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15【お弁当を食べつつ】

「やっぱり美味いな」


一昨日から一姫の料理を食べまくっているが普通に美味い。一昨日に冗談でトムヤムクンが食べたいと言った時も本当にレシピを見ずに美味しいトムヤムクンを作ってくれた。

何でそんなに上手いんだ?亡くなった両親と住んでいた時も料理をしてたのか?などと聞きそうになったがこれを聞いてしまうとやっと落ち着いてきた一姫の心にまた負荷がかかると思い何も聞いていない。


「ありがとう。

で、どうしたの?」


一姫が箸でお米を口に運びながら聞いてくる。

とりあえず会って話しがしたいという連絡を取っただけで内容については何も触れていなかった。


「ああ。

今日、誠司と出かけて帰ろうと思ってるから鍵を渡さないとと思ってな。

はい」


俺はポケットに入れていた家の鍵を一姫に渡した。


「ありがとうございます。

でも、いいんですか?

こんなに簡単に家の鍵を赤の他人に渡してしまって。

居候させてもらっているわけですから透くんが帰るまで外で暇つぶしするぐらいはしますよ?」


一姫は受け取った鍵を仕舞わず見つめている。


「信用してるからな。

それに一緒に家に居たって寝てる時とか仕事してる時とか一姫が家で自由にできる時間は結構ある訳だしそこを気にする意味があんまり感じられない」


「一理あるね。

それじゃあ、お言葉に甘えることにするよ」


そうしてやっと一姫は鍵をポケットの中に仕舞う。


「あ、一姫もら誰かと遊びに行くなら連絡くれな。

帰る時間を合わせるから」


一姫の状況を考えると心配してとか久しぶりに遊びたいだとかの理由で遊びに誘われる可能性は高い事に気がつく。


「いえ、その心配は無用です。

例え誘われたとしても断りますし」


「俺のことなら気にしなくていいぞ?」


「遥くんに全く気を使っていないと言えば嘘になるけど、今日一日いろんな人に話しかけられて疲れたので休みたいのと久しぶりに授業を受けてちょっとまずいかなって思ったので勉強もしないといけないのが理由ですね」


「わかったよ。

家でゆっくり休んでてくれ」


流石にあそこまで絡まれたら遊びに行く体力も無いわな。

帰ったら授業のノート貸してやるか。

見直さない癖にノートは綺麗に書いてるからな。


「あの、遥くん。

私の事ってご両親には言ってるの?」


「ん?

言ってないな」


特に両親に何かお願いすることも迷惑かけることも無いと思っているので連絡は別に急がなくてもいいと考えていた。


「昨日から考えてたんだけどやっぱり報告した方がいいと思うの。

理由は一杯あるけど例えば私が一人で家に居る時に遥くんのご両親が家に来たら私は泥棒として通報されるよね?」


「十分に有り得る話だな。

わかった。

今日の夜にでも電話してみるよ。

もしかしたら一姫にも少し話して貰わないといけないかもしれないが大丈夫か?」


流石に俺だけの証言だと信じて貰えなかったり変な誤解を与えかねないので一姫の証言も必要になってくるだろう。


「うん、大丈夫。

もし、ご両親と揉めたら私を追い出してくれていいからね」


一姫そう苦笑しながら言う。


「まあ、大丈夫じゃないか?

それにもし揉めても追い出したりしないよ」


「ありがとう」


「あ、もうこんな時間か。

そろそろ教室に戻らないとな」


ふと黒板の上にある時計に目を向けると昼休みが終わる十分前になっていた。


「そうですね。

それではまた」


「おう」


そうして話している内に食べ終わった弁当箱をカバンに直し俺達は自分の教室に向けて足を進めた。


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