隣国の聖女
いつもお読み頂きありがとうございます。
ようやく物語の展開があり、謎の女が出てきます。
「ノルドハイム国使者方の御来城でございます」
公城の大広間に騎士の声が響いた。同時に賓客を歓迎する音楽が流れ、片側騎士2人でようやく開く大広間の扉は、重厚な音を出しながら賓客を招き入れた。床に敷かれた赤い絨毯の上で一歩、靴音が音楽に負けないくらい天井に響く。続く靴音に、床を擦る布の音に、誰しもが耳を澄ませ、その音の主を見逃さんばかりに視線を送った。
ついに、ノルドハイム国の使者、国教シュヴァルツ教の枢機卿と”聖女”との謁見の日が来た。予定通りの時刻にノルドハイム国の使者2人はダヴォリア帝国に帝都に一番近い港に到着し入国。厳重な警備態勢を取り道中は特に問題もなく、皆が待ちに待った使者方の姿をこうして無事に拝めることができたが。
帝国中から集まった貴族や重役、騎士たちに左右を挟まれながらも、使者2人はゆっくりと前へ。我がダヴォリア帝国皇帝が座る王座をと進んでいく。皇帝の脇にはエルメントルート皇妃、逆側にテレンツィオ皇太子、フロリアーナ皇女、クラウディア皇女。皇帝の一歩後ろにはデル・ピエロ宰相が控え、周りに近衛騎士達が立つ。
前を進む人物は濃く紺色のうねる長い髪を一つに纏め、黒い修道士のような長いガウンを身に着けている。眼鏡の奥には笑みを浮かべた細い目があり、聖職者といった雰囲気で真っ直ぐと皇帝を見つめている。あれが枢機卿か。となると、彼の一歩後ろに続き黒いローブで全身を覆っているのが聖女だろう。枢機卿に比べると随分と小柄だが、彼女もじっと前を見据えてゆっくりと歩みを進めている。頭を覆うフードで細い顎先しか見えないが、長くまっすぐな黒髪が両胸の前に流れていた。
王座の前まで来ると宰相が合図をし、控えている近衛騎士達が一斉に一度だけ槍を床に打ち付ける。それを合図に音楽がぴたりと止み、残った金属音だけが響いた。
「ようこそいらっしゃいました、我がダヴォリア帝国へ」
宰相が一言発し、ゆっくりと腰を折った。それに合わせて、俺含む騎士団の騎士たち、貴族や重役たちも腰を折る。頭を動かさないのは皇族のみだ。宰相が頭を上げるのと同時に俺たちも顔を上げると、枢機卿が口を開いた。
「こちらこそ。急な申し出にも関わらず、このように皆様でお出迎え頂き感謝致します。ノルドハイム国から参りました、オスカー・カルヴァ・シュヴァルツと申します。恐れ多くも、我が国教シュヴァルツ教を修めさせて頂いております」
「歓迎致します、オスカー殿。道中、不自由なことをお願いすることもありましたでしょう。何卒、お許しを」
「恐れ入ります。我が国でも、同様の対応をするでしょう。どうぞお気になさらないでください」
「お気遣い感謝致します」
国賓とはいえ、念のため港から入国する前に検査を行っていた。本来であれば顰蹙を買うような行いだが、何分経緯が怪しすぎる謁見だ。枢機卿が理解が早い方で良かった。
「そちらにいらっしゃるのは」
分かっていることだが、宰相がわざとらしく枢機卿の隣に立つ彼女に視線を移した。気にした風でもない枢機卿は、細い目で笑みを浮かべたまま言葉を続けた。
「先にお知らせしておりました我がノルドハイム国が愛するの聖女でございます」
枢機卿の声を共に黒髪と同色のローブが、皇帝に向けて下がる。ゆっくりとして動作からか、彼女のフードが外れることはなかった。
「歓迎致します、聖女殿」
聖女に合わせるように宰相も腰を折るが、宰相は短く咳ばらいをした後に言葉を続けた。
「大変申し訳ございませんが、その麗しいお顔を見せては頂けませんか」
宰相の申し出に、待っていましたとばかりに周囲がざわつき始める。
道中を警護した騎士からの報告によるとダヴォリア帝国に入国してから彼女は一切顔が晒されていない。常に枢機卿が横にいて隙がなかっただけではない。船上で風が吹いても馬車が揺れても、彼女の顔を隠すフードは少しも乱れなかったのだというものだから、噂にある”何らかの力”が作用しているのは間違いなさそうだ。
だが、いくらノルドハイム国の聖女とはいえここはダヴォリア帝国だ。さすがに皇族を、多くの貴族や重役たちを前にして顔を晒さないことが、どれだけの無礼に当たるか分かっているはずだ。その上、聖女は名乗ってもいない。帝国側としてはこれ以上の侮辱はないだろう。
姿勢を正していた皇帝が片頬を着き、晒していた顔を皇妃が扇で隠したのを合図に、喧騒が高まっていく。耳に届く言葉は、非礼だ、無礼だ、馬鹿にしている、品がない、常識がない、誰か捲りにいけ、追い返せばいいと様々。気持ちは分かるが、国賓2人に聞こえるように言うのはむしろ”品がない”。
大きくなる喧騒と向けられる懐疑の視線を余所に、枢機卿は相変わらず笑みを絶やさず聖女の方も微動だにしていなかった。
物騒な言葉を並べる方々は知らないはずだ。彼女がどれだけの力を持っていて、それが一体何なのか未だ分かっていないことを。突然丸焦げにされるかもしれないのに。逆に静かに彼女を見据えているのは貢献者方だ。彼女に何らかの力を察しているが、測りかねているのだろう。
「恐れながら」
喧騒の中、枢機卿の落ち着いた声が響いた。次に発せられる言葉を聞き漏らすまいと皆、口を閉じた。
「彼女は我がノルドハイム国民全ての寵愛を受ける清く儚い聖女様です。ここは、いささか人の目と耳が多すぎますかと」
周囲を見回しながら発した枢機卿の言葉に、突然一人の大柄な男が一歩前に出た。帝国議会の席に長らく座る古参の一人だ。
「無礼ではないかっ。我らの目が穢れていると言いたいのか!」
皇帝の許しもなしに声を発した男に宰相の眉間に皺が寄った。整えた白鬚と太い眉、隠しきれていない肥えた腹を持つ男は、ロレンツォ曰く”老害”なのだという。向かいの議会側に立つロレンツォを見ると、父親と同じように眉間に皺を寄せていた。
今一番無礼なのは一体誰だか分かっていないのは本人のようだ。
「いけませんね。常に笑みを絶やさぬことはとても大切なことなのですよ」
"老害"の言葉を無視して、枢機卿は首を傾けながら絶えさぬ笑みを深める。
どんな輩が来るかと思っていたが、これは思った以上に特殊な人物が遣わされたものだ。これでダヴォリア帝国への武力援助なんて内容だったら、一通り笑った後でお払い箱だ。
「下がれ」
枢機卿の態度に怒りで顔を赤くした男は今にも枢機卿を殴り飛ばさん限りに拳を震わせていると、王座から短い命令が下った。皇帝が発した言葉は短いが大広間によく響くと、ようやく自身の行いを顧みたようだ。苦し紛れに歯ぎしりをしたものの大人しく列へと戻っていった。
「とても素敵なお声ですね、皇帝陛下」
枢機卿はまた的外れな言葉を発した。それには大人しくしていた貴族たちも今度は皇帝が激怒するのではないかと息を飲んだ。下々の様子などは余所に皇帝は崩していた姿勢を戻し、未だ黒いフードで隠れている聖女の顔を覗き込むよう顔を傾けた後、隣に立つテレンツィオ皇太子に目配せをした。
皇太子は皇帝に一礼をした後、王座から一段下がり笑みを浮かべながら聖女に声をかける。
「ノルドハイム国の聖女殿。貴女はとても美しいと聞く。虹色に輝く黒い艶髪と熟れた果実のような紅い瞳。ここに居る者は全て、貴女の姿を一目見に集った。私も、その麗しい姿を是非とも見たい」
皇太子の甘い笑みと言葉に貴族令嬢たちは熱い溜息を吐いている。皇太子からの言葉に否という令嬢はこの帝国にはいない。それを見越して皇帝は皇太子を差し向けたのだろうが、隣国の聖女はどう出るだろうか。
エルメントルート皇妃は扇を傾けながら、フロリアーナ殿下は何一つ見逃さんばかりにその新緑色の瞳を大きく開け、クラウディア殿下はいつもの笑みを浮かべていた。
「どうかその黒いベールを外してはくれませんか、聖女殿」
もう一歩、テレンツィオ皇太子が足を進めたと同時に、微かに見えていた聖女の白い顎先が動いた。それを好機と皇太子は、大きめにもう一歩、聖女との距離を詰める。
コツリと足音が響いてから、ようやく黒いフードの中からか細い声が発せられた。
「恐れながら皇太子殿下。それ以上は」
そう言い放った聖女は、皇太子が進めた一歩分、後ろに下がった。これには皇太子の表情も歪み、静まった喧騒が一気に膨れ上がった。
まさか皇太子ですらも穢れと言いたいのか、と荒立てた声が聞こえてくる。枢機卿が聖女の小さな肩を掴み何かを話しかけている。まずい反応だな。そちらも特殊な性格か、聖女殿。
俺は今にも暴れ出しそうな重役たちを抑えるよう騎士達に指示をしながら、枢機卿の動く口を注視した。口の動きと微かに聞こえる枢機卿の声から、何を話しているか聞き取らなくてはこの場の収拾をつけようがなくなる。できれば諫めていてほしいが、枢機卿の変わらない笑みを見る限りず諫めている様子はない。
「 、したか。 カー、 ぃン 」
辛うじて拾えたのは、確認の言葉と聖女の名前らしきもの。
”カー、 ぃン”
その名に、俺は違和感を覚えた。他国の名だ、この帝国では聞き慣れない音なのは確かだ。しかし、どこかで聞いたことがあるような既知感を感じる。
改めてノルドハイム国の聖女を見る。相変わらずの黒いローブに頭からかぶったフード。微かに見えた笑みを浮かべた赤い唇が嫌に映える。隠された顔の中から彼女の瞳が俺を見つめているのが分かった。その白い顎先とその下に続く細い首と黒い襟に何か光るものを見た。
あれはなんだ。
「チェーザレ、一旦お開きにしたほうが」
一瞬呆然としていた俺の肩をアドルフォが叩く。それにゆっくりと振り返ると、今度はテレンツィオ皇太子の声が喧騒を抑える声が響いた。
「皆静まれ!聖女殿の前で無様だぞ」
抗議の声を上げる者もいたが、皇帝と同じ色の皇太子の瞳に射抜かれ、結局は参列に戻るしかなかった。聖女に改めて対峙した皇太子は歪めた表情を笑みに戻し言葉を続ける。
「我が帝国の者が失礼致しました」
「いえ。私こそ言葉が足らず、申し訳ございません」
フードの中から返ってくるか細い声の聖女は、枢機卿よりは会話ができるようだったが、皇太子と聖女の距離が縮まることはなかった。
「貴女は声も細やかで美しいのだな。ここでは人目につくと言うのなら、どこか私と2人になれるところではいかがか」
踏み込んだ皇太子の口説き文句に、ついに令嬢の一人が黄色い声を上げて倒れた。対応に追われる騎士の動きを確認しながらも、他の貴族たちがまた暴れだしはしないかと視線を巡らせた
ふと、背後でぱきと音がする。不自然にならないよう振り向くと、そこには顔は笑みを保ったままだが白い扇子を握る手を震わせているフロリアーナ殿下が皇太子と聖女を見下ろしていた。殺気が隠しきれていない。持っている扇子にひびが入っている。
フロリアーナ殿下の横には、騒動に少し驚いた様子を見せながらも変わらぬ笑みを浮かべるクラウディア殿下。姉君のようにもう少し感情を出してもいいものだが、相変わらずありすぎるぐらいの落ち着いた姿が逆に心配になった。
「恐れながら」
再び聖女が発したか細い声に、今度は逆に喧騒が止んだ。また皇太子のお誘いを断るのかと、次こそは反逆罪で捕まえてやると意気込む貴族たちの様子が見て分かった。もうそろそろ勘弁してほしい。入国して早々、国賓を裁くわけにもいかないと目線だけでアドルフォに指示をし、俺自身は聖女を守るために、また彼女がどのような行動をしても対処できるように体勢を整えた。
「皇太子殿下と2人きりというのは」
「と、仰いますと?」
「私はノルドハイム国では聖女です。しかし、このダヴォリア帝国では異端な存在。そんな得体のしれない私の傍に皇太子とあろうお方がいては。ましてや、、、どうか、その御身を大切にしてくださいませ」
聖女の言葉に皇太子だけではなく、皇帝も驚きを隠せなかったようだ。同じ金色の目を見開き、頭を下げる聖女に釘付けになっている。
どうやら少しは弁えているらしい。少なくとも先損じた”老害”よりもよっぽど。
「私の身を案じてくれるのか」
「当然です、テレンツィオ皇太子殿下」
「お気遣い感謝致します。しかし困った。貴女が危険な存在で私ではいけないというのであれば、誰ならば良いのか」
皇太子の顎に手を当てながら思案をする仕草に、嫌な予感がした。背後に刺さる殺気は振り向かなくても第一皇女様のものだと分かる。また、ぱきぱきと音が聞こえたのは気のせいだと思いたい。
「この帝国の中で一番強い者であれば、良いのか」
ほら来た。
「仰る通りかと」
そこも弁えろよ、聖女殿。
「分かった。ザッカルド、ここへ」
「はっ」
テレンツィオ皇太子の一礼し、俺は赤い絨毯へと足を踏み出した。その拍子に腰に下がった宝剣ががちゃりと鳴る。背後では何かが折れる音と共に小さく息を飲む音がしたが、俺は内心それどころじゃない。全く、どうしたものか。
一歩一歩ゆっくりと踏み出すごとに、つい先日ロレンツォとの会話を思い出す。
”まさしく””聖女”だな”
”それも”戦う聖女”だ”
”勝利の象徴のような存在だ”
最後の一歩を踏み切ると、小柄な聖女を上から見下ろす。フードを押さえながら上を向いた聖女の顔は、やはり全ては見えないが暗く隠れた影から紅い瞳が見え、その中に俺の顔を映している。噂通り、熟れた果実のような赤だった。
”あちらの”聖女様”はお前に似ているな”
どう見ても俺とは似ても似つかない。だが、細い体は俺の腕一本で壁の先まで吹き飛ばされそうな程柔く見えるのに、俺を見上げる紅い瞳には計り知れない力を感じる。これが”聖女”か。
「失礼、致します」
腕を上げ、聖女が手で押さえているところとは逆側のフードに触れた。その間、紅い瞳は俺を映したままだ。一歩下がった皇太子が興味津々に彼女の顔を覗き込む様子が感じられる。俺たちを囲む周囲も、今か今かと”聖女”の顔が晒されるのを待っていた。
俺は、この聖女のフードを外したら何かが起こるような予感がしていた。ついさっき感じた嫌な予感とは違う。彼女が何らかの攻撃を仕掛けてきてそれに対処できないかもしれないなんて危機感でもない。
どこか懐かしいような、枢機卿から彼女の名前を拾った時と同じような違和感だ。ゆっくりと下がっていたもう一方の聖女の手が、首元に触れる。先程見た光る何か、指輪だ。かたりと聖女が首を傾け、その指輪を俺に見せるように細い手が持ち上げてくる。紅い鏡に映る見慣れたはずの自分の顔にどくりと心臓が大きく鼓動した。
この指輪、どこかで見たことがある。
「チェーザレ」
「失礼」
テレンツィオ皇太子の声にはっと遠のいていた意識を戻し、俺はもう一声かけて黒いフードに触れたまま止めていた手に力を入れた。乱暴にならないよう、聖女の後ろへとフードを少し動かした瞬間、嫌に映えて見えた赤い唇がゆっくりと何かを綴る。
「 」
「っ」
その唇の動きに、俺は感じていた違和感が何か瞬時で悟った。ロレンツォの奴も兄と同様、怖いくらい冴えた勘をしている。俺とこの聖女が似ているだって。当たり前だ、だってこいつは。
「もう、宜しいでしょう」
あと少しでフードが外されるというところで、枢機卿の声がかかった。俺は視線を枢機卿に移した後、直ぐに目の前の”聖女”に戻すも先程まで見えていた紅い瞳はフードの影に隠れ、言葉を綴った赤い唇も隠れてしまっていた。見えたのは細い顎先と首元で揺れる指輪。
「ザッカルド、報告を」
「はっ、お噂の通りお美しいかと」
「そうか。お前のどの男も、見惚れるほど、というだな」
「それは、、、特段ご報告することはありません、以上です。失礼致します、皇太子殿下」
反論の言葉を続けるよりも崩れる表情を隠すために、深々と頭を下げた。俺が聖女に見惚れていたと勘違いされたと思い、一瞬後悔した。俺が、あれに見惚れただって?勘弁してほしい。
そう叫びたい気持ちを抑えて、俺は満点の笑みを浮かべているアドルフォの横に戻る。ついでに、奴の足を踏みつけておいた。顔に出すぎだ、脳筋め。
「ご苦労だった、ザッカルド。皆の者、我が帝国一の騎士であるザッカルドの言葉で、この場は治めることとする。異論がある者は、この場で名を上げろ」
皇太子の言葉に、誰も声を発しなかった。それに使者2人はゆっくりと腰を折り、踵を返した。俺はまたゆっくりと歩みを進める2人、特に聖女の背中を見つめた。小さくなっていく黒い背中に隠したはずの笑みがこぼれそうだった。まさか自分の杞憂が、このような形になるとは思ってもいなかった。早く、早く聖女と話がしたい。
彼女らが退室するのを見届け大広間の扉が閉じられた後、皇族方は何も言葉を発せずに順に退室していく。カールミエ皇帝、エルメントルート皇妃、テレンツィオ皇太子、フロリアーナ第一皇女、そしてクラウディア第二皇女。一人一人、腰を折り見送りをする中、クラウディア殿下の表情が少し曇っているように見えが、直ぐにいつもの皇女としての笑みに戻ってしまった。
気のせいだったかと思いながらも胸の端に留めておくことにした。殿下の様子も大事だが、今は目の前の問題”聖女”のことだ。
「アドルフォ」
「おうよ」
「ノルドハイム国お二方の警護につく騎士達に伝えろ。演練後、聖女殿と話がしたいと」
「あぁ、分かった。訳アリか?」
にやりとアドルフォの口元が上がる。やましい考えが丸わかりで俺は小さく舌打ちをしたかったが、周囲がどう捉えているかは後回しだ。
「まさかの逢引の仲人とは」
「違う」
「まっ、なんでもいっか。了解しました。騎士団長殿」
嬉しそうに応答したアドルフォを怒る気にもなれず、俺は興味の視線を向けてくる騎士達に喝を入れた。
それよりもあいつだ。あの”聖女”だ。何故、どうして。一体どうやって。いつから。どこまで。
疑問の言葉が頭によぎる。早急すぎるのはよくないと自分に言い聞かせるが、どこかで認めてしまっている自分もいる。だから直ぐに確証が欲しかった。もう一度騎士達に急げと指示してから、俺は逸る足を抑えながらも次の予定がある闘技場へと向かった。
訳アリでした。




