ドッキリって外交なのかな?
ドッキリ大成功、という看板を取り出した公爵の頬には、ノエリア渾身のビンタの結果真っ赤な手形がついていた。この世界の人間がドッキリ大成功などという看板を知っているはずもないので、サヤがきかれて教えてしまったとかだろうか?
「すみません、うちの旦那がご迷惑をおかけしました」
「え? いえ、その……どういうこと、サヤ?」
「実はですね……」
サヤはことの経緯を話し始めた。
*
「友好の証に、サヤ殿のマスターたちを喜ばせるのはどうだろうか?」
「驚かせる、ですか?」
どういうことか、と公爵夫人に顔を向けると、夫人は呆れたように笑っている。その雰囲気からは、またか、という感情がありありと見て取れた。
「そうだ。まず、サヤ殿が連絡をとらないまま我が国を出る。そして、こっそり村に近づいて、勢いよく飛び出すのだ」
「はあ……、あの、それになんの意味が?」
「うむ、そうすれば子供達も楽しかろう?」
「まさか、それだけの理由で?」
「うむ!」
「許してやってちょうだい、この人、こういう人なの」
「はあ、しかしですね、そのぉ〜……」
「ああ、安心してくれていいわ、その人があなた達の村に危害を加えることはないから」
「どうして言い切れるんです?」
「簡単よ、そんなことしたらこの子たちが悲しむでしょう?」
夫人は座る自身の近くで気持ちよさそうに眠っているエルフの女の子達の頭をそっと撫でる。
「そのとおりだ。私は子供達を泣かせたりはしない」
「…………わかりました。その言葉を信じましょう」
「よし、そうと決まれば出発だー」
こうして、謎のドッキリ作戦が決行される運びとなったのだった。どうでもいいことだが、このとき作られた看板こそ、この世界で初めてのドッキリ大成功のやつである。
*
「えーっと、じゃあこの「ドッキリ大成功」の看板持ってるおじさんが公爵さん?」
「そうですね」
「いかにも、私が公爵だ」
無駄にいい笑顔である。顔に大きな紅葉がついているが……。
「で、わざわざ挨拶のためだけに直々にやってきたと」
「うむ、と言いたいところだが、それだけはない」
そこで、公爵の纏う空気が変わった。こころなしか目つきも鋭くなった気がする。
「我が国民が食べることになるかもしれない食料の安全を確かめに来たのだ」
「なるほど、ね」
どうやらただのおもしろおじさんではないらしい。自分の危険を顧みず国民の安全を守る姿勢は好感が持てる。先程までのあきれた様子だった夫人も、今はうっとりとして公爵の見つめている。
アルヴァンメンシュ再興の目指すリツの、初めての貿易交渉が始まろうとしていた。




