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森を進むうさぎと幼女

 ザクザクザクッ。エルフの女の子たちは、その見た目からは考えられないほどしっかりとした足取りで、森の中を進んでいく。


「すごいですね、皆さん。こんなに歩きにくいのに……」

「そうー? これくらいふつうだよー」

「そうそう、そんなじゃおにごっこできないよー」

「そうだねー、サヤちゃんすぐつかまっちゃうねー」


 きゃきゃきゃきゃ、と少女達は楽しそうに笑う。一応偵察なのだが、なんとものんきなものだ。十中八九何をしに行くかわかっていないのだろうが。


「いいですか皆さん、皆さんは迷子のエルフで、私は皆さんに飼われているうさぎですからね」

「「「はーい」」」


 元気の良い返事だが、果たしてわかっているのだろうか? サヤは少し不安になる。その時、頭の中に直接声がした。


(サヤ、聞こえる?)

(マスター、はい、聞こえます)

(良かった、今どんな感じ)

(皆さん元気に森を進んでいます)

(了解、そのままお願いね)

(はい)


「あ! サヤちゃん、こうこくって、あれかなあ?」

「見えましたか?」


 少女の指差す先には、ぐるりと城壁に囲まれた大きな街が見えた。王都程ではないが、エルフの村に比べればかなり大きい。


「そうですね、あれが公国の―――って、皆さん待って下さーい!」

「「「わあああああああい、まちだああああ!」」」


 サヤが言い切る前に、少女達は、一斉に駆け出してしまった。その後、サヤが追いついたのは、城壁にたどり着く直前だった。



「はいれたねー」

「ねー」


 公国がエルフに優しいのは本当らしく、城壁の検問所には「お嬢ちゃんたちエルフかい? いやー小さいのに偉いねー。お使いかな?」というもはやただの近所のおじさんでしかなかった兵士の男性しかおらず、そのまま通してもらった。これならノエリアは来ても大丈夫だったかもしれない。


(マスター、聞こえますか?)

(…………)

―――やっぱりだめですか。


 城壁には魔法を遮断する効果があるらしい。しかし入ってしまえばこっちのもの。サヤは解析をしながら少女達についていった。



「おおおおお、ほんっとうにエルフの女子たちじゃないかああああ!」

「「「なあに? あのひとー?」」」

―――あの人物は……


 サヤが解析を終えた頃、一行が歩いていた通りに響く大声に、少女達は不思議そうにそちらを見やり首をかしげる。その仕草に、声も主は胸を抑えて膝をついた。


「まさに! まさに地上に現れた天使!!」


 そして天を見上げて動かなくなった。彼こそ、この公国の主たる公爵その人であった。

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