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第二十六話【オッサン、避ける】

 作戦はこうだ。

 俺が槍を持って突っ込み、攻撃する意思がある様に思わせる。

 無論、敵は全員こちらを狙って一度足を止めるだろう。

 その間にジョンが銃で足の止まった奴を撃ち、彼が刀で対応できる程度まで頭数が減らす。

 そうすれば後はジョンが何とかしてくれる筈だ。

 問題は彼が撃った銃弾が俺に当たらないかどうかだが……まあ最悪、避けてしまえばいいよな。


 間近のサハギンが足を止め、こちらを狙って攻撃をしようとする。

 瞬間、乾いた音と共に奴の頭に風穴が空く。


「ハハハッ、まったく本当にぶっ飛んでるよアンタ! 最高にクールだぜ!」

「いいから黙って撃て!」


 笑いながら続け様にサハギンを狙うジョン。

 さっきよりも狙いやすくなったか、その射撃は正確そのものだ。

 一体、また一体と確実にサハギンを仕留めていく。


 俺の方も頑張らなくちゃな、と目の前に迫る二体のサハギンを見据える。

 左右同時にこちらへと向かって槍を突いてきた。狙いは胴。

 俺はスライディングをしてそれを避ける。『逃げ足』のお陰で勢いがつき難無く通過。


 スライディングの先には、一体のサハギンが俺に目がけて槍を突き立てようとして来た。

 すぐさま俺は横に転がり避け、そのまますっと立ち上がる。

 四方八方サハギンに囲まれているが狙い通り。後は出来るだけ長い事こちらに気を逸らせさせる!

 俺は武術の達人の様に槍を振り回し、サハギン達を威圧。


「来いサハギン共!」


 大声を出し、出来るだけ注意を惹き付ける。

 今の所全員こちらを向いている、順調だ。

 敵の突きを避け、時には槍で弾き―― 休む暇もない怒涛の攻撃を全て避ける。

 時々飛んでくる槍も軽くステップして避け、無駄のない動きで次の攻撃を避ける。


 避ける、避ける、避けて避けて、避けまくる。


 気が付いた頃には数十いたサハギンも八匹程度にまで減っていた。


「オーケイ弾切れだ、Mr.ハンサム! 後は任せてくれ!」

「だからハンサムって、言うなっ!」


 迫る槍の横薙ぎを、上半身を逸らして避けながら俺はジョンの元へと走り出す。

 ジョンもクロガネを構え、こちらへと向かってきていた。彼の言う通り、後は任せて大丈夫だろう。

 俺は間に立ち塞がったサハギンの突きを避け、間をすり抜けていく。


 ジョンはそのサハギンを通り抜け様に横に一閃し、斬り捨てた。


「さあショータイムだ!……って、陳腐かなこれ」


 そんな事を言いながらクロガネを再び構え、サハギンへと突っ込んでいった。

 そこからは本当に早かった。

 迫るサハギンを槍ごと叩き斬り、攻撃をする隙を見せずにどんどんサハギン達を屠っていく。

 数分も経たないうちに、あっという間に取り囲んでいたサハギンは全滅した。


 後は奥に鎮座しているサハギンの王族―― 名付けるなら蛮魚王(キングサハギン)のみだ。

 キングサハギンは王座から立ち上がると、装飾の付いた槍を手にしてジョンへと向かって構える。

 ジョンもまたそれに応じる様にクロガネを構え、敵を見据える。

 まるでそれは戦場での一騎打ちのようにも見えた。


 サハギン達を纏め上げる守護者なだけあってか、素人でも分かるほど隙がない様に見える。

 互いに距離を取りながら、しばらくの間にらみ合いが続く。

 数分にも渡る睨み合い。その静寂は唐突に破られる。


「へくちっ」


 部屋の外からなんとも気の抜けた音が響く。

 それを皮切りに、戦闘は始まった。


「フィシャアァーーッッ!」


 先に動いたのはキングサハギンだった。

 槍を横薙ぎにし、ジョンを一閃しようとする。

 ジョンはクロガネでそれを弾き返し、一気に間合いを詰めていく。

 このまま行けばジョンが勝つだろうと思った。しかし俺はすぐにキングサハギンの違和感に気付く。

 口を大きく開け、まるで何かを吐き出そうとしている様な――


「ジョン! 頭を下げろ!」


 刹那、ジョンの頭に目掛けて高速の水流が発射される。

 俺の指示を聞いて間一髪、ジョンは頭を下げて耳に掠る程度で済んでいた。

 発射された水は壁を砕き、破片が辺りに散らばった。


「うらぁッ!」


 ジョンが雄叫びと共に下から上へとキングサハギンを斬り上げる。

 防ごうと槍を盾にするもそれすらを叩き斬り、青い血が噴き出した。

 ゴフッ、と口から血を吐きながらキングサハギンはその場に倒れ、動かなくなった。


「ヒュウ、なんとかなったな……耳痛え」


 ヒュン、と血を払うと刀を鞘に納め、キングサハギンを見下ろすジョン。

 一瞬の油断が生死を分ける戦いだった。

 特にあの水流弾は危なかったなと、砕かれた壁を見て冷や汗をかく。


「ありがとよジム、おかげで命拾いしたぜ」

「ああ、良いってことさ……しかしあの数を倒すとは流石Aランク冒険者だな、それに守護者も倒してしまうなんて」

「アンタが囮になってくれたおかげさ、Mrハンサム」

「だから何なんだそのハンサムって」


 軽く言い合いをしつつも、互いが無事なのを祝う。

 彼が居なければ迷宮の測量も難しい物になっていただろう。

 まあ、結果的に攻略する事になってしまったが……。


「パパっ!」

「きゅーっ!」


 ほっとしているとニーナ達が駆けつけてきた。

 ぎゅっと抱き付いて生きてて良かったと安心している。

 この子には心配かけてばっかりだな、と頭を撫でて安心させてやった。


「あー、お取込み中の所済まないが……そろそろアレ、気にならない?」


 ジョンが指差す先には王座の後ろの沈没船。

 おそらくあそこに遺物が眠っているのだろう。


「ああ、そうだな。行って見るか」


 よしっ、とガッツポーズをするジョン。

 確かに、新種の迷宮の遺物は何か気になる物はある。

 沈没船と言う事は、何か凄い宝物を積んでいた可能性だってある。

 しかしなぜ沈没船が迷宮にあるかは謎ではあるが……とにかく行って見る事にしよう。


 俺達は期待に胸を膨らませ、沈没船の方へと歩いて行った。

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