葬式
俺は今・・・葬式に参列している。
彼には世話になりっぱなしだったな。俺のために頑張ってくれた。
「恵さん・・・どうか安らかに・・・。」
俺の目の前で年老いても可愛らしい顔立ちの女性が涙を拭いながら花を棺に入れている。
すすり泣く周りの人々。そして・・・
「はぁぁ。自分の葬式っていうのも変な感じだよね?」
「まぁそうね・・・。私達は後どれほどの身内の葬式に出ないといけないの??」
俺の隣で喪服を着ているやっちゃんが言う。
「そうね・・・自分の孫までと踏んでも相当な数よ?どうするの??私・・・自分の子供や孫の死ぬ姿はさすがに見たくないんだけど・・・。」
レイがアイスを口にしながら言う。誰だってそうだろう。子供の死に目になんか誰も会いたくはないはずだ。
「恵様は子供が多いから大変よね?全員にそれぞれ・・・数えるのが嫌なくらい居ますもんね・・・。」
ハウンが指折りながら数えて笑い、俺をからかう。
「恵はこの場にいるほぼ全員と結婚した強者だからな。で、これからどうするんだ??」
マッキーが脚を組みながら椅子に凭れて言う。
「もうこっちの世界では用事はないだろう?自分が死んだんだし・・・。行き来も要らない。だから向こうに専念すればいいと思うんだけど?」
俺には子供が沢山いる。こっちの世界にもだが、向こうの世界にもいっぱい居る。
名前を覚えるのがものすごく大変なのだが、それを間違うようでは親失格である。だから増え続ける子どもたちの名前を覚えるのに必死になっている。
俺には妻も沢山居る。向こうの妻といえばミシュラから始まり、そして最後はまだこないみたいだ。
こっちでは
レイ
やっちゃん
マッキー
そして森先生。
数年ごとに結婚離婚と忙しい生活を送ってしまう。
そのせいでやっちゃんのお母さんにはものすごく呆れられてしまうが娘がそれでいいと言っているからと許してくれた。優しい人だったな・・・。
その後、レイと結婚。離婚したやっちゃんともずっと生活し続けるという変な家族構成で生活したのが懐かしい。
マッキーとの結婚はやばかった。人気絶頂の彼女と結婚した一般人として晒されてしまったのだ。
そのせいで襲われること数えきれず・・・。仕方なく2年ほどで離婚する事になる。
ただ、マッキーとの間には子供は4人いる。離婚してからも子供を作っていたからね。
最後の妻は森先生だ。彼女は先ほど俺の前で涙していた女性である。
彼女はずっと俺と結婚生活を送っている。なんと言っても生活できる時間が限られているから・・・。
彼女は教え子との結婚のせいで教員という立場を失いはするが、専業主婦として俺をしっかり支えてくれた素晴らしい女性だ。俺を愛し続けてくれて今現在も愛してくれている。俺が死ぬ時、ものすごく悲しい顔をしていたが
「あなたと一緒になれて私は世界一幸せでしたよ。」
と言ってくれた時には嬉しい半面、少し申し訳ない気持ちになってしまった。
ちなみにハウンとはこっちでは結婚していない。だから俺との間に子供も居ない。ハウンは高田先輩と結婚して幸せに人生を終えている。
高田先輩はハウンと一緒になるためにものすごい努力をして一流の大学から一流の会社に、そして独立して最終的には世界が認める会社に成長させる。最初に出会った時とは別人のように温厚で素晴らしい人物になっていた。まぁもう亡くなってるんだけどね・・・。その後をハウンとの間に出来た子供に継がせて、まだ大きく成長し続けている。こちらではハウンもものすごく幸せそうに人生を全うしている。
この場にいるものは全て一度死んだことになっているのだ。そうしないとどうにもならないからね。
「それじゃァ向こうの世界に行きますか?_」
俺の言葉に
「そうね。メグミともお別れしたわけだし。」
「恵くんの葬式・・・地味すぎだったわね。なんであんなに地味にしたの?」
「え?金は妻と子どもたちに残したいでしょ?ただ焼くだけのことに金を使うのもね・・・。」
「ふふふ。恵様らしい。」
俺の財産は莫大だ。医者として成功し、不老技術の構築のおかげで莫大な金が永久的に入ってくる。
やっちゃんのいいたいことはその割に地味だと言いたかったのだろう。
不死の技術も開発してやろうかと思ったがそれをしてしまうと未来ある子供の存在が大変なことになりかねない。考えてみれば死なないのだから人口が爆発する。そうなると子供の存在が危険になるのだ。そうなれば・・・考えなくてもわかるだろう。
今の欲深い人間には不老技術でも過ぎたものである。不死の技術に関して俺はしっかり願いで塞いでおいた。
この先絶対に開発できない技術、それが不死の技術だ。
「おかえりなさいませ!恵様!!」
俺の前にいるクロエ。
「ただいま。クロエ。」
クロエはジルと結婚して俺の元から去ってはいたが、戻ってきたのだ。
理由はジルの浮気である。
俺にその辺りは責めることができないので、何も言っていないがクロエにとっては相当堪えたようで
「信じていたのに〜〜〜!!」
バチコ〜〜〜ン!!
と平手打ちをしてジルが再起不能にする。死にはしなかったがそのせいで冒険者は廃業。今は貴族として頑張っている。
それから結構な月日が流れて俺達は気付くのである。
種族に関係なくレベルが異常に高いと死なないことに。寿命すらなくなっているように感じる。
俺達の世界とそれほど変わらない時間が流れているのに人族であれば当の昔に死んでいるこっちの世界のジルも、荀攸も、そしてその子供たち、サミュエルにメリッサ、浅田たちも全て若い姿のまま今現在この城にいる。
とは言え向こうの生活がある者達はそれを終えるという作業を俺の願いで行っている。
そうしないといずれ気づかれるからね・・・。