11.あと少しだけ
宿で一夜を過ごした2人。雪の心には不安がよぎる
クリスマスが迫る中、雪は心の叫びに惑わされていく・・
そこで友輝がかけた言葉が雪を救っていく・・・
11.あと少しだけ
あれから私たちは宿を出で家に帰ることができた。そして友輝の家に行き、あと3日に迫ったクリスマスを待った。私は立ち上がるとくらくらして立っていられる日が少なくなっていった。
「大丈夫か?」
「うん・・平気」
少しずつ命が消えていくことがよく分かった。友輝を心配させたく無くて言えなかった。
「水いるか?」
「ありがとう」
ふらつく体を支えてくれて水を飲むことができた。
「いつもありがとう」
「気にすんな。雪は自分の体を優先しろ」
頭を撫でてくれる友輝に寄りかかっていた。私はもうすぐに死んでしまう・・・自分で理解できた。
けれど死にたくない。友輝を置いて死にたくない。私にはもう何もできなかった。弱く生きずに強く生きる・・・友輝が教えてくれたことだった。
(私は・・・もっと・・生きていたい・・・!)
そう思ってまた天井を見つめる。そして友輝を見た。友輝に出会えたこともまた運命なのかもしれない。
「ねぇ、友輝・・」
「ん?」
また笑顔でこたえようとした。涙がこぼれてしまう・・・
「死にたく・・ないよ・・・私・・」
ここで初めて弱音を吐いた。白血病と分かってからずっと強くいたかった。
「雪・・!」
友輝が抱きしめてくれる。友輝の服を涙で濡らしてしまう・・
「いやだ・・・いやだ・・・せっかく・・友輝に会えたのに・・・」
「俺だっていやだ!余命なんて関係ない!!乗り越えていこう」
こんな時でも慰めてくれる友輝が私にとってかけがえのない人になっていた。
「絶対に死なせない・・何があっても!」
「友輝・・」
「必ず治してまた海を見に行こう」
「うん・・・!」
ふわりとした気分だった。クリスマスが迫る中、あと少しだから・・・友輝に言いたかった。
(最後ぐらい・・・)
短い人生にならないようにあと少しを生きることにした。もう戻れないことはわかっていたから・・・
死にたくないを願う雪を優しく抱きしめた友輝。
クリスマスはまじかに迫る。
思いを胸に頑張る友輝、命の終わりを感じた雪・・・
そしてクリスマスとなる・・・