勇者について
ドラゴン達と別れ、街へ戻ってきた世莉架。別れた後、適当に山付近を散策していたため、時間的には日が沈む前くらいになっていた。
世莉架が冒険者ギルドに戻った時、ギルドには人が溢れかえっていた。夜ご飯を食べる者が多く、その他にも夜でなければ受けられない依頼や、逆に依頼から帰ってきた世莉架のような冒険者が沢山いる時間帯なのだ。
とりあえず報酬金を受け取った世莉架。それから宿に戻り、どこかに夕食でも取りに行こうかと考えていると、ギルド内に大きな歓声が響いた。
皆一様にギルドの入り口の方を向いており、世莉架もそちらを見てみる。そこには実はとても有名だというアルファとエルファがいたのだ。
「お前ら、よく帰ったな!」
「ってことはキマイラの討伐は成功したんだな。流石だぜ!」
「よーし、今日は宴だー!」
「本当に凄い奴らだ。この国の誇りだぜ」
全方面から二人を褒め称える言葉が次から次へと出てくる。その光景を見て本当に凄い人達なんだと世莉架は実感した。
二人は笑みを浮かべて皆に対応している。彼らからしたらこんな扱いも慣れたものなのだろう。
世莉架は二人に話を聞きたがっている。二人は勇者の候補になったこともあるようだし、色々な有意義なことが聞けると思ったからだ。
二人はギルドで夕食を取るようで、報酬を受け取った後にテーブルについた。
その周りには沢山の人が集まり、楽しそうに談笑を始めた。
正直、そんな所には入りたくない世莉架であったが、次いつ会えるか分からないため、仕方なくそのテーブルに近づいた。
「どうも、お二人さん」
世莉架は談笑している二人に声をかける。
「セリカ!」
「おう、セリカじゃねーか」
二人はきちんと世莉架を覚えていた。
「あら、覚えていてくれたのね。嬉しいわ」
「そりゃあ、貴方みたいなびっくりするほどの美人さんを忘れる方が難しいでしょ?」
「そうだぜ。それにお前はなんだかそこらの普通の冒険者とは違う気がするんだよなぁ」
「ふふ、ありがとう。ここいいかしら?」
二人に褒められたことに感謝しつつ、対面の一つ空いていた席に座る。
「無事依頼達成できたのね」
まずは二人が受けると言っていた依頼について尋ねる。
「なかなか強かったけど、そのキマイラは通常種じゃなかったのよね」
「希少種か、変異種か……どちらにせよ、そこはギルドに任せるしかないな」
二人曰く、本来の目的であるキマイラと出会えずに、通常種ではない特殊なキマイラと遭遇したらしい。
「そう。それにしても貴方達って英雄みたいな扱いを受けているのね」
「あんまりそういう扱いは好きじゃないんだけどね」
「俺は好きだけどな!」
アルファはお酒を飲みながら笑って言う。
「では何故勇者にならなかったの?」
世莉架は一番聞きたかった事を聞く。
「……あぁ、それか。なんつーか勇者って面倒臭そうじゃん?」
アルファは逡巡した後、軽い感じで答えた。
「そうね、勇者になるというのはとても名誉な事だと思うわよ。でも、普通の冒険者とは遥かに束縛やら義務やら地位やらが多く高くなるじゃない? それは私達の本意ではないもの」
冒険者とは自由な職業だ。確かに死と隣り合わせの危険な仕事でもある。しかし、それでも冒険者を目指す者は沢山いる。勿論冒険者の中にもランクという地位的なものはあるが、基本は自由だ。
つまり、冒険者になる者というのはその殆どが自由のためだ。己の鍛錬のため、色々な世界を見たいからなど、その他にも理由はあるだろうが、一番最初に来る理由は自由というところだろう。
「その意見には私も同感だけど、良かったの? 聞いた話によると今いる勇者は全員がロクでもない奴らなんでしょ? そんな奴らに世界の命運なんて任せられないでしょう」
「あぁ、確かにな。今ここは活気があってまるで平和そのものにみえるが、実はとても危うい状況だ。いつ国が滅んでも、いや世界が滅んでもおかしくない。そしてそれを阻止するために勇者がいるのにそいつらが最低な奴らばっかりというのは大きな問題だ。けど、なまじ実力はあるからこそ厄介なんだよな」
「でも貴方達はそんな勇者達とは明らかに違う。自由を求めるのは冒険者の性だと思うけれど、このままじゃ世界が滅んで自由がどうのこうの言ってる場合じゃなくなるわよ?」
そこでアルファは飲み物をテーブルに置いて言った。
「俺達は強い。自信もある。だが、俺達が勇者となって他の勇者を取りまとめ、様々な国の様々な問題を解決して更に魔族、魔王どもを殲滅する……そんな事ができると言える人間が果たしているか? 仮にいたとして本当に成し遂げられると思うか?」
「勿論、難しいわね。貴方達のような人が沢山いればなんとかなるかもしれないわね」
「それでも難しいさ。そもそも俺達くらい強い奴が滅茶苦茶少ないし、更に性格もまともな奴なんてマジでいねーぞ」
「はぁ、面倒な世界ね本当。でも、このままだと確実にこの世界は滅ぶ。貴方達はそれを受け入れるの?」
「……」
アルファは一つ息を吐き、テーブルに置いていた飲み物を飲む。
「受け入れないわ。まだまだやりたい事、行ってみたい所、成し遂げたい事が溢れんばかりにあるもの。それに、私達が何もしていない訳じゃないわ」
今度はエルファが答える。
「そう。ごめんなさいね、折角の楽しい雰囲気の所にこんな暗い話を持ち出して」
「別にいいさ。むしろ、俺達に冒険者初心者のセリカが結構突っ込んだ話を堂々としてきたことに驚いたぜ」
「確かにね。セリカはいつか大物になりそう」
二人はそんな風に言って笑った。世莉架はこの二人と話すことが心地よく感じていた。
「ありがとう。申し訳ないんだけど、あと少しだけ質問していい?」
「おうよ」
「じゃあまず、今いる勇者全員の特徴を教えてくれない?」
「なんだ、そんな事も知らないのか?」
「私、田舎者なのよ。辺鄙なところから来てるから今の世界の状況はぼんやりとしか知らないの」
「そういう事か。俺たちの事も知らなかったもんな」
どうやらアルファはきちんと話す気になったようで、世莉架を見る。
「まず、勇者は全部で五人いる。人間が二人、エルフが一人、獣人が一人、竜神族が一人だ」
「エルフに獣人、竜神族……」
まさに異世界だからこそ笑わずに聞く事の出来る内容だった。どれもこれも世莉架の好奇心を強く刺激する。
「ちなみに人間の二人と獣人の勇者が男、エルフと竜神族の勇者が女よ」
「なるほど」
女性の勇者もいるんだと世莉架は少し驚いていた。
「どいつもこいつも全く世界を救う気がないようにしか思えないような奴らで、随分好き勝手やっているようだ。ただし強い。これが一番の問題で、勇者に強く言える者があまりに少ない。実力で叩きのめそうにもそんな簡単な相手ではないし、本来協力すべき勇者に対して暴力はよろしくない。まぁ、そんな感じで勇者達は常に野放しで、今勇者達がどこにいるのか、そこで何をやっているのか全く分からん」
「面倒な奴らね」
「全くだ」
ここまで疎まれている者達を果たして勇者と呼んでいいのか、と世莉架は純粋に思っていた。勇者に選ばれてから好き勝手やり始めたのか、元々好き勝手やっている者達だったのかは分からないが、勇者を選ぶ時に強さ以外の基準をきちんと設けてあるのだったら選んだ者達にこそ問題があると考えられる。
「他に勇者の情報はある?」
「さっきも言ったが今どこにいるのか、何をしているのかは全く分からん。後は……どいつもこいつもクソみたいな奴らだって事だ」
アルファは現在の勇者達が嫌いなのだろう。かなり嫌そうな顔をしている。
「いやもっとあるでしょ。名前とか」
「名前は知っときたいわね」
急に適当になったアルファにエルファがツッコミを入れる。世莉架はエルファの方を見る。
「でもね、全員の名前は知らないの」
「そうなの?」
「えぇ。一人だけ名前も素性も全く分からない勇者がいるの。好き勝手やっているという噂もないし、だからと言って世界を救うために奔走しているという噂もない。そんな謎に包まれた人間の勇者がいるのよ」
「そんな勇者が……」
どうやらその勇者はかなり特殊のようだ。しかし、世莉架にはなんだかその人間の勇者と会うことが何かの鍵になる気がしていた。
「多分一番会うのが難しいでしょうね。私達ですら何も知らないんだもの」
「なるほど。他の勇者は?」
「まず人間の勇者の一人、ジーベル・アウストラ。こいつは女にしか興味ないクソ野郎よ。常に女を侍らせていて、綺麗な女の人には必ず声をかけて拒否されたら無理矢理……なんて事もあるくらいのね。いつか消すけどね」
「……それは確かに嫌ね」
その時のエルファは表情は普通だったが、纏う雰囲氣は殺意に満ちていて間違いなくその勇者と嫌な思い出があるんだなと思った世莉架だった。エルファの実力なら無理矢理というのは無理だろうが、しつこく迫られたりでもしたのだろうか。
「次に獣人の勇者ね。ヴァルヘング・ハイザーという奴で、とにかく好戦的で戦うことが大好物なの。世界を救うなんて事考えていないわ。とにかく強者と戦いたいっていう狂人よ。まぁ、強者を求めるが故に魔族達を倒してくれたりするんだけどね」
そういう人間は大体単純な奴で、上手く誘導できれば魔族達とだけ戦わせることが出来るかもしれないと世莉架は画策した。
「エルフの勇者はフィリップ・ハンスメール。見た目は絶世の美女で、正直こいつが謎の勇者以外では一番マシかしらね。エルフは高貴な種族、なんて言うけれどエルフの勇者は陰湿で嫉妬深くて面倒な女よ。こいつも嫌い。早くいなくなってほしい」
「ふふ」
エルファが他の勇者に対して本音を述べる姿が少し可愛らしくてなんとなく笑ってしまう世莉架だった。
「そして最後が竜神族の勇者ね。名はリハイン・ウルバ。こいつも絶世の美女ではあるわ。ただ黒い噂が絶えないの。魔族と繋がっているだとか、魔王の愛人だとか、様々な国々の裏社会を統べているだとか……これだけ色んな噂が出ると言うことはあまり素性が知られていないと言うことなの。私達も接点はかなり少ないわ」
「なるほど。ではその人間の謎の勇者と竜神族の勇者と会うのはなかなか難しそうね」
「そうなるわね。というか勇者達に会う気なの?」
「会う気というか、単純に興味があるだけよ」
実際はいつか会わなければならないのだが、ここで会いたいなんて言ってもあまりいい顔はされなそうだと世莉架は判断する。
「そう。まぁ、勇者と会っても良いことなんてないしね。むしろ気分を害されて嫌な気分になるだけだから、会わなくて済むことを願いましょ」
どうやらエルファは本当に現勇者達が嫌いのようだ。先ほどからずっと黙って食事しているアルファも同様にだ。やはり勇者達と同レベルの実力の持ち主の二人、そして勇者の役割を断った二人だ。色々と現勇者とあったのだろう。
「そうね。それじゃあもう一つ質問。このフェンシェント国は他国と比べてかなり平和だと聞いたわ。では逆に、今危険な国はどこ?」
世莉架はいずれは他国にも行くことになる。最終的には魔族達がいる場所、つまり魔王の占領下の土地に向かうことになる。このフェンシェント国でとりあえずやれることをやり終えた後、次にどこに行くべきなのかを検討するために世莉架はそう尋ねたのだ。
「確かにこの国は平和よ。現状、一番安全なんじゃないかしら。危険な国で言うと……」
「オウリュール帝国だな」
そこでアルファが話に混ざってきた。
「そこは危険なのね」
「あぁ。危険も危険、昔は平和で活気溢れる国だったが、今じゃあ見る影もない。ただの軍事国家になりやがった。魔族達との戦闘だけじゃなくて、そことの戦闘もこれから多くなるかもしれない」
アルファの先ほどまでの勇者に対しての態度は純粋に嫌い、といった様子だったが、今は嫌いという感情とともに悲しみ、哀れみの感情が溢れていることに世莉架は気づいた。
「そう……もしかして、二人はそのオウリュール帝国に何か因縁でもあるの?」
「……オウリュール帝国は私たちの生まれ故郷よ」
「!」
そんな気はしていた世莉架だったが、やはりと思った。
「俺たちが子供の時から既に暗雲は立ち込めていた。けど、子供だった俺たちにできることなんて何もない。そして俺たちは小さい頃から戦闘の才能があったんだ。だから周りの友達が普通に学校に通っている中、冒険者として働き始めて気づいたら今みたいな状況になってたってわけだ」
「冒険者は自由であるが故に危険でもある。いくら才能があっても子供が冒険者として生活していくのはあまりに厳しい。実際子供の冒険者の死亡率は高いからね。私達も例外じゃなくて、とても苦労したものよ。それから時間が経っていつの間にか私達の名前が世に広がり初めていた頃、なんとなしにオウリュール帝国に帰ったらもう大変よ。滅茶苦茶な法律、悪化した治安、戦闘の優れている者が何より優遇されたりと、もう最悪としか言えないような国になっていた。貧困生活を強いられている国民が圧倒的多数なのに、権力のある者は全く救う気がない。私達の両親もいなくなってたわ」
世莉架はその話を聞いて一つの感情が湧き上がっていた。
「……セリカ?」
それは怒り。世莉架は怒っていたのだ。
「なるほど。とてもいい情報を聞いたわ」
世莉架は至って冷静に怒っている。故に、アルファとエルファからは世莉架の怒りが伝わってきているのに全く表情に出ないところが恐ろしく感じられた。
「ねぇ、貴方達はいつもこの町にいるの?」
世莉架はこのままだと折角みんなが楽しく夕飯を摂っているのにその雰囲気を壊してしまうと考え、話題を変える。
「いつもではないわ。だって私達は自由を求めて冒険者になったんだもの。一定のペースで居場所を転々とするのよ」
「あぁ。この町には後一ヶ月くらいはいるかな。その後どこに行くかは決めてないけどな」
「そうなのね。分かったわ。じゃあ私は宿に戻るわね」
世莉架は頷き、席を立つ。
「おい、お前もここで飯食っていけよ」
「そうよ、今度は世莉架の話が聞きたいわ」
二人の好意は世莉架にとってむず痒くも嬉しいものだった。しかし、宿にはメリアスとハーリアがいるため、ここにずっといる訳にもいかない。
「ふふ、ありがとう。でも私には連れがいるのよ。だから今日のところは帰るわ。貴方達はまだ一ヶ月ほどこの町にいるんでしょう? 私はこれから毎日ここに来るつもりだからすぐまた会えるわよ。その時にはまた色々とお喋りしましょう」
そう言われて少々不満気だったがアルファとエルファは頷いた。
そうして世莉架は賑やかな冒険者ギルドを出て宿に向かうのだった。
**
世莉架は宿に着いた。そしてメリアスとハーリアがいる部屋に入る。
「今帰ったわ」
部屋ではメリアスとハーリアがご飯を食べながら何かを話していた。
世莉架に気づいたメリアスとハーリア。ハーリアは少し気まずそうにしていたが、メリアスは分かりやすく反応した。
「もう、遅いわよ! なかなか帰ってこないからこの宿のシェフの人にご飯作ってもらって先に食べちゃってるわよ」
「そう。私の分は?」
「まぁ、一応用意してもらっといた」
「ありがとう」
世莉架は二人と同じようにテーブルに置いてある料理を食べ始めた。
「この料理高いの?」
「いや、そうでもなかったよ。これからは基本的にこのパーティのお金の管理は私がするからね」
「ダメ、私がする」
「なんでよ」
「だって貴方はお金を狙われた時に守れるの?」
「……」
そう、この世界は日本のように治安が良い訳ではない。自分の持ち物は自分できちんと守らなければならない。
「だから私が……」
「わ、私がやる」
世莉架が自分がお金の管理をすると言おうとした時、少し怯えながらもハーリアが声をあげた。
「ハーリア、できるの?」
世莉架はハーリアがそう言うとでも分かっていたかのように尋ねた。
「う、うん。できま‥‥できるよ。頑張る」
まだ少し言葉遣いが不自然だが、以前の様に敬語で話すことはなくなっていた。それは良い傾向である。
「分かったわ。じゃあお金の管理はハーリアに任せる」
「ふん」
あっさりハーリアに決まったためか、メリアスは不満気だ。
そんなメリアスだが、案外普通に会話している世莉架とハーリアに嬉しく思いながら、会話と食事を楽しんだ。
それから風呂に行くのが面倒だった世莉架は清浄の魔法を全員にかけた。ハーリアはとても驚いていたが、世莉架は全く隠すことなく魔法を行使した。これくらいなら知られても良いだろうと思ったから世莉架は清浄の魔法を行使したのだ。
そして全員がそれぞれのベッドに入り、少し時間が立った時に世莉架がメリアスに話しかけた。
「メリアス」
「……何?」
ハーリアは寝つきがいいのか、それとも純粋に疲れていたのかは分からないが、ベッドに入ってすぐに寝息を立てていた。
「貴方は神よね。他にはどれだけ神がいるの?」
「沢山いるよ。それこそ八百万だよ」
「へぇ。地位みたいなランクはあるの?」
「基本ないよ。一部例外がいるけど」
神についての質問。かつて神などこれっぽっちも信じていなかった世莉架は、ふと気になったようだ。
「全知全能の神はいる?」
「いるよ」
「そう。ならその神に全てを任せればいいのに」
「そうできないから今私はここにいるの」
「そうだったわね。けど、なかなかギフトは贈れないみたいだし、意外とできることが少ないわよね」
神と聞いたら何でもできそうだが、実際はそうでもないようだ。
「人って神なら何でも出来るってみんなが思ってる。けど、実際は違う。神は私以外にもいっぱいいるけれど、皆できることとできないことが違うし、ほとんどの神は全知全能なんかじゃない。もしも私が全知全能ならあらゆる世界で戦争なんて起きないし、起きない様にするもの」
「私は小さい頃から神なんて信じてなかったし、いたとしたらとんでもない無責任で無能な奴だって思ってたわ」
「……それは酷くない?」
メリアスはついつい苦笑する。
「神だからって管理している世界のことをなんでも分かってる訳じゃない。むしろ分かっているのは滅びかけているのかどうかってことくらい。どこでどんな人がどんな事をしているなんて全く分からない。でも、そんなものよ」
「全く、使えないわね」
「さっきから酷いなぁ。私だって頑張ってるのに」
「はいはい」
「もう」
少しの安らぎの時間。二人は心地よさを感じていた。
「そう。聞きたいことは聞けたし、もう寝ましょう」
「うん。そうだね」
そう言って世莉架は就寝モードに入る。
「世莉架」
「何?」
「私にできることならなんでも言ってね。できる限りのサポートはするから。だから……頑張って」
「……当然」
メリアスのエールに、世莉架は素っ気なく返した。しかしその言葉には少しだけ信頼が含まれていることに気づいたメリアスは微笑んでから眠りにつくのだった。
 




