本性
田村さんは俺が好き。そしてレイが嫌い。それ以上に自分のことが嫌いになってしまった。
そうおもうと・・・。
時間の止まった世界
この中で動くものは俺達だけ。
その俺達が黙ってしまうとこの世界には音がなくなる。
究極の静寂の中、やっちゃんが言う
「あなた達はふたりきりに出来ない。誰も気にしないけど私は許さない。」
すごい形相だ。そしてすごい覚悟だ。
「恵くん、私はあなたとレイを絶対に同じ屋根の下、住まわせない。そのためならなんだってする!
だからお願いを聞いて欲しいの。」
俺をまっすぐに見つめる。真剣な目だ。多分、誤魔化しも嘘も有耶無耶にするのも通じないだろう。
「何をすればいいの??」
「お願いを叶える魔人にお願いして欲しいの!」
もしかしてさっき言ってた願い?レイと知り合う前に戻すっていう・・・
それは絶対聞かない!!聞くわけがない。
「レイと知り合う前に戻せなんて自分本位なやつじゃないからね。そんなのレイに完敗したことになるから絶対してやらない。」
俺の考えを見抜いて睨んでくる。
ごめん、そんな単純なやっちゃんじゃないよね。
何故か缶コーヒを飲んでいるレイ。どこで手に入れたんだろ?
「こっちの世界の再設定をお願いしたいの!!」
へ?再設定??なんの??
「今の設定ではって勝手に設定扱いしているけど、あなたとレイは兄妹なのよね!?それを私とレイを姉妹にして欲しいの。そうすればあなた達は同じ屋根の下にいなくなる。そうすればもうエッチなことも出来ないでしょ!!」
「ブゥゥゥゥゥゲホゲホゲホッ!」
レイがコーヒーを盛大に吹き出した。綺麗なお嬢さんはそんなことしてはダメです。
エッチやっている前提になってるんだ。レイが吹き出したのもきっとそこだろう。
「向こうも私とレイが一緒の部屋であなたは一人で寝ればいいのよ!そうすればあっちでもエッチできないでしょ?」
真っ赤になりながら説明するやっちゃん。
「ゲヘゲヘゲへ、ゴホゴホッ、グフグフグフ」
何か言おうとしているけど全く言えないレイ。ちょっと、擦りに行くから待って。
俺はレイに元に走って行って背中を擦った。
「大丈夫か?ちょっとゆっくりして。女の子がコーヒー吹かない。」
咳き込み続けるレイ。さすり続ける俺。レイは相当びっくりしたんだろう。
「ゲホ、生まれて初めて死ぬかと思った。あのね!!やっちゃん!!」
「え?あなたもやっちゃん呼び?」
「そう!!やっちゃん!!私とメグミ、まだキスまでしかいっていないわよ。」
「なんだと!!?キスはしたんか!!」
エッチやってる前提だったくせになんでキスで怒る?
「いつしたんだ??私も混ぜろよ!!」
ワナワナ震えるやっちゃん。
わけわからなくなってきている。キスと聞いて混乱している。
「向こうの昨日の晩よ!あなたいなかったじゃない!!」
意味のわからない方向に進むレイ。
何だこの口論?いたら混ざっていたのか?しなかったのか?どっちなんだ?
頭痛くなってきた。
ちょっと取っ組み合いになったんだけど。
俺じゃ止めれないよ。
もうどうにでもなれ。って放っとけるか!!
俺が止めに入ると巻き込まれて俺の目に入っていた美しい朝日に照らされた公園が見えなくなった。
「あ、俺、巻き込まれて死んだんだな・・・。」
そう思いながら意識がなくなった。
・・・
どれくらい経ったのかな?俺がレイの膝の上で目覚める。
あ、これ、前に願ったやつだな。ということは殺られたのか。
そっか、死んだんだな。
そう思って起き上がると案の定鼻血出てた。ちゃんとそこも願いが再現されている。
「あ、喧嘩やめた?」
俺が起き上がると
「「ごめんなさい。」」
俺に頭を下げて謝る2人。俺が死んだことで収まるなら安いもんだよ。
君たち2人は喧嘩しちゃダメ。
きっと多分だがこの世で最強の部類に入るでしょ?
ちょっと遠くを見ると血だまりがあった。あそこでおれは死んだんだな・・・。
悲しくなってきた。俺の殺害現場がそこにある。
ふふふ、悲しいのに笑いが込み上がってくる。
「二人共減点100だな。」
ポソッと俺が言うとレイは悲しい顔をしてやっちゃんは嬉しそうな顔をする。
悲しい顔はわかるけどなぜ喜ぶ。
「これでこそ足を引っ張っている感じがするわ!!」
死なば諸共的なのはやめておいたほうがいいよ。
頭を抱えて落ち込む俺。
この2人といると頭痛い。
ちょっと二人共、俺の恋愛対象から外そう。
そうしよう。でないと俺の心が、魂が休まらん。
いっそのこと違う人を好きになるか。
「あ、そうだ。レイをやっちゃんの妹にだったね。デュランお願いできるかな??」
レイがブンブン首を振る。
「ちょっとそれいや〜〜!!絶対嫌〜〜なんでなんで??殺しちゃったから??減点されたから??嫌だ〜!!うわ〜〜〜〜ん」
泣き喚くレイ。
嬉しそうにほくそ笑むやっちゃん。
やっちゃんは急に性格悪くなったね。本性なのかな??
全部自分の気持ちを言ってスッキリしたのか開き直っている。
それはそれで清々しい。
はぁテンション上がらない。まだ休日始まったばかり。朝日が俺を照らし続ける。
「その願いは叶えていいのか?」
デュランがわざわざ出てきて俺に言う。
俺はベンチに座って下を向いたまま、何も言わず指でオッケーのサインをする。
レイは慌ててデュランをつかむ。
「それ叶えたらこのまま括り殺すからね!!」
蛇に睨まれた蛙
そう云うに相応しい。
なんで出てきた。こうなるのわかっているだろ?
「我はどうすればいいのだ〜〜??」
出てきたお前が悪い。殺されて願いを叶える役はミドラにでも継がせればいいのだ。
死んでから結構ダークサイドに落ちた俺。
「じゃぁ、時間を動かし始めて。さっきの願いはなしでいいから・・・。それと・・・血だまり消しておいて。」
俺は落ち込んだまま家に帰ることにした。