公国、それはきっと変態の国
サヤと相談した結果、「政治家にぎゃふんと言わせちゃおう作戦」の第一段階は、人の確保、ということになった。
「それで、その公国っていうのはどんな国なの?」
「言ってしまえば資源国ですね。王国と帝国と連邦に囲まれているこの森の隣に位置しています」
「緩衝地帯であり、資源国だから、どこもなかなか手を出せないってわけね」
「そうですね。もし手を出せば、他の二国に戦争を始める理由を与えるだけですからね」
「で、そこを仲間にするってことだっけ?」
「それが最善だと思います」
「じゃあ、食料で釣ろうか」
「………流石ですね。でもどうして公国が慢性的な食料不足だってわかったんですか?」
「簡単だよ。だって資源があって食料もあったら、そんな小国なわけないでしょ?」
「なるほど。やっぱりリツは頭が良いな」
「ノエリアお姉ちゃん、もう畑の方はいいの?」
「ああ、リツのおかげで大してやることもないしな」
「それは良かった。そうだお姉ちゃん、公国ってどんな国か知ってる?」
サヤの情報は、あくまで王国の文献によるものであるため、必ずしも正確ではない。一応ノエリアに裏をとっておく必要がある。
「公国か、そうだな、唯一エルフを虐殺しない変わった国、ということしかわからないな」
「エルフを虐殺しないって、珍しいことなの?」
「そうだな、少なくとも私は公国以外にそんな国は知らないな」
「ノエリアさんはそれがどうしてだかは知っているんですか?」
「……未だにうさぎがしゃべるというのはなれないな……」
「それはその、すみません……」
「いや、いいんだ、サヤは何も悪くない。公国がエルフを殺さない理由、だったか? これは噂でしかないが、何でも今の公爵が「金髪エルフは世界の宝だ!!!」と言ったことから、エルフを殺すことが禁じられたらしい」
「えーっと、それ、本当なの?」
封建君主とはいえ、流石それはどうなんだろう、という行いだ。精神的には男であるリツとしては、透き通るように白い肌に輝く金の髪をしたノエリアを見ると、その気持ちもわからなくもないが……。
「はははは、どうだろうな? 全くの嘘ではないだろうが、もとから公国は積極的にエルフを殺していたわけではないからな。たぶん公爵がそんなことを言ったから、という理由だけではないだろう」
「あ、やっぱりそうなんだ」
「ありがとうございます、ノエリアさん。データを新しくしておきますね」
「でえた? 何だそれは?」
「あー、えー、何ていうか、その記憶みたいなものだよ」
「? では最初から記憶といえばいいではないか」
「うーん、そうなんだけどねえ……」
もとがヒューマノイドロボットであるサヤに記憶という言葉は少し違う気がする。
「まあいい、それで、どうして公国のことなんて聞いたんだ?」
「ああ、それはね―――」
リツは、今後の方針をノエリアに話して聞かせたのだった。