(10)
エルカリア伯爵邸内に一人の男がこっそりと窓から侵入していた。
窓から屋敷内への侵入を果たした男が笑いながら言った。
「さあエルカリア伯爵邸内に侵入したぞ!!」
「さあてあの女はどこだ??」
伯爵邸の客間に侵入した男はチャールズであった。
チャールズは忍び足で客間から廊下へと出た。
「あとは土下座させるためにゴブリンイカ女をここから誘拐すればいい!!ぎゃははは!!そうすればすべてうまくいく!!!」
「そんなくだらない理由でリンゼ様をまた悲しませようとしているとか??ほとほと呆れた男だな!!」
「誰だ??」
チャールズがそう言うと誰かが詠唱が行った。
「今この場を温かい光で包み込め!!ライト!!」
照明魔法が使用されて屋敷の中が一気に明るくなった。
チャールズが驚きながら大声で言った。
「なっ??ヘッポコ王子??なんでテメエがここにいやがる。」
ドルチェス王子がチャールズの前に現れたのだった。
「お前らがリンゼ様を狙ってくるのは予想済みだ。お前達がリンゼ様の屋敷に襲撃をかけてくると予想してあらかじめ待ち構えていたのさ!!」
するとチャールズの前にドルガーも姿を現した。
「お前のようなゲス男にはリンゼ様の指一本触れさせん!!」
チャールズがドルガーに尋ねた。
「なんだテメエは??」
ドルガーがチャールズに言った。
「リンゼ様にお仕えしているドルガーだ。」
チャールズがドルガーに言った。
「なんだ下民か!!下民風情が偉そうな口を叩くな!!」
すると ドゴーン!!と屋敷中に大きな爆発音が響いた。
ドルチェス王子が周囲を見渡しながら言った。
「なんだ??」
そして女子の声が屋敷中に響いた。
「ゴブリンイカ女出てきなさい!!!」
チャールズが嬉しそうに二人に言った。
「どうやらセシルが屋敷の裏側から侵入したみたいだな!!!」
するとチャールズがドルチェス王子とドルガーに尋ねた。
「おい!!ヘッポコ王子に下民!!なんでこのチャールズ様の邪魔をしやがる??」
ドルチェス王子がチャールズに言った。
「しれた事リンゼ様の笑顔を守りたいからだ!!」
ドルガーがチャールズに言った。
「その通りお嬢様の幸せこそが私のただ一つの望みだ!!」
チャールズが二人に言った。
「ぎゃはっはっはっ!!なるほどそういう事か。ヘッポコ王子とそこの下民はあのゴブリンイカ女に騙されてやがるんだな!!!こりゃ傑作だ!!!あの何の価値もないゴブリンイカ女とヘッポコ王子それに下民テメエらなら何の価値もない者同士で確かにお似合いだな!!」
するとドルチェス王子が激高していった。
「私の事は何を言われようが構わない。だがな!取り消すんだ!!今のリンゼ様を侮辱する発言だけは許せない!!チャールズ!!発言を取り消せ!!!」
ルドガーも激高していた。
「チャールズ!!言い直せ!!リンゼ様と!!!その言い回しはリンゼ様への侮辱に他ならない!!」
チャールズが二人にアカンベーをしながら言った。
「どっちもやなこった!!ベロベロバー!!!取り消させたけりゃ力づくでやりゃいいだろう!!!ヘッポコ王子に下民!!」
ドルチェス王子がチャールズに言った。
「ではそうさせてもらう!!!全てはリンゼ様の笑顔のために!!!」
ドルガーがチャールズに言った。
「お嬢様を侮辱したお前に目にものを見せてやろう!!全てはお嬢様の笑顔のために!!」
ドルチェス王子が鞘から剣を抜き、ドルガーは拳を突き立てて戦闘態勢に入った。
そして間髪いれずにドルチェス王子の剣技がチャールズにさく裂した。
「デルタスマッシュ!!!」
チャールズはその剣技をゆうゆうと避けれると思っていた。
だがチャールズの思いとは裏腹にドルチェス王子が放ったドラゴンスマッシュは見事にチャールズに決まり、チャールズは大ダメージを受けたのだった。
さらにドルガーが畳みかける。
「お嬢様の悲しみを思い知れ!!!竜拳突き!!!」
今度はドルガーがチャールズに向かって竜拳突きを食らわせた。
このドルガーの攻撃も見事に決まりチャールズは更に大ダメージを受けた。
「ぐはっ!!!」
手ごたえを感じたドルガーとドルチェス王子がチャールズに言った。
「チャールズ!!思い知ったか!!リンゼ様が受けた悲しみはもっと大きいんだ!!」
「これぐらいでは済まさないぞ!!」
するとチャールズがドルガーとドルチェス王子に言った。
「い・・・た・・・い。」
ドルチェス王子がチャールズに尋ねた。
「うん?チャールズ!!今なんと言った??」
するとチャールズが大声でわめき始めた。
「うあああーー!!いたい!!いたい!!!痛い!!!」
チャールズはその場に立っている事もできずにその場に倒れ込むと大声で泣き叫ぶのだった。
「うわあああーーん!!体中が痛い!!!いっぱい血が出てくる!!!うあーーー!!!誰か助けてくれ!!!」
ドルチェス王子が呆れた様子でチャールズに言った。
「チャールズ貴様はとんだ小物だな。拍子抜けだよ。」
ドルガーがチャールズに言った。
「全くだ。小物の中の小物だ。あれだけの大口が叩くのだからもっと歯ごたえがあると思っていたぞ!!」
ドルチェス王子がチャールズに言った。
「チャールズ、お前を捕縛する!!!リンゼ様を泣かせた報いを受けさせてやる骨の髄までな!!」
ドルガーがチャールズに言った。
「お前はお嬢様を泣かせるという救いがたい大罪を犯したのだ。このぐらいで許してもらえると思うなよ!!」
「フレアアロー!!!」
するとどこからともなく火炎魔法のフレアアローがドルチェス王子とドルガーめがけて飛んできた。
二人はとっさにそれをかわす。
するとセシルがチャールズのもとに駆けつけてきた。
「チャールズ様??大丈夫ですか?」
チャールズは全然大丈夫ではなく大声で泣き叫ぶのだった。
「うあああー、痛い痛い!!痛い!!!頼む!!!俺様を助けてくれ!!」
セシルがチャールズに言った。
「分かりました。」
セシルが詠唱を始めた。
「遥かなる御力よこの者の傷をいやしたまえ!!ヒーリング!!!」
セシルは回復魔法のヒーリングを唱えてチャールズの傷を回復させたのだった。
詠唱を終えたセシルがチャールズに言った。
「チャールズ様、もう大丈夫です。」
チャールズは傷の治癒に気がついてようやく話せるようになった。
「ああ、よかった。痛みが治まった。」
セシルがチャールズに言った。
「チャールズ様、ここは引きましょう。」
チャールズがセシルに言った。
「まだゴブリンイカ女を捕まえてないぞ?」
セシルがチャールズに言った。
「おそらくゴブリンイカ女はここにはいません。」
するとセシルはドルチェス王子に尋ねた。
「そうでしょう。ヘッポコ王子??」
ドルチェス王子がセシルに言った。
「さあ、どうだろうな??」
するとセシルが詠唱を始めた。
「この地を白のまやかしにて覆いつくせ!!スモーク!!」
セシルは煙を発生させる魔法スモークを使って屋敷中を煙で覆い尽くしたのだった。
「逃げる気か!!チャールズ!!セシル!!!」
セシルの声が煙幕の中から聞こえてきた。
「ヘッポコ王子、私達はあんたの相手をしてるほど暇人じゃないの?じゃあねえー!!」
それからすぐにスモークの魔法の解除作業が行われた。
だがチャールズとセシルの姿はどこにも無かったのだった。