公爵の奥さんはもちろん……?
公爵の居城では急遽お茶会の準備され、サヤ達一行が、たくさんのお菓子とお茶でもてなされていた。
「君もかわいいなあ、ほらお食べ」
公爵は優しげな笑みを浮かべ、エルフの少女に―――ではなく、膝に乗せたサヤに野菜の葉を与える。どうやら公爵はロリコン、というより、小さいものが好きらしい。子供達がお菓子に飛びついてからというもの、サヤは公爵の膝の上でもふもふされていた。
「おじさん、これ美味しー」
「おじさん、こっちも美味しいよー?」
「おじさん、これもこれもー」
「ありがとうみんな、でも全部一緒には食べられないなあ〜」
美味しいお菓子ですっかり気を許したエルフの女の子たちは、自分が美味しいと思ったお菓子を次々と公爵のところに持ってくる。口では困ったようなことを言っている公爵だったが、その表情はとても幸せそうだった。
「そうだ、そういえば君達はどうして私の国に来たんだい?」
「ん~~なんでだっけ?」
「おぼえてなーい」
「サヤちゃーん、なんでだっけー?」
「あっ、こら、サヤちゃんのことはひみつでしょー!」
「そうだった、ごめんサヤちゃん」
次々に公爵の方に話しかける女の子たちに、公爵は首をかしげる。
「もう遅いですよ……まあ、こうなる気はしていましたが」
「うわっ、うさぎが喋った!」
「お初にお目にかかります、公爵閣下。私はサヤ。うさぎの姿をしておりますが、魔法生物であ―――」
「素晴らしい!」
「―――り、え?」
「もふもふで可愛くて賢い最高じゃないか!」
「えーっと、その、ありがとうございます」
「あなたの言うことなら何でも聞こうではないか!」
「そ、それでは、私達エルフと同盟を―――」
「引き受けた! 今すぐそちらの長と会いに行こう。さあさあさあ、痛っ」
ちょっと引くほど食い気味に同盟の話を引き受けた公爵の頭を、後ろから誰かがひっぱたいた。
「あなた、落ち着いて下さい」
「お前なあ、突然後ろから叩くなと何度言ったら……」
「あなたこそ、いい加減その可愛いもの好きはどうにかならないんですか」
後ろから現れたのは、着飾った女の子だった。落ち着いた口調からは想像もつかないが、黒髪の可愛らしい女の子だ。その女の子は少し不機嫌そうだった。
「お? ヤキモチかね?」
「〜〜〜っっ、そ、そんなわけ無いでしょー!
」
先程までの落ち着いた口調はどこへやら。女の子は顔を真っ赤にして叫ぶ。
「うちの妻がすまないね」
「すまないのはあんたの頭だー!」
どうやらその女性は公爵夫人らしい。サヤが解析で見ていた公爵婦人は、普通の大人の女性だった気がするのだが、どういうことだろう?
ともかく、この可愛いもの好きの渋い男性と、子供にしか見えない可愛らしい女性という、傍から見たら親子にしか見えない2人が、この国を統べる夫婦らしかった。




