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444(Triple Four)  作者: SHIN
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2-2 ~第一章・付き従う者 その2~

それで。“魔女屋敷”を後にしようと全力疾走で出てきた僕を出迎えたのが――。

とても見覚えのある連中と、とても見覚えのある先生方が待っておられました、と。


つまりは、そういうことである。


あれだけドンチャン騒ぎを起こした僕は、何故“魔女屋敷”――公爵邸に侵入したのか、何故邸内で暴れまわっていたのか。何故逃げるように慌てて逃げ出してきたのか。


そんな事の詳細を語る暇もなく、成す術もなくお縄となりました。





冗談はよしてください。いや、本当に。





本来ならば僕は「不敬罪」「家宅侵入」「器物損壊」その他もろもろの罪を被ることとなり、今のご時世ですと有無を言わずして首チョンパになるのですが。


幸運なのか不幸なのか、分からない事で僕は救われることとなった。




それは2つ。


ひとつは、僕の訓練校での評判・扱い・立場を訓練校のほとんどの人間が知っていたため、悪ガキグループに騙された哀れな子として情状酌量じょうじょうしゃくりょうの余地あり、との判断をされたこと。



もうひとつは、僕が騒ぎを起こした公爵邸は調査の結果“無人”であり、長らく“人が住んでいた形跡が見当たらなかった”ため、一種の廃墟として判断された。

元々“魔女屋敷”などと呼ばれ地元の人間も近づかなかったため、不気味な噂も重なり、まぁ中で暴れたところで困る人なんていないだろうと、直接的な罪にほとんど問われなかったということだ。


だが問題を起こした事実は変わらない。

よって責任を取るという形で。

退学――事実上の訓練校からの“追放”を言い渡された。




“無人”?


“人が住んでいた形跡が見当たらなかった”?




何を言っているんだ? と、僕は思っていた。

あの公爵邸には女の子が一人いたはずだ。


人形に着せるような白いフリルの着いた真っ黒なドレス。

宝石が煌いているかのような美しく流れるような銀色の髪。

翡翠色の、天使の羽の髪飾り。




泣き虫、魔女。




彼らは、あの女の子を見なかったというのだろうか。





なんにせよ。そのような理由で僕は晴れて自由の身となった。

嬉しいものの、実に納得のいかない、酷く陰鬱で霧の晴れぬ気分だった。



僕が退学となってから間もなく、訓練校は冬季休暇へと入り、有り余る時間を生徒は家族との時間なり恋人との時間なりに費やす。

休暇の間も訓練に精を出す人間なんて全くもっていなかった。


そんなので本当に騎士になるつもりなのかと言いたいが、訓練校在学中はダントツで酷い成績だった僕にそんなことを言う資格はないだろう。


だけど僕は。退学になってからも、剣術の訓練を怠ったことはない。


弱者にも、弱者の意地がある!




まぁ実際どれだけ訓練の成果が出ているのかと聞かれたら、苦笑いしか出来ないんですけどね。




一昨日なんて、年が明けてすぐも剣の素振りを欠かさない僕カッコイイ! とか思いながら剣を振りまくってたら、気付いたら手に握っているはずの剣がなくなっていて、どこにあるのかと探していたら訓練していた自宅の庭の、端に植えてあった大木に堂々と突き刺さっていた。


当然のことながら。

素振りをしていたのであって、投擲の訓練をしていたわけではない。


他にも地道に育てていたオリーブの苗木を一刀両断したりとか。


藁を編んで紐で縛って作ったカカシにタックルの練習をしていたときも(何故タックルかは自分でも謎)、我ながら見事な加速と体重移動で、瞬間、心、重ねてタックルしたのにも関わらず、自分が反動で吹っ飛ばされたりとか。

ちなみにカカシは倒れるどころか傾いてすらいない。


その時どこからか、「ブザマね」と誰かにつぶやかれたような気もした。

気のせいだと思いたい。



どうやら僕には、剣術の才能がこれっぽっちもないようだと確信した。

努力せずこの結果ならいざしらず、必死に努力した上でこのザマだときたら――。


救いようがありません、本当にありがとうございました。と、宣告されたようなものだ。





なんとかして、強くなりたい。


なんとしてでも強くなりたい。



僕のことを笑ってきた多くのヤツら、そして不出来な僕を見放した訓練校の教師達を見返してやりたい。


でも剣は。いつまでも一人で振り回していたところで、一向に上達する気配はない。


せめて、共に訓練に励み合える仲間がいたら。友達がいたら。

こんなに悩むこともなかっただろうに。


いやいや、仲間や友達と言わずとも。むしろ敵。敵でいい。


なんなら障害物や罠の類でも構わない。

例えば、先月侵入……的なことをした“魔女屋敷”。



ああいうダンジョン的なノリの場所でもいいから――――――。









あ。



そうか。




その手が、あった。

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