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第十五話【オッサン、旅立つ】

 二日後、俺は日が出始めた明け方に目を覚まし、荷物のチェックを終わらせた。

 集合までまだ時間はあるが、念の為忘れ物が無いか確認していたのだ。

 こういう細かい所は性分なので仕方ないのだが、気になるとどうしても目が覚めてしまう。


 その後俺はゆっくりと朝食を作り始める。

 今日の朝飯は屑野菜から取った出汁で作ったミネストローネ。後はサラダとライ麦パン。

 冷凍保存できる魔法や遺物なんて高級な物は家には無いので、食材は全て使い切らないといけない。

 昨日の晩飯も、羊のマトンを使ったシチューを作ったりと豪勢にやった。


「ニーナ起きろ、トランパルに行く約束だろ?」

「んん……ふぁい……」


 朝食が出来上がる頃になると朝日も街を照らし始め、小鳥もチュンチュンと鳴き出す頃合い。

 前日楽しみで寝られなかったのか、ニーナはまだ眠そうにしながらベッドから出てきた。

 まだ寝ぼけてるニーナを連れて席につかせると、一緒に神々の恵みに感謝して頂きますと手を合わせる。


「うわぁ、おやさいばっかり」

「そんなに文句言うんじゃない、ちゃんと食べないと立派な迷宮測量士になれないぞ?」

「はーい……」


 と文句を言いつつも、ミネストローネを美味しそうに食べ始める。

 我ながら上手く出来たもんだと自画自賛しつつ、俺もミネストローネを口に運んだ。

 結局、ニーナはサラダだけちょっと残して他はちゃんと完食。

 生野菜はまだ子供には苦いか、なんて考えつつ余ったサラダは勿体ないので俺が食べた。


「ごちそうさまでしたっ! ねえパパ、もう準備出来てる?」

「慌てなさんな、準備はとっくに済ませてあるから着替えたらすぐに出発しような」

「うんっ!」


 お腹も膨れていつもの元気を見せ始めるニーナ。

 彼女は急いで自分の部屋に向かって行って、用意された服に着替え始める。

 俺は食器を片付けてカバンを背負い、玄関に彼女のカバンを持っていってやった。


「パパお待たせっ! 行こっ!」

「ああ、しばらくはこの家ともお別れだ」


 彼女にカバンを持たせてやり、俺達は我が家を後にした。

 戻ってくるのは数ヶ月後か、一年後か。こんなに家を空けるのも久しぶりだな。

 そんな事を考えながら、ギルドの方角へと足を進めた。


                  ◇


 ギルドの前に到着すると、旅支度をしたシエラが立っていた。

 といっても、いつもの恰好にカバンを背負っているだけなのだが。


「あっジムさん、ニーナちゃん、おはようございますっ」

「おはようシエラ」

「シエラおねーさん、おはようございます!」

 

 シエラはいつも通りの笑顔で俺達を迎えてくれた。

 一部の冒険者が暫くシエラさんに会えない、なんて嘆いていたのを思い出す。

 そう考えると、美人さんと旅が出来るってのも少し優越感を感じてしまうな。

 ……別にやましい事を考えたりとかはしてないぞ。本当に。


「移動は馬車で行くんだろう? 街の外に待機してるのか?」

「はいっ! すぐに案内しますねっ」


 こちらですっ、と先頭に立って案内をしてくれる。

 早朝もあってか、通りには人はそこまで居ない。

 ただ何人かの冒険者とすれ違うと、頑張れよ! と声を掛けてくれた。

 既に俺達がトランパルに行くという噂は広まっているらしい。何とも早い事だ。


 そうして馬車の前にまでやって来た俺達。

 馬車の荷台には数日分の食糧が入っている袋だとか、黒猫の尻尾だとか、野営用のテント等が積まれて――

 ん? 黒猫?


「にゃっほ~、三人とも遅いよー」

「に、ニャムちゃん!?」


 シエラが驚嘆の声を上げる。俺もこれには驚いた。

 何でこんな所に、しかも俺達が乗る馬車の中に居るんだ? ……まさか。


「話はニーナちゃんから聞いたよ? おっきな都市に行くんだってねぇ」

「ついてくる気じゃないだろうな、お前」

「おっちゃん流石っ、察しがいいねぇ」

「……店はどうするんだ、店は」

「マオに頼んだら喜んでやるって言ってたから大丈夫ー」


 マオの方も店があるだろうとツッコもうとしたが、疲れたのでやめた。

 多分「姉さんの店を私が……ぽっ」だなんて言いながら、二返事で了承したのだろう。


「一緒に来ても別に面白い事は無いぞ」

「商売だよ商売ぃ。大きな都市って事は、それだけ経済が大きいって事でしょー? 儲け話の一つや二つありそうじゃない?」

「……ちなみに、何処に行くか分かってるのか?」

「全然? あ、でも大体察しは付いてるから言わなくてもいいよー」


 相変わらずの適当さ加減だな……

 しかし彼女の言う通り、トランパルはパンドラで一番と言って良いほど大きな都市。経済も恐らくかなり発展しているだろう。

 商売の話となれば頭の回転が速いのか、それともただ勘で行動したら良い感じになってしまうのか。

 とにかく彼女の言い分は間違いでは無かったし、別に連れて行っても害は無いだろう。


「食料とかはその他諸々は用意させて貰ったからねぇ。じゃ、頑張ったからあとよろしくー……Zzz」

「仕事が早い……って寝るのも早っ」


 馬車の隅の方に移動し、ごろんと寝転がって眠り始めるニャム。

 自由奔放だな、こいつ……まぁちゃんと仕事したみたいだし大目に見てやるか。

 俺達は全員馬車に乗ると、御者に出発してくれと一声掛けた。


 こうして、俺、ニーナ、シエラ、ニャムを乗せた馬車はゆっくりとトランパルへと進み始めた。

 この先に待っている物は何なのか、まだ見ぬ迷宮で溢れているのか――とても楽しみだ。

 俺の中の小さな冒険心はゆっくりと、確実に大きくなっていた。

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