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先達

短めです


かさかさと、小さい足が俺の前で森の中を進んでいく。気持ち、ゆっくり、静かな歩みに思えるのは気遣いなのか勘違いなのか。

時折くるりと軽快に振り返って、屈託のない笑みを向けてくるチャルは、何もなかったようにそのよく動く口を開く。


「大丈夫だってーむしろ、ちょっと戻すぐらいで済んだんだから騎士さまぁは流石だよー」


また小さい体がくるりと回る。


「オレなんか、何日も腹下してさー。上からも下からも、

さーー、それはそれは大変だったのさ」


揺れる薄い髪の間から、大きい紫水晶がこちらを垣間見る。目が合うか合わないかで、またチャルは前を向いた。

進む先は先ほどの方角と真逆。どうやらチャルの寝床があるらしく、若干消耗した俺を休ませてくれるらしい。


「それにしても、騎士さまぁ、色分からないんだなぁ」


独り言なのかと問い掛けなのか分からないチャルの言葉に、俺は無言で返した。

チャルの目の色が識別できたことですっかり忘れていた。あの日以来、俺の目は色を失っていた。といっても、明暗は微かに判断できる程度だったし、他気配でなんとかなっていた。

まさか、肉の色が想定外のものとは思っていなかったが。


「それでココにいるのか、騎士さまぁ」


どういう意味だ?


「あー!ごめん!詳しく聞きたいんじゃぁないんだ。ただココに来るのは訳アリが多いからさ」


知らなかった。西の森は魔物が多くいるという認識しかなく、調査も程々。むしろ貢献者なしで進軍出来ない危険な森に、好きで入る奴がいるとも思わなかった。


「だから騎士さまぁの目も気にしないよぉ。世の中いろーんなのがいるからさ」


幼い割には世を俯瞰した言葉を吐くチャルは、またくるりと回った。


「だから、平気だよ」


細まる紫水晶が少し滲む。

聞くつもりはない。恐らくチャルも良いとは言えない過去があるのだろう。でなければ、こんなところに一人でいるはずがない。


「、、、チェーザレ」


「ん?」


「チェーザレだ」


「、、、うん!わかった、チェーザレだね!」


だから少し気を許してもいい。そう思って名前を伝えると、チャルは嬉しそうに笑った。その笑みが誰かと重なったのを、気のせいだと俺は頭を振った。




















入り口は不思議と拓けた場所だった。振り向くと人避けのように木々が生い茂り、寸先は薄暗い。反してチャルの寝ぐら辺りは陽が当たり、心地良い熱で満たされている。


「ようこそ、 チェーザレ!歓迎するよ〜」


小さい手腕を大きく広げて自慢げなチャルは、紫水晶を輝かせて笑う。モノクロの景色に妙に映えて光るその色は、どう考えても俺の方が適任のはずなのに、先達役はチャルだと言わんばかりに、強く、濃く、深く主張していた。

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