第10章 最高法規・第11章 補則
第十章 最高法規
第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
第九十八条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
第十一章 補則
第百条 この憲法は、公布の日から起算して六箇月を経過した日から、これを施行する。
2 この憲法を施行するために必要な法律の制定、参議院議員の選挙及び国会召集の手続並びにこの憲法を施行するために必要な準備手続は、前項の期日よりも前に、これを行ふことができる。
第百一条 この憲法施行の際、参議院がまだ成立してゐないときは、その成立するまでの間、衆議院は、国会としての権限を行ふ。
第百二条 この憲法による第一期の参議院議員のうち、その半数の者の任期は、これを三年とする。その議員は、法律の定めるところにより、これを定める。
第百三条 この憲法施行の際現に在職する国務大臣、衆議院議員及び裁判官並びにその他の公務員で、その地位に相応する地位がこの憲法で認められてゐる者は、法律で特別の定をした場合を除いては、この憲法施行のため、当然にはその地位を失ふことはない。但し、この憲法によつて、後任者が選挙又は任命されたときは、当然その地位を失ふ。
第11章 日本国憲法は最高法規
休憩を1時間ほど取ってから、残っている章を一気に済まそうとしていた。
「じゃ、サクッと済ましてしまおう。
第九十七条、この日本国憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類が産まれてきてから今に至るまでの間に行われて来た自由獲得の努力の成果であって、これらの基本的な権利は、過去にあった幾多の試練に堪えて、今生きていてこれから産まれてくる全ての日本国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
第九十八条、この日本国憲法は、国の最高法規であって、憲法全文に書かれている内容に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2、日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、誠実に遵守することを必要とする。
第九十九条、天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この日本国憲法を尊重し擁護する義務を負う。
第百条、この日本国憲法は、公布の日から起算して6か月を経過した日から、施行する。
2、この日本国憲法を施行するために必要な法律の制定、参議院議員の選挙及び国会召集の手続並びに施行するために必要な準備手続は、前項の期日よりも前に、これを行うことができる。
第百一条、この日本国憲法が施行される時、参議院がまだ成立していないときは、その成立するまでの間、衆議院は、国会としての権限を行う。
第百二条、この日本国憲法による第一期の参議院議員のうち、半数の者の任期は、三年とする。その議員は、法律によって決定する方式に従って、定める。
第百三条、この日本国憲法を施行するときに在職する国務大臣、衆議院議員及び裁判官並びにその他の公務員で、その地位が認められている者は、法律で特別に決められていることをした場合を除いては、この憲法を施行するために、その地位を失うことはない。但し、この憲法によって、後任者が選挙又は任命されたときは、もちろんその地位を失う。」
「なんだかよくわからないね、特に最高法規ってどういうこと?」
桃子が伊野上に聞いてみる。
「日本国の中で使われている全ての規則が、憲法の精神に反していれば、その効力を無効にすることができる力をもっている法律のこと。この場合は、国の基本法として存在している憲法のことを指すことになってるよ」
「憲法って、どんな存在なんだろうね」
「ちょっと難しい話だけど……」
軽く前置きをしてから、伊野上が続ける。
「今使われている憲法という意味は、"立憲的[近代的]意味の憲法"という言い方で、国民の権利を国家が統制することがないようにするために作られたのが大本みたい。要は、国が国民をいじめないために、国民が国を見張るための規則が憲法だと思えばいいみたい」
「なるほど……」
桃子は最後に、さっと全部に目を通してみる。
「これで終わりかな?」
「いや、後ちょっとあるんだ」
「なによ、憲法の条文はこれで終わりでしょ」
「さっきまで俺たちがやってたのは、解釈といっても、勝手に考えていたもので、公的なものでは一切ないんだ。でも、『最高裁判所』が裁判によって判決を出すときに憲法にふれることがあるんだ。『判例』といって司法が行った憲法の解釈のこと。ほかにも、内閣法制局が行う憲法解釈もあるよ」
「じゃあ、それをやって、本当の意味での憲法解釈になるって?」
「かなり大雑把にはね。憲法解釈については、大学生になってから法学部にでも入らない限り細かくやらないさ。授業を取れば別問題らしいけどね」
「よくそこまで調べたね」
驚きつつ、桃子が伊野上に聞いてみる。
「少しばかり助けてもらった人がいるけどね。俺の友達の姉が法学部にいて、彼女にちょくちょくメールを出して教えてもらったこともあるよ。ほら、隣のクラスにいただろ、桜上っていうやつが」
「ああ、あの子ね」
桃子も何となく理解したようだ。
「そんなことよりも」
伊野上が壁にかかっている時計に目をやると、12時に近づいていた。
「そろそろ時間だから、そのことは明日にしよう」
「じゃあ、ベッドへ案内するね」
二人は連れ添って、明日に備えて眠った。