5.自覚
ついに崖に来てしまった
未練はあるものの、友輝を思って自殺をしようとした雪
果たして友輝は止めることができるのか・・・
5.自覚
あの崖へとつくとあの日のように足元を見た。今の私にできることはこれしかなかった。心は満たされる気がした。
(一人の人を笑顔にできたのだから・・・)
目を閉じて今までのことを思い出す。
[お前は?]
[お前も笑うんだな]
[雪はもう二度とあの顔をするな・・!生きろよ!!勝手に消えるな!!!]
心を温めてくれた言葉の数々・・・思い出すたびに自然に笑えた気がした。後ろを振り返り、一回だけお辞儀をした。
「友輝・・・ありがとう・・」
感謝の言葉は誰にも届かない。けど言えば少しは救われる気がした。体が少しずつ傾いていく・・・
(これで・・・本当に終わりかな・・・・)
「雪ーー!!!!!」
誰かの声が聞こえた・・傾いていたはずの体が元の位置へと戻っていた。驚いて顔を上げると・・・
「友・・・輝・・?」
そこには、青ざめた友輝の顔があった。名前を呼ぶか呼ばないかのところで抱きしめられる。
「もう自殺なんてするなって・・言っただろ!!もう二度と人を失うのは嫌なんだよ!!」
ぎゅっと抱きしめる力が強くなった。私はもう死ぬと決めたのにその覚悟が空回りして言いたくないようなことを言ってしまう。
「だって私は・・・友輝にとって・・必要のなぃ・・・」
「必要なんだよ!!!!」
声の大きさにびっくりして固まってしまう・・
「私・・私・・・・」
「好きだ 雪」
「え・・・?」
(友輝が・・・私を好き・・?)
「初めて笑ったあの時からお前から目が離せなかった・・・そしていつの間にか好きになってた・・」
「あ・・・」
「だから・・・そばにいてくれ・・」
優しい声とぬくもりに目から雫が零れ落ちる。泣いていた・・初めて泣けたんだ・・・
「うぅ・・・」
二人で抱き合って寒さがなくなっていた。溢れた涙を友輝はぬぐってくれた。
友輝の家に戻り、ベットに腰を下ろした。
「友輝 さっき・・・」
友輝はコートを下ろして、私へと近づいてくる・・
「雪・・さっき自殺しようとしたな・・?だから・・お前の・・」
学校に連絡されるかと思い、袖を引っ張って止めようとした。
「それは・・!やめっ・・んっ!」
急に友輝の顔が近くなり、唇の柔らかな感触が当たった。顎を押さえられ、頭の後ろを掴まれる。頭が働かず、やっとキスされてることに気づいた。
(なに・・・これ・・・)
「んんっ・・・っ・・ん・・」
全く離してもらえない・・開かれた口の隙間から舌が入ってくる・・・絡まった舌から息が苦しくなっていく・・・ちゅっと音をたてて口が離れていく。びっくりと息苦しさに声が出なくなっていた。
「雪のファーストキスはもらうな。自殺しようとするなよ?」
力が抜けてその場に座り込む・・
(びっくりした・・・友輝が・・私の口に・・・)
さっきあったことが信じられなくて顔を赤くした。恥ずかしくて顔を隠すと友輝は私の手首を掴んで顔からどかしてしまった。
「顔見せろ・・雪が生きてること確かめたい・・・」
顔をそむけることもできず、友輝と目が合ってしまう・・
(いやだ・・・恥ずかしい・・!!)
こんな感情初めてだった。戸惑ってしまうこと、友輝と目を合わせられないこと。全部全部わからなかった。私の顔を見て友輝は目を細めて笑った。
「かわいい・・」
「っん・・」
また唇を塞がれてしまう・・・不思議と嫌だとは思わなかった。どうしてなのか知らなかった・・・
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唇を塞いで舌を絡める。雪は顔を赤くしていたが、徐々に顔がとろけたようになっていく・・そんな姿を見るとかわいくて仕方がなかった。
「友・・輝・・」
ゆっくり噛みしめるように名前を呼んでくれる。ふわりとした声に耳をくすぐられる。毛布
へと下ろし、瞼に唇を落とす。
「おやすみ、雪・・」
雪はゆっくり瞼を閉じ、すーすーと眠ってしまった。
(こんなにかわいいなら、最初から気持ちを伝えてこうすればよかった)
静かな吐息とかわいい寝顔を見て頬が緩む。
(誰にも渡さない・・・俺だけの雪だ・・・)
心の中のつっかえが取れて、楽になる。今度からは雪に甘えるのもいいかと思ってしまう自分がいた・・・
初めて心を通わすことができた二人
お互いのことを知っているからこそできるのだった
これからの生活は明るくなっていくのだろうか・・・
6話に続く~