3.普通って
やっと手に入れた普通の生活
そこには一冊の本があった。内容を見た雪はまたあの感情に支配されてしまう・・
いったい何が起きてしまったのか・・
3.普通って
朝、目を覚ますと友輝はまだベットで眠っていた。私は少し早めに起きて最低限の食材で朝食を作った。
目玉焼き レタスのサラダ コンソメスープ トースト こんな感じで品数だけが多い料理になってしまった。
「ふぁ~・・おはよう雪」
「おはよう。朝食で来てるよ。勝手に食材使っちゃってごめん・・・」
目の前の料理を見て友輝は目を輝かせた。
「すごいな・・こんなにしっかりした朝食は久しぶりだ。ありがとな」
そう言って作ったものをすべて食べてくれた。美味しそうに食べる友輝を見て心が温かくなっていく。
玄関へと出る友輝に手を振った。
「いってらっしゃい」
「いってくる。くれぐれも外には出るなよ?」
「うん」
友輝を見送った。家にいてもやることがなく部屋の掃除や洗濯をした。タオルを畳んだり、部屋にクリーナーをかけたりしていた。ふとあるところに目がとまった。本棚だった。そこには一冊の本があった。タイトル『白いうさぎの冬』パラパラとめくり、内容を読んでいった。
あるところに一匹のうさぎがいました。その毛は真っ白でまるで冬の空に舞う雪のような白でした。かわいらしいうさぎですが、一匹だけが白いため仲間外れにされていました。どれだけ頑張ってもそのうさぎに近づく者はいませんでした。冬となり、雪がしんしんと降ってきました。ウサギは誰も温めあえる仲間がいなかったため、凍えていた。そして、あまりの寒さと降る雪に・・・
ーそのうさぎは死んでしまったー
(あぁ・・私と同じだ・・・一人ぼっちで何もできなくて・・)
また黒く重い感覚に押されていく。やっと普通の生活をしようとしていたのに・・辛さのあまり部屋の角でうずくまることしかできなくなっていた。
(もう・・いやだ・・・)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー
席を立って家へと帰ろうとする。だが・・
「友輝~ゲーセン行かね?」
「また今度で」
近くの席の奴らに誘われたが、雪が心配で早く帰りたいがために断った。
(雪の奴・・しっかりやれてるのか・・?)
心配のあまり今までにない速度で家に帰った。帰ってみると部屋がきれいに片付いていた。けれど、部屋が真っ暗になっていた。よく見ると部屋の角で雪がうずくまっていた。
「どうした・・!何かあったか・・・!」
雪は反応がなくただ下を向いていた。雪の近くには一冊の本があった。それは、『白いうさぎの冬』だった・・
「これを読んでいたのか・・?」
そう聞くと静かにうなずいた。
「友輝・・・私も・・このうさぎみたいに消えちゃうのかな・・?」
こっちを見た雪の顔は、あの時の何も映さない暗い瞳をしていた。
(どうして・・・そんな目をするんだよ・・・!)
居ても立っても居られずに、俺は雪の肩を掴んだ。グラグラと揺らした。
「雪・・!お前はもう二度とその顔をするな!生きろよ!勝手に消えることなんて許さないからな!!」
雪は大きく目を見開いた。震える声で俺に投げかけてきた。
「私・・・生きてていいの?」
「当たり前だろ!!分かったら、笑え!!」
その言葉をかけると、雪は目を細めて笑った。誰よりも優しい笑顔だった。
(そうか・・・俺は・・)
ここでやっと確信した。思っていたことは・・・
(俺は・・・雪にずっと笑っていてほしい・・・そういう願いだったんだ・・・)
友輝は雪にとって唯一の話せる相手なんだろう
これから雪はどれほど友輝に心を開くことができるのだろうか・・・
4話に続く~