第三十六話 メイサの決意
〜星詠みの森から帰還した翌日〜
〜学生食堂〜
「そ、そんな事があったんだね…」
「アタシ…もう要らないわ…」
「だ、駄目よメイサ…しっかり食べなきゃ…」
僕達は星詠の森でのショックから立ち直れないで居た。
メイサは感情の起伏が激しいせいか、落ち込み方も一番酷かった。感受性が豊かなんだろう。
スピカも優しい子だから同じ位辛い筈なのにしっかりしていた。責任感の強さだろうか。
僕も昨日は大泣きしてしまった。兄上でさえ、いや兄上が泣いている姿自体初めて見た気がする。
授業もままならず、コペルニクスさんも察してくれて今は無理して来なくても良いと言ってくれた。
数日後、僕達は相談室に呼ばれた。サルガス殿下が居た。
「お前達、最近生活態度に問題がある。学生は学業が本分である!少々弛んでおるのではないか?特にメイサ…」
「サ、サルガス殿下それは…」
僕が言い訳をしかけたが殿下は右手をサッと上げて静止した。
「あの日、悲しかったのはお前達だけでは無い。予も自分の無力さを知り、悩んでいるのだ」
(サルガス殿下も…)
「シルマは星詠の森の姫君として立派に努めを果たした。彼女は非常に慈悲深くハイエルフだけでなく我々やその先のもっと多くの者たちの事を考えていた。彼女は姫君として確固たる信念と覚悟を持っていたのだ。だがお前はどうなのだ!」
「……………」
「お前自身が公務である星詠の森へ付いてくると言ったのだ。王族として良くその事を考えるのだな」
サルガス殿下はメイサに喝を入れたのだろう。だが…王族の厳しさを見せつけられた感じだった。
王族に涙は許されない。そんな処だろうか。
そして殿下には、既に強い覚悟がある様だった。
メイサは少し泣いていた…
翌日僕達は揃って王宮へ呼ばれた。
サルガス殿下からの呼出だった。
しかしサルガス殿下は現れず、とある一室で待つように言われ案内された。
暫くすると、隣の部屋で声が聞こえ始めた。
その声は筒抜けだった。
それはサルガス殿下と兄上が話をしていた。
一連の会話を聞き、何故か居ても立っても居られない気持ちだった。
皆も同じ気持ちだったようだ。
サルガス殿下と兄上は会話し終わると何処かへ行ってしまった様だ。
「兄上もサルガス殿下も……落ち込んで、悩んで、きっと苦しかったんだ。だけど動き始めたんだよ。世の中を変えたくて…でも僕達にも何か出来ないのかな」
「私は…悲しいのは嫌だから、誰かを優しく救けてあげられるようになりたいな」
「メイサはどうするの?」
「そんなの……分からないわよ」
「じゃあそのままで居るの?」
「……でもアタシにはシルマの様に…強くは」
「メイサはメイサで良いと思うよ?」
「そうよ、メイサはメイサの出来る事をすれば良いと思うよ」
「私の…出来る事なんて…」
「僕達と沢山出来る事を探そうよ!」
「私達、友達でしょ?」
「友達…」
「だから、行こう!メイサ!」
「私達で考えましょ!」
「わ、分かったわよ!行くわよ!探すわよー!あんな事…許せないわ!見てなさい!アタシが変えて見せるわ!」
「僕達と!」
「変えていこう」
そう言ってプロキオン達は新たな決意を胸に再び学園に戻たが、隣の部屋には一連の会話を穏やかに聞いていたサルガスの姿があった。
学園に戻ったメイサは魔力練習を以前にも増して頑張っていた。今出来る事を一つ一つ、後悔の無いように…
何度も何度も魔力を枯渇しながらも諦めない姿勢はメイサなりのケジメと決意表明だった。
数週間後、遂にメイサの努力が実を結ぶ日が来た。
「今日は初級魔法を披露して下さい。以前よりどれくらい成長したかを見る前期中間試験です」
皆が次々に披露する中、遂にメイサの番がやってきた。
「メイサ頑張れー」
「メイサ落ち着いてー」
「メ、メイサ集中ー」
メイサは杖を使わずに目を閉じ静かに集中し始めた。
半身で的へ指を挿し、ゆっくりと魔法を唱えた。
「ライトボール」
しかし何も変化がない様に見える。僅かに光ったような気がするが、ライトボールが出た形跡は見られない。
しかしプロキオン達3人は嬉しそうな表情だ。
ウェンディ先生が問う。
「メイサさん今のは?」
「ライトボールです。的の中心に当てましたわ」
半信半疑でウェンディ先生が確認すると、なんと確かに指の太さ程度の穴が的の真ん中に空いていた。
それはとてもライトボールの形跡には見えなかった為、再度メイサに聞くと…
「ライトボールを最小径に収束して放っただけよ」
ウェンディ先生が驚いた。生徒達も驚いた。
僕達は大喜びだった。
「ご覧なさい!これが初級魔法というものよ!私にかかれば楽勝ですわ!」




