月の煙
これは孤独になり、自分の死場所を探して旅を続ける男のお話である。ある日、幸せそうな顔で道端で餓死していた老人を見つける。それに取り憑かれたように憧れた男は断食を始めて旅を再開する。その続きである。
私は何も食べない日が7日ほど続いた。
7日も経つと、どうしても何か食べたくなるので、その衝動を抑えようと休むことなく歩き続ける。
何もないし、何もいらないが強いて一つだけ、ひとつだけ言うならば安心して消え失せる場所が欲しい。
そうやってあてもなく闇夜を彷徨っていると、
向こうのほうに今はいないはずの子供がいるではないか。
彼らは、はしゃぎながらこちらを一瞥してから手を振って木々の間に入っていった。在りし日の子供の声だけを頼りに道無き道の風を切り、蒼々と草をかき分ける。
気がつけば雄々と野原が広がっていて、すすきは音を立てて風にさらされ、虫たちは野に遊び、月明かりが一体を照らしていた。その中で子供たちはくるくると回ったり、かけっこをして楽しんでいた。
私は彼らの方に夢中で向かっていく。だが、何も食べてないのに走った反動か、長々と生えたすすきに囲まれてへたり込んでしまった。体は震えをきかせて、生まれたての小鹿のように力がうまく入らない。もうちょっとであそこに行けるのになぁと頬に涙が伝う。
そんな私なぞ気にはせずに月はまるまると大きく、黄色い光を帯びて無常を傍観していた。加えて、輝きの中に黒い点を見た。少しずつこちらに近づいてくる。
だんだんと人の形を確認したそれは、数十年ぶりに見た子供たちの母親だった。艶やかな黒い髪と鮮やかな着物を召し、麗かな月を背にして子供の前に降り立つ。
子供たちはまだ遊び足りないようで、彼女に向かって不満のある表情を作っていたものの、何かを納得して母の手を握り、次はこちら側を背にして月光に吸い込まれていった。
私は
淡き月 影煙ごとくたなびきて
うつせみの つかめぬ人ども思ひつな
と詠みながら力尽きる。
11/6の20時から(心の中で勝手に)開催していたss大会で書いた短編です。秋といえば月!そしてあんま関係ないけど僕が好きな作品の月のお姫様は今度で20th!ということでこのテーマにしました。詩は自作で、学生時代に使ってた体型古文をなんとか本棚から引っ張り出して作りました。一時間で作ったのでクオリティ低くてすみません(と先に言い訳をいっておきます)。
≪特別誤訳:ジャンピング土下座は3か月に一回の方がいいです。やりすぎたら折れる。タヒね!ワ●リー!とか言われるけどあの高さからの土下座は命を擲ってますよね。まあ懲りないのが悪いんですけど。
あなたお帰りなさい!ミサイルにする?大洪水にする?
それともマ・ル・カ・ジ・リ?とか言ってみたいなぁ≫