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雪へと消える  作者: 桜霧 風華
3/11

3.普通って

やっと手に入れた普通の生活

そこには一冊の本があった。内容を見た雪はまたあの感情に支配されてしまう・・

いったい何が起きてしまったのか・・

3.普通って


 朝、目を覚ますと友輝はまだベットで眠っていた。私は少し早めに起きて最低限の食材で朝食を作った。

 目玉焼き レタスのサラダ コンソメスープ トースト こんな感じで品数だけが多い料理になってしまった。


「ふぁ~・・おはよう雪」


「おはよう。朝食で来てるよ。勝手に食材使っちゃってごめん・・・」


目の前の料理を見て友輝は目を輝かせた。


「すごいな・・こんなにしっかりした朝食は久しぶりだ。ありがとな」


そう言って作ったものをすべて食べてくれた。美味しそうに食べる友輝を見て心が温かくなっていく。

玄関へと出る友輝に手を振った。


「いってらっしゃい」


「いってくる。くれぐれも外には出るなよ?」


「うん」


友輝を見送った。家にいてもやることがなく部屋の掃除や洗濯をした。タオルを畳んだり、部屋にクリーナーをかけたりしていた。ふとあるところに目がとまった。本棚だった。そこには一冊の本があった。タイトル『白いうさぎの冬』パラパラとめくり、内容を読んでいった。

 あるところに一匹のうさぎがいました。その毛は真っ白でまるで冬の空に舞う雪のような白でした。かわいらしいうさぎですが、一匹だけが白いため仲間外れにされていました。どれだけ頑張ってもそのうさぎに近づく者はいませんでした。冬となり、雪がしんしんと降ってきました。ウサギは誰も温めあえる仲間がいなかったため、凍えていた。そして、あまりの寒さと降る雪に・・・

ーそのうさぎは死んでしまったー

(あぁ・・私と同じだ・・・一人ぼっちで何もできなくて・・)

また黒く重い感覚に押されていく。やっと普通の生活をしようとしていたのに・・辛さのあまり部屋の角でうずくまることしかできなくなっていた。

(もう・・いやだ・・・)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーーーー


席を立って家へと帰ろうとする。だが・・


「友輝~ゲーセン行かね?」


「また今度で」


近くの席の奴らに誘われたが、雪が心配で早く帰りたいがために断った。

(雪の奴・・しっかりやれてるのか・・?)

心配のあまり今までにない速度で家に帰った。帰ってみると部屋がきれいに片付いていた。けれど、部屋が真っ暗になっていた。よく見ると部屋の角で雪がうずくまっていた。


「どうした・・!何かあったか・・・!」


雪は反応がなくただ下を向いていた。雪の近くには一冊の本があった。それは、『白いうさぎの冬』だった・・


「これを読んでいたのか・・?」


そう聞くと静かにうなずいた。


「友輝・・・私も・・このうさぎみたいに消えちゃうのかな・・?」


こっちを見た雪の顔は、あの時の何も映さない暗い瞳をしていた。

(どうして・・・そんな目をするんだよ・・・!)

居ても立っても居られずに、俺は雪の肩を掴んだ。グラグラと揺らした。


「雪・・!お前はもう二度とその顔をするな!生きろよ!勝手に消えることなんて許さないからな!!」


雪は大きく目を見開いた。震える声で俺に投げかけてきた。


「私・・・生きてていいの?」


「当たり前だろ!!分かったら、笑え!!」


その言葉をかけると、雪は目を細めて笑った。誰よりも優しい笑顔だった。

(そうか・・・俺は・・)

ここでやっと確信した。思っていたことは・・・


(俺は・・・雪にずっと笑っていてほしい・・・そういう願いだったんだ・・・)

友輝は雪にとって唯一の話せる相手なんだろう

これから雪はどれほど友輝に心を開くことができるのだろうか・・・

4話に続く~

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