第2章 戦争の放棄
第二章 戦争の放棄
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
第5章 世界一有名な条項
伊野上と桃子は、翌日、再び学校にいた。
日本国憲法第2章について、説明を聞きたかったからだ。
「先生、すこしいいですか?」
伊野上が聞いた。
「ええ、いいわよ。どうしたの?」
「憲法の第2章と反しているような気がして…」
先生は、仕事をしている手を止めて、彼らの方向へ向き直った。
「どういう風にそう思うの?」
「第2章は、こうかかれています。私たちがまとめたものなんですが…」
桃子が先生にまとめたレポート用紙を見せる。
「日本国憲法第二章第九条。
日本国民は、正義と秩序を基盤とする国際平和を本気で求めていて、国家権力によって行われる戦争や、武力による脅しや武力を使うことは、国際紛争を解決する手段として、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力を保持しない。国の交戦権は、決して認めない。 」
先生は、それをすぐ横に座ったジョージに見せた。
「どう思う?」
「この条項は、世界でもっとも有名な憲法と言われるものでス」
二人は、同時に聞いた。
「世界一有名なの?」
「そのとおりでス」
彼は、その知識を如何なく発揮してくれた。
「この憲法の条文は、非軍事憲法として有名でス。いわゆる、G8内でこの憲法を持っている国は、日本だけでス。世界中を見てみたら、30カ国弱の国が似たような条文を有していまス」
彼は、先生のパソコンを借りて彼らに見せた。
「例えば、コスタリカ憲法では、その第12条で軍を持たないことを宣言していまス。ただし、米州の協定に基づいての軍の組織に関しては、否定してませン」
「他の国はどうなんですか?」
伊野上は聞いた。
「パナマやモーリシャスなどがいますネ」
「じゃあ、軍を持っているところはどうなんですか」
桃子が聞いた。
「例えば、ドイツ基本法を見てみましょウ。この法律は日本で言う憲法に当たるものでス。[http://www.fitweb.or.jp/~nkgw/dgg/]より、引用しましょウ。
[第26条 [侵略戦争の準備の禁止]
(1) 諸国民の平和的共存を阻害するおそれがあり、かつこのような意図でなされた行為、とくに侵略戦争の遂行を準備する行為は、違憲である。これらの行為は処罰される。
(2) 戦争遂行のための武器は、連邦政府の許可があるときにのみ、製造し、運搬し、および取引することができる。詳細は、連邦法で定める。]
これは、軍を持たないというものではありませン。特に、私は全文を読んだわけではありませんが、軍に関する規定は第10章aの防衛事態にかかれていまス。興味がある人は、全部読めばいいと思いまス」
「他国に攻めるためには、他国から侵略を受ける必要があるって言うこと?」
「手っ取り早くまとめるなら、そのとおりでス」
桃子がまとめた意見に、ジョージは賛同を示した。
伊野上が聞いた。
「でもさ、回りの国々は、日本が憲法を改正、特にこの第9条を改正したときには、軍国主義に戻るって言ってるけど…」
「Oh〜。それは、別問題でス。あなたが今すぐけんかしろと言われてできますカ?それと同じレベルの話でス。気にしないほうがいいと思いますネ」
「確かに…それは無理だ」
ジョージは言った。
「それと同じことでス。それに、他国が憲法と言う国の根幹に関することをとかく言う資格は一切ありませン。研究者ならまだしも、それ以外の人たち言うことは言語道断でス」
「じゃあ、アメリカが他国に戦争することは?」
伊野上が聞くと、ジョージはごにょごにょと言った。
「それは…また別問題ですネ。あっと、ちょっと行く用事があったんです。それではっ!」
ジョージは、そのままどこかへ走って逃げた。
「ところで、本当になんでアメリカは他国といろいろするんでしょうね」
桃子が聞いた。
「それは、『Google先生』にでも聞いて頂戴」
先生はあくびを一つして、そのまま職員室から出た。