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第二十八話【オッサン、遺物探しをする②】

「ハアッ……ハアッ……この箱ビクともしねぇぞファ××……」


 俺達が戻ると、ジョンが縦に少しだけ細長い黒い箱の前で悪戦苦闘していた。

 大きさは木箱よりも小さいが、金属製でとにかく頑丈そうだ。

 真正面に取っ手と鍵穴が付いており、丸い小さな円盤のような物が付いている。


「ようジョン、大丈夫か?」

「ああ、今この滅茶苦茶口の堅いお嬢さんと()()してた所さ、ちくしょうめッ……!」


 と言うと、思い切り取っ手を引っ張るジョン。

 どうやら力尽くで開けようとしている様子。まったくこいつときたら……。


「あー、そのお嬢さんがすぐにでも喋りたくなるような物があるんだが」


 と言うと、ジョンに鍵を見せる。


「んん……おおっ!? ヒュウ! やるねぇアンタ!」

「俺が見つけたんじゃない、キューちゃんさ」

「きゅー!」


 えらいぞーとジョンはキューちゃんの頭を撫で始めた。ちょっとしつこいくらいに。

 若干嫌がってるキューちゃんと横目に、俺は黒い箱の方へと向かう。


 早速鍵を差し込み回し、取ってを引っ張ってみる……が、動かない。

 これだけじゃ足りないのか? と考えていると、丸い小さな円盤に眼が行く。

 円盤にはどこかで見たような模様―― ああ、そうだ。あの机の中の小さな紙に書いてあった模様だ。それが書かれている。

 円盤はカチカチ言いながら回転する。多分あの紙通りに模様を合わせれば開くのだろう。

 俺は記憶を呼び起こし模様を合わせ、再度鍵を回して取っ手を引っ張った。


 ギイイ……と鈍い音と共に扉が開いた。


「わーい!あいたよっ!」

「やったぜ! 中には何が入ってるんだ?」


 ガッツポーズして喜ぶジョンとニーナ達。

 一体中には何が入っているんだろうか? 俺は少し心を躍らせながらゆっくりと扉を開けた。


 中は三段に分かれていて、一段目には何やら宝石の付いたネックレスが置いてあった。

 涙型の赤い宝石が数個付いたそのネックレスは金で出来ているようで、見事な代物だ。

 鑑定士に見て貰わないと正確な値段は分からないが、恐らく金貨数枚は下らないだろう。


 二段目には用途不明の長方形の大量の紙束。樹脂製の輪でまとめられている。

 長方形の中心には人物の顔が描かれており、何等かの絵の一種だとは思うのだが……さっぱり用途が分からない。

 恐らくはそこまで価値は付かないだろう。強いて言うなら観賞用だろうか。


 三段目には何やら両目で覗く穴の付いた筒。目を当てる所に回転する機構と、首にぶら下げる為の紐が付いている。

 覗くと視界が歪む。どうやら遠くの風景を拡大して見る物らしい。

 回転部を動かすと、どのくらい拡大して見るか選ぶことができる様だ。

 簡単に言えば高性能オペラグラスと言った所か。これも高く売れるかもしれない。


 とまあ、箱の中身はこんな感じだ。

 ネックレスはジョンに渡すとしよう。オペラグラスの方はニーナが喜ぶかもしれないな。


「ネックレスと、変な紙束、それにオペラグラスみたいなものだな」

「おぺらぐらす?」

「劇場で使う遠くを見るメガネみたいなものだよ、ニーナ。なんでこんなものをしまってあるのかは分からないが……ほら、使ってみるか?」

「うんっ! ……わあ、なんかへんなかんじっ」


 ニーナにオペラグラスを渡すと早速使い始めた。

 周囲を見渡しながらキャッキャと無邪気に喜んでいる。


「ふふ、相変わらずだな……さて、ジョンにはこのネックレスでいいな?」

「ヒャッホウ! こいつは値打ちがありそうだぜ、ありがとよ!」

「こちらこそ、派手にドンパチかましてくれてありがとな」

「……あー、もしかしてまだちょっと怒ってる?」

「ちょっと、な?」


 悪かったって! と再び謝るジョン。

 一時はどうなるかと思ったが、まあなんとかなったので許してやろう。いいお土産もできたしな。


「さて、こんなものかな……そろそろ戻るとしようか」

「パパっ! わたしきかんまほーつかってみたいっ!」

「おっ、良いぞニーナ。ほら、巻物」


 そう言うニーナに帰還魔法の巻物を手渡す。

 使ってみたいなんて言うなんて珍しいな、勉強熱心で良いぞ。


 全員がニーナの側に寄り、帰還準備が出来た。

 後は彼女が詠唱を済ませるだけだ。


「ええと、こほん……たびのかみカルーンよ、われを……?」

「導き給え」

「あっ、みちびきたまえっ!リターン!」


 まだ読むには難しかったか……なんて苦笑いしつつ、俺たちは彼女の目の前に現れた魔法陣に乗り帰還した。


                  ◇


 脱出し、トランパルに辿り着く頃には既に日は落ちていた。

 街から離れた場所だと夜には魔物や獣が出てくるので、本来ならば迷宮内で休憩所を作りそこで寝る。

 だが今回はジョンが居る為、そのままトランパルへと戻ってこれた。


「それじゃ、俺はここでグッバイだ」


 トランパルの入り口に辿り着いたと同時に、ジョンはそう言う。


「ギルドに寄らなくて良いのか?」

「オールライト! 報告は明日でも大丈夫だろうしな。もう夜遅いし疲れたし、帰って寝る事にする」

「じゃあ代わりに報告しとこう、ギルドに住み込みで働く事になってるんだ」

「オウ、それはありがてぇ! サンキューMr.ハンサム!」

「だからなんなんだよそのハンサムって……」


 結局、ハンサム呼びはやめてくれなかったな……。

 ジョンはシーユーなんて言いながら手を振って俺達に別れを告げると、そそくさと立ち去って行った。

 本当、嵐のような奴だったが今回は助かった。また一緒に仕事をする機会があるだろうか。


「俺達も帰るか、ニーナ」

「うんっ……ふあぁ」


 一気に疲れが来たか、大きなあくびをして眠そうにしているニーナ。

 キューちゃんも彼女のカバンの中ですよすよと眠っている。

 今日はジョンを救出したり遺物を探したりと大変だったもんな、早く帰ってゆっくり休ませてやろう。


 俺達はギルドへと歩みを進める。

 今回はちょっとしたお土産を携えつつ――。

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