AI
この道を通るのも何度目だろう。
最初で最後と聞いてから何度も呼ばれている。
今回はなんだ?
「お久しぶりです。ってほどでもないですね。AIのデリムです。覚えていてくれていますよね。」
でっかい顔だけがにこやかに俺達に対応する。
正直ちょっと怖い。にこやかにすればするほど怖い。
「私のいっていたことを早速処理していただきありがとうございます。ですがあの程度では引き下がらないようです。またあたらな戦力を投入しているところですね。それでも元に戻るのには数カ月かかると思われます。それにしても圧倒的でしたね。あのような力があれば世界も征服できると思うのですが。」
「くだらないことを言わない。我々は征服するために強い力を持っているわけではない。自分を律することも出来ないゴミの力を殺ぐために持っているのだ。」
レイはデリムを目を細くして睨みつける。何か気に触ったようだ。
そういえばお母様も何かに怒っていたな。俺にはわからないけど。
「そうですか、失礼いたしました。それでは何か謝礼をさし上げねばなりませんね。何が欲しいですか?と言っても欲しい物が何でも手にはいるスキルの持ち主ですからあまり期待しないで欲しいですが。」
まぁたしかにそうだな。欲しい物は何でも手にはいる。何が欲しいか・・・伴侶以外で考えたことないな。
「恵様は伴侶が欲しいんですか?」
こいつ、心の中を読めるのか?俺の横で目を見開いて俺を見るレイがいる。
「いや、あのね、誤解だよ。何が欲しいかって言われたから伴侶以外に欲しいと思ったことないなって思ったわけ。あの時俺が願ったやつを回想してただけだよ。そんな顔しないで!」
ホッと胸を撫で下ろすレイ。誤解させてごめんね。というよりこのでっかい顔が悪い。
「すみません。」
俺の心の声に答えるように謝るデリム。こいつ絶対心を読んでいるな。
もう俺達に用がないんならさっさと通してくれよ。
「そんなにここにいるの嫌ですか?」
はい嫌です。無駄なので。
「そこまで言いますか?」
「ちょっと何の話よ!わけわからないじゃない。」
「こいつ、俺の心を呼んでるんだよ。」
「え??ちょっと気持ち悪い!!人の心覗いているの?」
「そこまで言いますか?心の底から軽蔑する感じがヒシヒシ伝わってきますけど。心が読めるとここまで気持ち悪がられるんですか?」
「おまえさ、自分がちょっと思ったこととかちょっと感じたことをいちいち読まれる方の身になってみろよ。嫌だろ??そういうのがわからないようじゃそれほどすごいAIではないかな??って思うけどね。」
「ひ、ひどい!」
でっかい顔が泣いている。正直気持ち悪い。『ひどい』を連呼されてもね。その能力のほうがひどいわ。
レイはまたコーヒー飲んでる。今回はクレープも食っている。こいつにまったく興味がないみたい。
「ひどい!!ひどい!!」
誰に言っているのかもわからなくなってくるな。心読む機能やめればいいのに。
「どうでもいいからさ、もう地球に行かせてよ。このやりとりがまさに無駄だからさ。報酬は後で決めとくから。」
すごく悲しい顔をして俺達を見ている。そのまま光ってAIは消え、真っ直ぐな道だけが残る。
これで向こうに行けるな!!
俺にくっついて歩くレイとやっちゃん。この状況、幸せだよね。
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