれることになった。
「にしても実際着けると可愛くないわね…ゴツイし」
「まだ試作段階だし仕方ないよ」
「まあいいわ!ファイアーボールで良いわね?」
「メイサ頑張って!」
「ファイアーボール!」
すると普通のファイアーボールが出てきた。
次は外してやって貰うと荒々しいファイアーボールが出てきた。
この後も色々試して貰い、効果が実証された。
「遂に完成だー!早くコペルニクスさんに見てもらおうよ!」
そうして部室に向かった4人がコペルニクスに観てもらうと興味津々で観察していた。
「これは凄い…同時に違う効果が発動するのは最低でも5×5の術式からです。それを…4×4を重ねて同調させるなんて」
「あとは見た目さえ何とかなればねー」
「術式や筐体の小型化等はラーン所長に頼めば改良してくれるんじゃないでしょうか?それに…この技術ならもしかするとオートマタにも応用出来るかも知れません!」
〜王立魔道具研究所〜
「皆さん本当に頑張りましたね。これが有れば魔力暴走で悲しい思いをする子供が居なくなるかも知れません。是非国王陛下と神殿に掛け合って広く普及出来る様に手配したほうが良いでしょう」
皆、達成感と人の役に立つ発明をしたことに喜びと満足感を得ていた。
「っで、この魔道具の名前は決まっているのですか?」
「そういえば何も決めてなかったね」
「ま、魔力制御蓄積装置!」
「何よそれー!全然可愛くないしお洒落じゃないじゃない!」
「タラゼドの守り…なんてどうかな?」
「ナニソレー!お祖父様の名前じゃないー!」
「だって陛下は今まで一生懸命弱い人達の為に頑張ってきたんだよ?だから…」
「今回はスピカが一番頑張ったから僕はそれでも良いかな」
「まあこの国発祥って事も分かるから良いかもね」
「ぼ、僕もそれでいいと思う」
「陛下もきっとお喜びになるでしょう。陛下の思いを子供達が紡いでゆく。きっとこの国は、この世の中はもっと幸せで溢れていくのでしょう」
その後タラゼドの守りは改良を重ねられ、後の世には出産祝いとして多く普及する縁起物となった。
〜後日王宮〜
「うおおおおお予は果報者じゃあああああ」
大泣きする陛下であった。
「聞いたかカストル卿!見たかアルカイド卿!孫娘達が予を、予の名前でこんなに素晴らしい物を発明しうわあはああああああああああ」
「陛下…お喜び申し上げます」
「陛下の想い…報われましたな」
皆感動して涙を浮かべていた。
「では……予も着けるとしよう!!!」
「陛下は魔力暴走致しませんよね?」
「霧散する程の魔力も御座いませんよね?」
「…………………むぅ」




