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22【母と俺達3】

『本当は透には言うつもりはなかったんだけどね。もう透は子供ではないし大丈夫でしょ。

えっとね、私とお父さんは、本当は透の他に子供が欲しかったのよ。

結婚したてのことは「子供は何人欲しい?」「ん〜、3人ぐらいは欲しいかなぁ〜」みたいな会話を良くしてたの』


今まで一度たりとも他に子供が欲しいと言う話は両親から聞いたことがなかった。しかし、俺が小学校低学年ぐらいの時に「僕にも弟か妹が欲しい!」と言ったことがあったが両親は顔を見合わせ少し困った顔をし微笑した。それを見た俺は子供ながらこの話はしてはいけないものをだと悟りその後、その話には一切触れることはなかった。


『でも、今私達家族に子供は透一人だけ。

理由の一つは、何となく透はわかるんじゃないかしら?』


「・・・俺の出産が帝王切開だったからか?」


俺はたった一度だけ聞いたことがある俺の出産時のことを思い出しながら答える。

今まで俺に話していなかったことを踏まえると俺に少しでも原因があることは明白だ。別に帝王切開をしたからといって二人目が産めなくなるということはないこで今まで気にしていなかったが、他に俺が関係している理由は無いと思う。


『そう、それが理由の一つよ。

あ、勘違いしないでね。透が悪いとかそういう話ではないから。帝王切開については母親である私が全面的に悪いものであって貴方にはもっと安全に産んであげられなくて申し訳ないと思ってるわ。それにそれで子供が産めい身体になったとかじゃないから』


今言った母さんの気持ちは本当だろう。昔、帝王切開のことを聞いた時も「ごめんね」って謝られた記憶がある。それに自分で言うのも何だが両親には心から愛されていると思う。間違ったことをした時は理由も聞いた上でしっかりと怒ってくれるし、いい事をした時は自分の事のように喜び褒めてくれる。俺が小説家になった時も真剣に俺の話を聞き背中を押してくれた。そんな両親が自分に少しでも恨みに近いものを持っているとは俺は考えられない。

今までこの話をしなかったのは俺に少しでも自分に責任があると思って欲しくなかったのだろう。


「理由の一つって言うからには他にもあるんだろ?」


『うん。

帝王切開繋がりではあるんだけど、、、。まぁ、簡単に言うとお父さんが私の手術にビビっちゃったのよ』


「「え?」」


母さんの口から出たあまりにも想像の斜め上をいく発言に俺と今まで黙っていた一姫がそろって驚きの声をあげる。


『お父さんの身の回りの人で手術をしたのが私が初めてだったらしくてね。「あんなに危ないことになるんだったらもう子供は作らなくていい!俺にはお前が必要なんだ!」って泣きながら言われちゃってね。好きな人にそこまで言われたら言い返せないわよ』


「まぁ、父さんの気持ちもわかるな。

誰だって大切な人を危険な目に合わせたくないっていう気持ちは一緒だし」


『そんなのわかってるわよ。

だから子供の件に関しては誰も悪くない。あえて言うなら私が悪いぐらいよ』


「何言ってんだよ。母さんだって好きで帝王切開をした訳じゃないんだから誰も悪くない」


誰だって手術をするのは嫌だ。病気に怪我など誰だってしたくないのだ。ごく稀に自業自得の場合はあるが母さんの場合はそんなことは一切ない。

そもそも出産というのは多かれ少なかれ死のリスクがあるものであり俺と母さんが二人とも生きている時点で奇跡的なことでありとても有難いことなのだ。


『そうね、ありがとう』


そう小さく言う母さんの声はとても優しかった。

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