(14)
それからしばらくしてチャールズとセシルの裁判が王城の大広間で始まったのでした。
大広間にはパルタス国王に加えて諸侯も次々と集まってきました。
そしてパルタス国王様によって審問が始まりました。
パルタス国王様が言いました。
「ではこれよりチャールズとセシルの審問を始める。セシルとチャールズの罪状を一つづつ読み上げていき一つの罪状ごとに事実確認をしていく。もし弁明があるのならばその時に行うように。」
パルタス国王様が言いました。
「まずティルモール子爵領のマイタニス村を含む15の村々が二人組の犯人に襲撃された事件だ。この事件では村の住人達が多数犠牲になっている。この事件での死者は警備に当たっていた騎士や冒険者20人を含む94人に上る。ケガ人を含めれば被害者の数は420名を超えているだろう。」
パルタス国王様がセシルとチャールズに尋ねました。
「チャールズ??セシル??この事件の襲撃者というのはお前達で間違いないな?」
するとセシルがパルタス国王様に言いました。
「違います。私達じゃありません。」
チャールズも国王様に言いました。
「そうだ、俺達じゃない。」
すると国王様がこう言いました。
「では証人を呼ぶとしよう。入ってきてくれ!!!」
すると大広間の扉が開いて5人ほど人が入ってきました。
国王様がこう言いました。
「この者達はマイタニス村の村人でな。マイタニス村を襲われた時に襲撃者を直接確認しておる。そうであろう?」
村人達が答えた。
「はいその通りです。」
するとセシルが大声で言いました。
「待ちなさい!!こんな薄汚い下民の言う事を信じるんですか??こいつらは王城に入る事もできないゴミカス連中なのよ!!きっと本当の事なんて言いやしないわ!!」
チャールズが大声で言いました。
「そうだ、そんな汚らわしい下民の言う事なんて信用しちゃダメだろうが!!!下民の言う事なんて全部デタラメだ!!」
すると国王様が言いました。
「信用できるかどうか判断するのは余じゃ。」
国王様がマイタニス村の村人に尋ねました。
「中断してすまぬな!!それでマイタニス村の襲撃した者はこの中にいるか??」
マイタニス村の住民が答えた。
「はい、います。」
国王様が言いました。
「ではその犯人を指さしてくれ。」
するとマイタニス村の住人全てがセシルとチャールズを指さしました。
するとセシルが大声で言いました。
「この下民共が!!!適当な事を言うんじゃなわよ!!!下民ごときが貴族様を陥れようっていうの!!」
チャールズが大声で言いました。
「そうだ、俺達は貴族様なんだぞ!!!下民なんざお呼びじゃねえんだ!!無実の罪を擦り付けやがって!!!」
セシルが大声で言いました。
「そもそも村が襲撃されたのは夜なんでしょ??だったら襲撃者の顔なんて分からないんじゃないの?」
ドルチェス王子様がセシルに言いました。
「ふむそうだな?夜の襲撃となると顔の判別は難しいかもしれない。だがセシルなぜ夜に襲撃があったと知っているんだ??父上はマイタニス村が襲撃されたとは言ったが、夜に襲撃されたとは一言も言っていないぞ??」
セシルが少し焦った様子でドルチェス王子様に言いました。
「たまたまよ、たまたまそう思っただけ。」
ドルチェス王子様がセシルに言いました。
「たまたまねえ。」
セシルがドルチェス王子様に言いました。
「それよりもさっきの問題が解決してないでしょ?夜にこいつらが顔をしっかり確認できるわけがないじゃない!!つまりこいつらが嘘をついてるって事でしょ?」
私はセシルに言いました。
「セシル??あなたは一つ勘違いをしていますよ。国王様がマイタニス村の人達に確認してもらったのはたぶん顔じゃありませんよ。」
セシルが私に聞き返します。
「なんですって??」
すると国王様が言いました。
「うむ、リンゼ殿の言われる通りだ。余がマイタニス村の人達に確認してもらったのは顔ではない声だ。」
セシルが驚いて聞き返した。
「声ですって??」
するとマイタニス村の村人の一人がチャールズを指さしながら言いました。
「はい、襲撃者は「よお下民!!貴族様がきてやったぞ」と言っておりました。その男の声で間違いありません!!」
別の村人がセシルを指さしながら言いました。
「もう一人の襲撃者は「チャールズ様、そっちの下民の五人もらっていいですか?魔法を当てるマトとして使いたいんで」と言っておりました。その女の声で間違いありません。」
チャールズもセシルも顔が青ざめていきました。
ドルチェス王子様が二人に言いました。
「お前達はいつも大声を張り上げているからな。どうせマイタニス村を襲撃した時も大声を出して喋っていたんだろう?」
国王様が二人に言いました。
「これ以上の弁明を聞く必要はなさそうだな。」
セシルが観念したように言いました。
「ええ、そうよ、私達がやったわ。」
するとティルモール伯爵が二人に大声を張り上げた。
「なぜこのような暴挙を行ったのだ??」
エミリアも怒り心頭でセシルに大声で問いただします。
「なんでティルモールの人達にそんなひどい事ができるの?」
するとチャールズがケロッとした顔で言いました。
「あいつらは下民なんだ。いたぶっていいに決まってるだろう??」
セシルがチャールズの言葉に頷きながらエミリアに言いました。
「そうよ、あいつらは下民なのよ、いたぶって当然でしょ?エミリアあんたこそなんでそんな事で怒るわけ??」
するとアルドラス公爵様がチャールズに言いました。
「チャールズ!!あれほど町の人々をイジメてはダメだと言い聞かせていただろうが!!!」
ミーレウス魔導士長がセシルに言いました。
「セシル!!あんたもなんでこんな事をしたの??町の人達にあれほど酷い事はするなと言っておいたでしょう!!!」
するとチャールズはアルドラス公爵様にこう言いました。
「やってないだろう親父!!!アルドラス公爵領の下民はイジメてないだろう!!俺は親父のいいつけはちゃんと守ってるだろう!!!イジメたのはティルモール伯爵領の下民だ!!アルドラス公爵領の外の下民をいためつけただけなんだから何の問題もないだろう??」
セシルもミーレウス様にこう言いました。
「そうです、お母様、私もちゃんと言いつけを守っています。リネアス子爵領の下民をいたぶっていません。いたぶったのはティルモール伯爵領の下民です。リネアス子爵領の外の下民だからいたぶっても問題ないでしょう?」
これを聞いたアルドラス公爵様がこうチャールズに言いました。
「そういう意味じゃない!!!領民の人々を下民と蔑んで下に見る事を止めろという意味に決まってるだろうが!!!」
ミーレウス魔導士長がセシルに言いました。
「なんでよそ様の領地なら好き放題やっていいって考えになるの!!」
するとチャールズはこうアルドラス公爵様に言いました。
「俺様は下民共よりはるかに偉い貴族様なんだから、下民いたぶっていいに決まってるだろう。」
セシルはこうミーレウス様に言いました。
「下民どもは私みたいな高貴な存在である貴族様がいるから生きていけるんでしょ。だったら高貴な存在である私が下民の100人や200人いたぶって何が悪いんですか?」
するとチャールズの顔には鉄拳がセシルの頬には強烈なビンタがさく裂しました。
アルドラス公爵がチャールズの顔に鉄拳を食らわせミーレウス魔導士長がセシルを強くビンタしたのです。
アルドラス公爵様とミーレウス様が国王様に言いました。
「パルタス国王様、審問中に手を挙げてしまい申し訳ありません。」
「パルタス国王様、娘に手を挙げてしまい申し訳ありません。」
国王様はこう言いました。
「いや気にせんでよい。それよりも審問を続けよう。」