研究所爆破
「そろそろ始まる時間だね?準備いいかな?」
「さっさと終わらせて遊びに行きましょう?」
「向こうで操られている人は最後まで殺しちゃダメだよ?殺すと色々面倒だからね?」
「ええ、わかっているわ。最後まで手を出さない。それでいいんでしょ?」
「メグミ・・・で、どこまで破壊していいの?」
「研究施設は跡形もなくでいいよ。中にあるデーターは魔族領の白衣の研究員が欲しそうだったから持って帰ること!!」
「それなら施設ごと持っていけば??」
やっちゃんがごもっともなことを言う。
「そうですね。噂ではデーターを抜き取ってもその装置がないと見れないとかいう物も存在するらしいですし。」
ハウンまでそんなことを言う。たしかにそんな話を何かの映画で見たな・・・。でもあれって本当なの??
「あれは本当らしいわ。違うものでファイルを開こうとするとそれを知らせるソフトがあったり、データを消したりするらしいわ。」
「そういう話・・・どこから入手するの?」
「そういうのが好きなお友達が身近に居るのよ。」
ハウンが笑顔で言う。
「あっそう・・・。じゃぁ施設はそのまま無傷でお願いできるかな??空間切り取って持って帰るから・・・。」
「じゃぁ準備は??」
「おっけ〜〜!!」
「いいわよ!」
「どうぞ」
誰ともつかぬ格好に変身する俺達。
そして俺はお馬鹿3人娘を連れて移動する。サミュエルの教えてくれた施設へ。
「お前ら!!止まれ!!」
銃を持った男が俺達の前に立ちはだかる。
「よ〜〜!!俺だよ!!元気?」
「ああ、元気だとも!!あんたか・・・よく来たな。中に入るといい。」
銃に手を置き、俺の前に立っていた男は笑顔で俺達を通す。
周りの兵士に手を振っても手を振り返してくる。
「ねぇ・・・これって・・・」
「こいつら全部、リム達の眷属だよ。俺達に逆らうことは絶対にない。それどころか何かあれば平気で壁になって死ぬよ。」
「まぁ怖ろしい・・・。じゃぁこの施設すべて??」
「ああ。もう・・・俺の家みたいなもんだよ。」
「じゃぁ案内頼んだら??」
やっちゃんが笑いながら言う。
「そうだね。でもね・・・もうすぐ・・・」
俺が話し終える前に手を振ってこっちに駆け寄ってくる女。
「あぁ!!来たのね!!待ってたわ!!いつ来るか楽しみだったのよ??」
俺の腕にしがみつく女をものすごい形相で睨むレイ。頼むから殺したりしないでね・・・。
「何この女?」
「ああ、この人はね・・・」
「私はミネルバ!よろしくね!!ここに来たいなんて変人がこんなにいるなんて〜〜!!なんてね〜〜。」
大笑いしながらレイややっちゃん、ハウンの方をバシバシ叩く。
何故か3人はものすごい不機嫌だ。
「施設の最深部にお願いできる?」
「あなたの願いだもん。それくらい聞くわ!!でもね・・・絶対内緒よ〜。でないと国があなた達を消しにかかってくるから。もちろん私も消されるからね〜。」
ものすごい怖ろしいことを笑いながら言う。こいつの頭は大丈夫か?本来ならそう思ってしまうだろう。
女はセキュリティーカードを通して、生体認証をパスしてどんどん奥に俺達を通す。
「ねぇ、ミラ!!この設備のセキュリティー全て落としてくれる??カードを出したり目を差し出したりが面倒なのよ!!」
「そんなことできるわけな・・・」
女が断ろうと椅子を回して俺達の方を向く瞬間に俺を案内していた女がその女の首に自分の指を突き刺す。
「うるさい・・・私に恵様の前で恥をかかせるな・・・。」
「「「え??」」」
レイとやっちゃん、そしてハウンが驚く。
「え??なんで??ダリアがここにいるのよ??」
「ははははは。面白いでしょ??シャロン様が私をここに送ってくれてこの姿の女と入れ替わったの。この女は何処かで遊び呆けているわ。後で罪をかぶってくれるものが居ないと困るでしょう?」
「でもあなた・・・人でしょ??魅了も眷属も使えないでしょ??」
「まさか!!弥生様は私の病気をどのように思っていたんですか??私の中にはヴァンパイアのウィルスが残っているんですよ?それがあれば魅了も眷属も使えます。ただ、私の体の免疫が私の体を変異させないだけです。だから移すつもりなら・・・ほら。」
ミラという女の首に刺さっていた指を引き抜くと血が全く出ること無く、一心不乱に女が作業し始める。
ビィィィィィィ・・・!
警報すらも止まってしまう。そして・・・音もなく赤い警報灯だけがクルクルと回る。
「じゃぁ行きましょうか?案内はバッチリですからね〜。ははははは」
結構な時間この研究施設で生活していたダリアはこの場所のすべてを把握している。
「ダリアって・・・向こうにも居たわよね?」
「ええ、居たわ。だって、ミューアス滅ぼした時に遊んでいたでしょ?」
「私もそれ聞いた。ダリアとヴァンパイアとラウルで遊びに行ってそうなったって。」
3人共なぜ気づかない・・・。俺達もそういう存在じゃない?あっちにも居てこっちにもいる。
「旅人っていいですよね〜!起きている時間が長くて楽しぃぃぃぃ!!」
ダリアがスキップしながら前を歩く。すると
「止まれ!何をやっている??」
銃を突きつけてダリアが変身している女に銃口を向ける。だが、全く意に介さず素早くその男の横にべたりくっつき頚に指を突き刺す。
「ねぇ、この先にどれくらい兵士がいるの??」
「ぐ・・・・が・・・・・・・・23人・・・」
「じゃぁ全員殺してきてくれる??研究員は絶対傷つけないでね?」
「わかり・・・ました・・・。」
指を引きぬかれた男はフラフラと来た道を逆上って行く。そして突き当りの部屋に入っていく。
しばらくして
「ぜ・・・全員・・・しま・・・」
話し切ることなくその場に倒れて事切れる。
銃弾をかなりの数浴びてい事切れたようだ。
だがおかしい・・・ここには似非の自称究極戦士がうじゃうじゃいるはず。何故出てこない??
「彼らなら私が全員始末しています。目障りだったとかではなく、あいつら・・・鼻が効くみたいで、私の存在に気づいたからです。まぁ発狂しあって殺しあわせたというのが真実ですけどね〜。」
怖ろしい・・・ダリアは似非共をすべて同士討ちさせたようだ。そんな大きな事件があったのになぜこれほど警備が手薄なんだ??
「1体だけ逃してそれを追いかけていますよ。残りの馬鹿な似非たちが。」
ダリアは一人操って撹乱させているらしい。
「あとは、ほとんど操られているから事件が起きても騒動になりません。皆無関心です。」
「ああ、ここです。」
ダリアが俺達を見ながら扉をあける。セキュリティーが切れているから何もせずに開く扉。
パンパン!!
ダリアの胸に銃弾が当たる。そしてそのまま倒れるのだ。
「なぁぁんてね〜。」
兵士の頚をねじり切るダリア。倒れると同時に一瞬で兵士の後ろに周り頚をねじっていたのだ。
「「「「「キャァァァ!!」」」」」
しゃがみこんでいた研究員たちが悲鳴を上げる。
震えておもらししているものがほとんどだ。
「ああ・・・手際がいいですね。こう言う情報が入っていたんですよ〜。だから私はこの場にいませんが、よろしいでしょうか?」
PCのモニターに映るメガネの女性。
俺がサミュエルの見せてもらっていた人相書の女だろう。
サミュエルは絵が旨いわけでも何でもないと今気づくが、メガネで無頓着な髪型、話し方が一致している。
「ああ、構わないよ。で、君は何処にいるの??」
「この施設にはいませんよ。最近情報をコピーしていたバカが居たのでおかしいと思いまして。ですので私は結構前から避難していました。怖いじゃないですか??変な兆候って。」
モニター越しに笑う女。
「こっちから遠隔操作で自爆させますよ。早く逃げて下さい。と言っても後30秒ですけどね。私が生きている限りこの研究は続きます。残念でしたね〜。」
「ビィビィ!!ビィビィ!!自爆装置が作動しました。これにより半径30キロ圏内は滅菌されます。できる限り離れて下さい。これは訓練ではありません。繰り返します。・・・」
『デュラン!!』
俺が願うと俺の目の前に笑い続けている女が現れる。
警報音に気づいて女が笑うのをやめる。
「・・・え?」
キョロキョロしている女。
「自爆するよ。あんたも逃げたほうがいいって。」
俺達がその女の間抜けな顔を見て大笑いする。
「じゃぁ出ようか?俺達は。」
「「ええ」」
「自分の仕事場と死ねるなんて幸せね。」
俺の言葉を聞いて俺の方を見る。
レイ達のセリフにそれぞれを見てキョロキョロしている女。
何が起きたか全く理解できていないようだ。
俺達は研究施設を出る。そしてそのまま日本にある俺の家の自分の部屋に帰ってくる。
「爆破してよかったの??」
やっちゃんが口を開く。
「うん。あれは俺が踏み込んだと同時に偽物になっていたからね。あそこの土地ごとごっそり入れ替わっているよ。それに気づいた奴は居ないんじゃない??」
「それ・・・黙ってやったの?」
ちょっと不貞腐れるレイ。
「だって、君たち、何かあったら理性ぶっ飛んでメチャクチャするでしょ??だから降り立った瞬間に入れ替えたよ。」
「任務完了。そっちは?」
「はい、こっちも終わりましたよ。」
サミュエルに連絡を入れると成功したという。まぁ当然かな?
俺がサミュエルの報告にニヤけていると俺を羽交い締めにするやっちゃん。
え?と俺がなっていると
「そっちは?じゃない!!」
レイが渾身の力で俺の腹にパンチを入れる。
「ぐは!!」
「なんでそんなに信用ないのよ?」
「そうですよ!!いままでそんなことありました?」
「ほんと!!恵くんって失礼よね?」
「恵様は私達をバカだと思っているんですか?」
「メグミって・・・私達のこと軽く思っているのよ。」
「恵くん!!それほんとう?ちょっとひどくない??離婚よ離婚!慰謝料にあの国をもらいましょう!!」
「そうだね〜〜!!3人でそれぞれの帝国をもらおうかな??手切れ金代わりに!!」
話しながら何度も俺の腹にパンチを入れ続けるレイとハウン。
「ちょっと!!私もそうしたいんだから代わりなさいよ!!」
やっちゃんが俺の後ろで怒っている。
「はははは。恵様は人気者だな〜。あ!!私は先に向こうに戻っておきますね!!コレを使うんだったな??」
ダリアがポケットから何やら訳のわからぬ札を出して、羽交い締めされて動けない俺の腕を掴んで俺の親指をその札に押し付ける。
「じゃ!そういうことで〜」
光の粒になって消えるダリア。
「ぐえ!!げふ!!ごは!!」
俺はずっとサンドバック状態で泣いている。
誰か・・・助けて・・・