表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

忠虎

忠虎派閥イズム

作者: 弥生はじめ

地区内の忠虎派の人はどんな人たちなのか。

 怒鳴られている。

 理由もわからない。

僕は、市議会議員の津曲忠虎(つまがりただとら)の妻である真紀子に

「悩み事があったら惣之助さんに相談しなさいってあれほど言ったでしょ?健助けんすけさんは、別の派閥の人。どうしてわからないの?」 

 と、僕を睨みつける。

 まるでこの地区のゴロツキの女ボスのようだ。

「別にいいだろ、近所で仲良くしているんだから。仲良くしちゃだめなんですか?」

 僕は口答えをする。いつも仲良くしている健助さんに、相談に行っただけなのに………。

 真紀子は目を吊り上げてまるでビームを出すような表情で、

「忠虎派のルール守れ!」

と怒鳴るのである。いつからそんな風習があるのかは知らない。

「僕はー、そんなー、ルールなんかー、知らないでーーす」

と、また口答えをした。

 真紀子は、

「あんたは忠虎派から追放」

頭がピーマンの派閥から解放されて、僕は天にも昇る心地だ。

 ホント、ここの忠虎派の人達は頭が可笑しい人達である。まるで、たちの悪いカルト宗団のようだ。

 そのうち、忠虎さんがスタンド使いだったお陰でハルマゲドンやアルマゲドンが来なかったから生き残れたんだとか言いそうなくらいだ。


 ある日、板金屋の薫田源くんだげんのミナ子婆ちゃんが家に来たのである。いろんな世間話をする。

「僕、今度の市議会議員選挙、忠虎さんの応援と投票するのやめる」

と、言った。

 するとミナ子婆ちゃんはウソ泣きを始めた。

「忠虎さんの…うっうっ…先祖の忠太郎ただたろう親方は…うっうっ…薫田家で困っていた時にはポケットから道具を出して貸してくれた恩人なのに…うっうっ…。この地区に名声をもたらした忠太郎親方の子孫である忠虎さんを落選させるだなんて……うっうっ…」

(僕の家なんかぜんぜん忠虎には助けて貰った事ないし。忠虎じゃなくてドラ猫だよ)


「僕が悪かった。また一緒に忠虎さんに投票しよう」


ミナ子婆ちゃんは顔をニカッとさせて、

「さすが、この地区の若者だ」


 急に、ニコニコしたミナ子婆ちゃんは帰って行った。


 またある日、恭次きょうじのじいさんがトイプードルのミキコを連れて家に来た。

「忠虎さんの息子の虎之助とらのすけくんのランドクルーザープラドは大きくて立派な車だな。すごいのに乗っているよな。すごいよな」

と、ニヤニヤと僕の前で言うのであった。

 

(どうせ僕のハスラーは小さい車だからと、バカにしているのか)


 そしてつけ足すように、

「兄さんのハスラーだっけ?いい車じゃないか…ハハハ」

と、恭次は言うのであった。

(やっぱりハスラーが小さい車だからとバカにされた、すげー気に入っているのに…)


 後日、ハスラーは故障した。もう廃車にした。中古で、ジムニーをローンを組んで購入するのである。


 納車されたばかりのジムニーに惣之助は、

「ジープ燃費悪そうだなや。俺みたいにノートe-POWERのフルタイム4WDにすればよかったのに」

妻の克子は笑いながら、

「またこんな小さな車なんか買ったらお嫁さんどころか彼女すら出来ないよ。お金がある家なんだからなんで大きい車にしなかったの?」


(キングボンビーが付いているようなゴミ夫婦の言う事なんか聞くかよ)


 数カ月後になった。


また、あの恭次がトイプードルのミキコを連れて家にやって来た。ジムニーを見るなり、

「兄さん、このジープ新車だが?中古車だが?なんぼしたっけ?俺さ教えてけれ…へっへっへ〜」

と、言ってくる。

「値段を言うからそのカネくれ」

と、僕は言う。

 恭次は、機嫌を悪くされたようでトイプードルのミキコをまるで愛人のように抱きかかえて帰って行った。

 それ以来、近所の忠虎派の人たちには極力関わらないようにしようと心に決めたのであった。


またある日、崇史たかしのじいさんとコンビニの店内で会った。僕は笑いながら、

「崇史さんこんにちはです」

「よう!にぃ!元気そうでなにより」

と、崇史も笑いなら言うのであった。

「今度の市議会議員選挙の時は忠虎には関わりたくないです」

崇史はニコやかに、

「そんな事を言わないで俺がいるだろう」

僕は

「忠虎には惣之助がいるから別の人を応援する」

崇史のじいさんは悲しそうな感じだった.

 そして、崇史のじいさんと別れた。

 コンビニから帰ってきた。

 近所のアルコール中毒で前科のある高橋短造(たかはしたんぞう)がワンカップ酒を持って家の前に立っていた。僕を睨めつけていた。なぜだか知らないが大きな声で

「俺は検察官と裁判官に顔が利くがら」

と、言っては中指を立てるのである。

 いつもの事であるが故に、見慣れてしまった。

 そして、短造は家に入って行った。

 僕は反対側の惣之助の家の方を見る。

 惣之助夫婦と目が合うと、僕は、

「忠虎には応援しないし投票しないから」

 僕に近寄って来た惣之助夫婦。

惣之助は

「忠虎さんの頭脳はこの地区イチイイィ─────ッ!!」

妻の克子は、

「できんことは、ないイイィ─────ッ!!」

と、叫ぶのである。僕の耳はキーーーンとする。

 惣之助夫婦は、笑いながら家へ入って行った。

 僕も自宅に入って行った。




 忠虎派閥の近所の人たちは、みんな顔が暗くてウソつきだったり人を騙したりと恐喝したりと、何か選挙で事件が有りそうな予感がビビッと伝わってきたので、早目に僕は忠虎派閥から足を洗った。


 きっと忠虎派閥の人たちは、地球を侵略しに来た頭が可笑しな地球外生命体なのだろうか。




終わり


 





部落内のとある派閥がモデルです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ