ダンジョン初級から中級へ
初級扱いだった昨日のバトル。
朝になり、目を擦りながら歯磨きをする。
「おはよ〜」
俺に挨拶をしてくるレイ。やっちゃんはまだ寝ているとのこと。
確かにさっき布団の中にいる感じだったな・・・。
昼食は携帯食で済ませ、やっちゃんを起こして昨日の向こうの世界での話をする。
それ、毎回律儀に伝えるよね。やっちゃんは俺にチューしろと自分の唇を指さし催促してくる。
すごい恥ずかしいんですけど。向こうでは勢いでやったけどこっちはそういうのがない。
「いきま〜〜〜す!!」
「おねがいしま〜す!」
掛け声で勢いをつけてやってみました!!すっごく変な感じですがやっちゃんは真っ赤です。
外に出るとジルが剣を振っていた。朝から元気なおっさんだな。
レイにポイント振るように言われる。
そりゃぁ昨日の戦闘見たらさっさと振っておかんとね。
俺とジルはノートを手に取り目を見開いている。
レベルが変だ。
レベルが124になっていた。昨日だけで100近く上がっている。
ジルも同じようなレベルで109。俺より上がっていないのは最初俺よりレベルが相当高かったからみたい。
究極レベルアップと言っていたヤツのせいか?それで追いぬかれたら悲しいだろう。
それにしても割り振りポイントがヤバい。俺はレベル12から全く降っていなかったせいですごい貯まっている。5840だって!あれ?ちょっと多いよね。5600じゃないの?と思っているとやっちゃんが100を超えるとボーナスで基本から10ポイント増えるらしい。だからその数字だとか。よくわからないシステムだ。まぁ,全部割り振りたいんだけどレイが言うには満遍なくより素早さと自分の攻撃主体をあげるほうがいいらしい。防御力も必要だけど素早かったら当たらないじゃんとのこと。でも全くなしは当たったとき困るからあげるようにって。どっちやねん!
というわけで割り振る。
ジルもウンウン唸りながら割り振っていた。ジルは平均23ほど増えるらしい。23は一般的な人から見て高いほうだとレイが言う。俺達のレベルならドラゴン1体なら2人でなんとかぎりぎり倒せそうとのこと。あんた達一人で余裕で相手してたケドどういうこと?
「うわ!乙女の秘密を聞きたそうな顔してる〜」
やっちゃんが俺の頬をつんつん突く。前ならヒットポイントが減っていたであろう突きにもそれほどダメージがない。全くないわけじゃないんだけどね。口の中切れて血でてるし・・・。慌てて回復させるやっちゃん。学習してくれ。
ここから先は当分こんな感じのだだっ広い空間の部屋ばかりなんだって。そこには複数の敵がいてそれをバンバン殺しまわるらしい。普通の冒険者ならこの辺で引き返すんだとか・・・。
どこまで潜るの?と聞くとアイテムがなくなるまで潜り続けるそうだ。
このダンジョンの最後ってどこなの?の問には多分、今で3分の1くらいとだけ教えてくれた。
ドラゴンが3分の1に出てくるなんてこの先どんな化物がいるんだ?
これより先はもう少し強めの殺気を込めるとレイが言っていた。今までは本気じゃなかたんだ・・・。
レイの体が紫色に光り始める。髪の毛がその光に揺られフワフワしている。
「殺す」
その言葉と共に殺気を放つと近くまで歩いてきてたドラゴンが頭を下げて後ずさりし始める。
ガクガク震えている。昨日の威勢の良さは全くない。数体いたものが全部ひれ伏しているのだ。
「さて、行きますか?」
笑うレイ。階段がある方をドラゴンに聞くとドラゴンが声を出して『あっちだ』とだけ言って頭を下げる。地上にいれば厄災以外の何物でもないドラゴンが怯える子犬のようだ。
「次の階へレッツゴ〜!!」
明るく言うレイと俺の横にへばり付くやっちゃん。足をがくがくさせながらも前を行くジル。
「レイちゃん怖〜い」
その声にレイが気づくと俺の方に走ってきて俺に抱きついてきた。自分に向けられない殺気ではあるがあれをまともに浴びたら人はどうなるんだろう?
そう思いながらやっと見つけた階段を降りていくのであった。
そして次からの階層ではドラゴンだけではなくよくわからない目玉がでかい触手だらけの生き物や、みたこともない色のスライム、壁に体を擬態させた大きな口の魔物、人型ではあるが非常に強い魔物など名前もないようなものがうじゃうじゃ出て来た。
「最下層ってどんな魔物が出てくるの?」
その質問にレイは
「最下層は魔物ではなくこのダンジョンのマスターがいるよ。そいつを倒すか、アイテムもらって帰るかはその時考えようよ。今はレベルアップしながらアイテムを集めるのが一番かな?400階を超えたくらいにからは魔物というよりデモンだね。もう地獄だよ〜。」
「デモンは頭もいいし物理も魔法も得意だからすごく厄介なのよ。1体くらいならそんなに苦戦しないけどうじゃうじゃいると連携してくる奴もいるからね。阿呆な魔物とは違いを見せつけてくるわよ。まぁレイと私がバッサバッサ切っていくから恵くんとジルはトドメ刺していってね。」
美しい笑顔。言っている言葉と顔の表情が合っていない。
「レイややっちゃんはレベル上がったの?」
俺の問に対して2人は口に人差し指を当てて首を横に振る。聞いちゃダメみたいだな、レベルに関して。
俺の目の前にはたくさんの屍が転がっている。俺とジルでとどめを刺しまくった魔物たち。
そのまま50階層ほど降りる。すべての魔物がデカイ。ヤバいくらいデカイ。最初に見たドラゴンが小さく感じるほどデカイ。全長は100mを超えるものもザラにいる。
「レベル300の魔物なんかなかなか見れないわよ〜。記念撮影したいくらいだわ!!」
興奮するやっちゃん。
更にいくつもの階段を降りて・・・
で、ここ何階?
「メグミ!!1匹テイムする??手懐けてみようよ!!これ持って帰ったら皆びっくりするよ!!」
レイが指差すは漆黒の馬鹿でかいドラゴン。
さっきまでデカイと思っていたドラゴンよりもはるかにデカイ。
これ、生き物というより山だよね。
俺にこいつの前に立って話をしろと?
「貴様ら、何しにここに来た。死にたい程度なら他の階でやってくれ。」
戦う気持ちを前に出さないドラゴン。
「あんたさ、メグミが優しく話しかけているうちに話し聞いたほうがいいよ。ちょっと腹立んだけど。」
レイは何故かご立腹。それをチラッと見てドラゴンは
「ほう、貴様は強いな。それはわかった。で、後ろの女と貴様は俺を倒すことが出来ても他の男どもはどう見ても俺に傷を付けられる器ではないと思うんだがな。ふ〜」
鼻でため息をつく。生臭い。
俺とジルは話にもならないらしい。
「メグミの力は弱くても私はメグミの従魔なんだからメグミはあなたより強いということになるんじゃない?」
ドラゴンに指をさして怒鳴りつけるレイ。いやいや、それ、ちょっと違うと思うよ。
「うるさい女だ。これをやるから向こうへいってくれ。」
座り込んだ腹の下からゴソゴソ顔を突っ込み何かを咥えて投げてきた。
やっちゃんの目が輝いている。
見せて見せてと両手を前にしてピョンピョン跳んでいる。
漆黒のドラゴンの頭を模した篭手のようなもの。右の腕につける防具のようだ。
「これ・・・全然知らない。見たことない。誰も持っていないのかも。ドロップしないアイテムかも。話ししないと、もらえないのかも・・・。」
女の子座りをしてへたり込み両腕で天に篭手を差し出すような格好で固まっている。
ドラゴンはその姿にも興味ないようでそのまま頭を自分の羽根で隠して寝始める。
「もう起こさないでくれ。あと、1000年はこうしていたい。」
どうやら究極のひきこもりのようだ。そんな子は刺激せず放置しておくのが一番だ。
「ちょっと、メグミ?いいの??あれゲットしなくていいの??」
レイが俺の腕を掴んでブンブン俺を揺する。頷きたくてもうなずけない。何も言えないでいるとレイが走って行って違うドラゴンに因縁をつけている。
「放っといてもらえる??」
ドラゴンにそう言われてアイテムを受け取って追い返される。肩を落としてアイテムを持って帰ってくるレイ。ここのドラゴンは皆引きこもりで戦わないおとなしい奴らのようだ。
「レベル500超えてるのに緩い奴らだね。」
レイの言葉に目ン玉飛び出しそうになる。
500??ヤバいだろそれ??
正確にはわからないけど俺まだ150もないはずだよ。なんでそんな無茶させるの?
この子たちレベルいくつなの?
そう思ってしまった俺。
「言わないからね。」
鋭いやっちゃんがボソッとそう言う。
ダンジョン・・・まだまだ前途多難だな・・・。
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