リツ、やっぱり腹が立つ
この体になってからというもの、どうも自制心が弱い気がする。
むこうにいた頃のリツなら受け流せたことでも、今のリツは上手く受け流せないことがある。
―――やはり、体が子供だからでしょうか?
記憶と意識は40のおっさんでも、それが入っている脳の方は子供なのだ。おそらくそのまだまだ発達段階の脳が、上手く感情を制御できなくしている要因だろう。
「サヤ、やっぱり王国に、というかあの国の政治家達に仕返ししたいんだけど」
「マスター、まだそんなこと言ってるんですか?」
「だってー、なんかモヤモヤするしー」
「ちょ、ちょっと、だからってそんなにもふもふしないで下さい!」
もふもふもふもふもふっ。最近いらいらすると以上にサヤ(うさぎの姿)の毛をもふもふしたくなるのも、もしかしたらこの体のせいだろうか?
「えー、いいじゃん減るもんじゃないしー」
「はあ、それはそうですけど、くすぐったはくすぐったいんですよ……」
「うーん、そうなの? じゃあ今はやめるけど……。それで、サヤどうすればいいと思う?」
「どうするって何をですか?」
「王国の政治家連中に仕返ししたいって話」
「それなら何度も言ってるじゃないですか、そんなの無理ですって」
「やっぱりー? でもさでもさ? 私一人で乗り込んで暴れればなんとかなるんじゃないの?」
「それも前言ったじゃないですか。そんなことしたらこっちの世界のサヤの家族も巻き添えになっちゃいますって。最悪人質に取られることだってありえます。それは困るでしょう?」
「まあ、そうだけどさー」
まあ要するに八方塞がりなのだ。だからといって、困ったことにこの体のリツは、それで「じゃあしょうがない、諦めよう」とはならないのだ。
「はあ……わかりました、じゃあ私もどうすればいいか考えますから、それでいいでしょう?」
「ホント!? やったー、サヤが一緒に考えてくれるなら百人力だよ!」
「マスター、人格変わってません?」
「はっ、そうでした、私としたことが……」
―――我ながら完全に無邪気な子供でしたね。もしかして、そういう幼女になりきりたい的な願望でもあったのでしょうか?
リツはあちらにいる限り一生気が付かなかった自分の秘めた性質に垣間見た気がして、なんとも言えない気持ちになる。
その後、リツとサヤは、王国の政治家に仕返しする作戦、その名も「政治家にぎゃふんと言わせちゃおう作戦」を作り始めた。
後になって自分のつけた作戦名を見たリツは、自分のセンスが完全に幼女の体に引っ張られていることに、少し困惑したのだった。