嫌われ者
こちらの世界は・・・もう平和そのものである。
帝国の睨み合いというものがなくなり、国境というものもなく、人族も、魔族も関係なく至る所で楽しく生活している。
「恵様、1000頭の搬送ドラゴンが誕生しました。すべて性能も申し分ありません。使用の許可をおねがいします。」
「はい。」
俺の代わりに印鑑を押している影武者。影武者は最初の4体の魔物がずっと責任を持って担っている。
俺の代わりであるため、戦闘力も申し分なく、刺客を何度も返り討ちにしてはその雇い主の始末までしっかりと行っている。
何故かいつまで経っても俺への暗殺行為に終わりがこない。恨まれているレベルが半端無いのだ。
心当たりがないのでとても困っている。
「恵様、今日は何して遊びましょう?」
シャロンが俺の膝の上に座って笑いかけてくる。
「おい、シャロン!恵様と遊ぶのは私の番だろう??お前は一昨日遊んだところだぞ?今日は私だ、向こう行ってろ!!」
ジュディがシャロンの襟を掴んで俺の膝から下ろす。
「ああ!!もう!!襟を引っ張るな!!服が乱れるでしょ??わかったわよ!!もう!!」
服を正しながら怒って向こうに歩いて行く。
「恵様、そう言えばルナリスが呼んでいたわよ。ルナリスの国に行ってみる?」
ルナリスは闇の神々でハウンの対を成す存在だったもの。今では一つの国を築いて、そこの王様をやっている。ルナリスの治める国には全く魔物が居ない。いる時もあるが、それは一過性のもので飛行できるものがたまに降りてきただけ程度だ。
といっても、魔物の居ない安全な世界というのが売りなので、いてもすぐに駆逐される。
「何の用だろう??行ってみるか・・・。」
「ルナリスのところに行くのですか??それなら私もご一緒しても?」
ハウンが嬉しそうにやってくる。
「いいんじゃない??テレサも喜ぶと思うし。」
テレサはルナリスが創りだした神々で、ルナリスの妻をしている。本当なら最古の神々の作った神々には生殖能力が全くなかったのだが、俺の願いで人族と変わらない生殖能力を与えている。
そのおかげで彼らの間にはかわいい男男子が生まれたわけだが、その子がハウンの娘と結婚してルナリスの国に住んでいるのだ。もちろんハウンと俺の孫にあたる子供が居て、それで会いに行きたいみたい。
「マナに会うのはいつ振りかしら??ふふふふふ」
嬉しそうに笑うおばあちゃん。
「マナに会うのが楽しみなのはわかるけど、自分の娘のことも気にかけてあげてよ。シーラがかわいそうだ・・・。」
俺とハウンの間に出来た娘はシーラと言って、ハウンに似てとても美しい顔立ちの娘だ。ただ、残念なことに俺のことが大嫌いで、俺は全く近づけない。何故かそうなったんだな・・・。なんでだろう??
「シーラに会うのは無理でしょう??恵様が近くに行ったら槍持って追っかけてくるわけだし・・・。」
「なんで俺ってそんなに嫌われてるの??」
俺が泣きそうな顔で聞くと
「ああ・・・それはですね・・・いろんな女性と・・・。まぁ多感な時期にそういうことをしていたから・・・。」
それでか・・・。
「俺って娘にものすごく嫌われているのはそのせいなの??」
「ええ・・・言い難いですけど・・・。それですね・・・。私もなぜあんな男がいいの?と何度も聞かれましたし・・・。レイややっちゃんの娘にも同じように聞かれましたよ?笑うしかない私達の身にもなって下さい。」
悲しい顔をして俺を責めるハウン。申し訳ない・・・。
実を言うと俺はほぼすべての娘に嫌われている。シーラほどではないが口を利いてくれるものは数人しか居ない。全員がこの屋敷には近づかず、俺に会いに来るなんてこともない。寂しいお父さんなのだ。
「俺と話をしてくれるのはチアだけかも・・・。」
チアはシャロンとの間に出来た娘で、俺のことを唯一と言っていいほど『愛している』と言ってくれる娘だ。
それでもこの屋敷にはいないから、会いたければ魔族領に行かなくてはいけない。
なぜ魔族領かって??なぜなら・・・レイリーの妻だからだ。シャロンの美しい顔をそのまま引き継いでいてレイリーに求婚されてそのまま魔族領に行ってしまったのだ。
レイリーに求婚されてというのがかなりのものらしく、そのせいで最初の妻である3名とはかなりやりあう仲になっている。
もうごちゃごちゃになるほど、俺の娘や息子たちは色んな所に嫁いだり、婿に行ったり、すごいことになっている。そのため国同士の繋がりがかなり強く、同盟を超えてすべてが血縁みたいになりつつあるのだ。
「レイリーとミシュラもそこに居るらしいから。なにか重要な話があるんだって。」
「ふ〜〜〜ん。」
俺はジュディを抱き寄せて瞬間移動する。もちろんルナリスの作った国、理想郷メリッサに。