9.海を見に
夢で交わした約束を胸に友輝は海へと向かう
雪の抱えた思い、友輝の決意
2人を左右していく・・
9.海を見に
「う~ん・・・」
寒いはずのベットが温かく感じた。動こうとすると何か体に抱き着いていた。それは・・・
「おはよう雪」
「友輝?!な、なな!ごめん・・!」
慌てて離れようとすると友輝が腕を絡めてきて離してくれなかった。
「なんだ、逃げるなよ・・なぁ」
「何・・・?」
意味ありげな顔をして迫ってくる・・
「海、見に行かないか?」
「え?どうしたの・・・急に・・・」
何一つ心が読めなかった。
「行きたくなっただけだ・・雪・・・ダメか?」
「い・・いよ」
曖昧なだけど返事をした。友輝がどうして海に行きたいと言い出したのか分からない。けれど嬉しそうな友輝を見て考えるのをやめた。
「ほら、いくぞ」
手を繋いで海へと移動した。電車に乗って潮のにおいがするところまできた。見渡してとっても嬉しくなる。
「友輝!連れてきてくれてありがとう!わたしね」
「海が好きなんだろう?」
「え?」
(なんで・・・私が海が好きなことを知って・・・)
疑問を投げかけようとした時だった。
「夢に雪の母親が出てきて聞いたんだ、海が好きだって」
(うそ・・母さんは私を嫌ってるはずなのに・・・)
「雪の母さんが言ってたんだ。お前に寂しい思いをさせてごめんって」
そのとたん、心の中で何かがはじけた。涙で止まらなくてしゃがみこんだ。
「うぅ・・・母さん」
「大丈夫だ。俺も約束したんだ、俺がそばにいるって」
私は友輝に抱きしめられながら言葉を紡いだ。
「ありがとう・・」
「お前はいつも笑ってろよ」
ざぁーっという波の音で泣いている声も聞こえなくなってしまう。私の涙を友輝はぬぐってくれた。笑顔で返した
「そう、それでいい」
(私は知らなかったんだ・・こんなに思ってくれてたなんて・・)
ぽたぽたと雫が落ちて雨になってしまった。
「やばい!とにかく近くの宿探すぞ!」
「え!?でも・・・」
「とにかくこんな雨じゃ帰れない!いくぞ!」
私たちは走って宿を探した。体は冷えていった・・・
海へとたどり着くが雨に打たれる
涙した雪を雨は冷たく押し寄せる
宿を見つけることはできるのか・・・
10話に続く~