鍛冶屋で
防具屋でも武器屋でもなく鍛冶屋・・・。
自分で作って売ってるってことかな?
爺さんは俺達を工房ではなく住んでいる家の方に案内してくれた。
「あら、おかえりなさい。」
声が凄い若いんだけど。そう感じていると出てきた人も若かった。
奥さんじゃなくてお孫さん??
頭をかしげていると爺さんが紹介してくれた。
「ワシの家内だ。名前はメルダだ。」
何歳差なの??孫でしょ??違うの??家内は嘘でしょ?
「ヤッホ〜メルダ!!」
「何じゃ知り合いか?」
レイが変に馴れ馴れしい。ちょっと失礼だぞそれ。
馴れ馴れしい挨拶を聞いてやっちゃんもびっくりしている。
爺さんもびっくりしているようだ。
一番びっくりしているのは当のメルダだ。
足をがくがく震わせている。レイのこと知っているのか??
「まさか・・・ゼロ様ですか?なんでここに?もしかして粛清しに来たんですか?粛清に自ら出向いてきたんですか??」
震えてはいるが構えて、レイから目を離さない。
レイはメルダにとって恐怖でしかないようだ。
「粛清??レイはそんな物騒なことして回っているのか?」
「貴様!!ゼロ様に失礼だぞ!?それにレイってなんだ?この方は魔王軍軍事総長で最強の戦士なんだぞ。貴様のような弱小生物が口を聞いていい存在じゃないんだぞ?さっさとひれ伏せ!」
俺にキレられてもね・・・。
「昔はね、軍を勝手に抜けたら粛清とか言われていたのよ。まぁされた奴いないけどね。だって、魔王様が緩いでしょ?抜けるからにはそれなりの理由があるんだろ〜?とか言ってね。」
レイリーのセリフのものまねはちょっと似てて笑える。
「レイリーならいいそうだな。」
俺が笑っていると
「貴様!!魔王様を呼び捨てにしたな!貴様はもう生きていけないぞ?ゼロ様もここに居られるのになんて馬鹿なことを!」
震えながら俺を睨んでいる。
そんなに警戒しなくても何もしないのにね。
「まぁ昔のことだしね。抜けてかれこれ経つでしょ?追っては全くなかったでしょ?アレはただの脅しだからね。」
ウィンクしながらメルダに言う。
「キャラが全く違いますよ!!そんな軽い感じじゃなかったはずです。冷酷冷徹すべてをねじ伏せるそんな感じだったと記憶しています・・・。」
メルダのセリフが始まると俺の耳に指を突っ込んでくる。もう聞こえてるって。
やっちゃんが腹を押さえている。笑いをこらえるのに精一杯のようだ。
その姿を見てメルダの肩の力が抜けた。
「なんだ、偽物ですか・・・。びっくりした。」
そこに落としこんでしまうんだ。そんなにキャラが違うの?昔どんな感じだったんだろ?
「昔のレイのこと話してよ。メルダさん」
「偽物の昔は知りませんがゼロという方の話しなら出来ますよ。」
「それ言ったら死ぬよ〜」
変なオーラ放ちながらボソッという。ちょっと待て!!人化解いてまで言わなくていいんじゃない?そのセリフ。メルダがその姿を見てへたり込む。『本物だ』を連呼している。
「お主やっぱり魔族か??おかしいと思ったんじゃ!化け物じみた雰囲気を醸しだしておるから。まさかメルダの上司だったとはな!!だがメルダを許してやって欲しいんじゃ。悪いのはワシじゃからの〜。」
「許すも何も絶対手出しさせないから。」
俺がレイに釘を指す。レイはすぐに人化してにこやかに笑う。
「メルダ、私ね、今ならあなたの気持ちわかるよ。あなた、人に心奪われたんでしょ?軍を抜けてでも追手が来ても一緒にいたいと思ったんでしょ?ふふふ、私も抜けたんだ〜。」
そう言いながら俺に抱きつくレイ。やっちゃんが引き剥がしにかかるが、無理とわかると俺に抱きついてきた。揉みくちゃであるがすごく幸せだ。
「ゼロ様が?人に??恋?ハェ?」
口を開けて放心状態のメルダ。もうあまりのこと過ぎて理解できないらしい。
レイはへたり込んでいるメルダの前に立ち座り込んだ。
メルダをぎゅっと抱きしめて言う。
「あなたは間違っていないわ。だから安心して。長い間怖い思いをさせてごめんね。」
メルダがすごい涙を流して泣き始めた。
「はい、怖かったです怖かったです・・・。」
レイにぎゅっと引っ付いていつまでも泣いていた。