久しぶりの遠出!!
「この街での散策も面白みにかけるから、どこか違う国に行こうと思うんだけど?」
俺の意見を聞いて頷く魔物っ娘たちとダリア。
「私、ミューアスに行きたいです!!古巣の様子も観たいですし・・・。」
ダリアが自分の以前の住まいを気にしているようだ。
「弥生様ったら奪うだけ奪っといて全く管理とかしてなさそうですし・・・。多分、きっと・・・ものすごく荒れている気がするんですよね・・・。最悪、誰かが住んでるかも・・・。」
ものすごい不快な顔をしながら泣いた振りをするダリア。
「それはたしかに嫌だな・・・。自分の持ち物が勝手に人のものになるっていうのは気持ち悪いもんね。ちょっとやっちゃんに行かせてみるよ。」
俺の言葉に嬉しそうに頷くダリア。
「弥生様を瞬間移動であそこに放置してください。ほしいほしい言うだけ言って奪って放置なんて許せませんから!!」
「あなたもひどい目に遭ってるのね・・・。」
ダリアの言葉にシュムが悲しそうな顔をしてダリアを見る。
その言葉を聞いてダリアが今まで不満に思っていたことをブチブチとシュムたちに聞かせ始める。
「ちょっと・・・恵様のお連れの方でしょ?目の前でそこまでボロッカスに言って大丈夫なの?」
顔色を悪くしてシュムがダリアにそう聞くと横に居るリムもウンウン頷いている。
「恵様はそれくらいのことで怒ったりしないわよ!!何ならレイ様の悪口も言ってみようか?」
「あ!それはやめておいたほうがいいよ。俺が怒らなくても直接制裁に来ると思うから。」
レイのことを扱き下ろす気満々だったんだろうが、俺の一言で黙るダリア。
「メイリーンさんみたいになりたくないから言わないでおこう・・・。」
「そうよね・・・。あの人無茶苦茶なのよね・・・。手加減してくれないから・・・。」
以前ボロボロにされた経験のあるラウルがその時に失っていた腕をさすりながら涙目になっている。
「あの時はごめんね。アホ3人にはきつく言っておいたから。」
俺が謝ると恵様は悪くないですと言ってくっついてくるラウル。可愛いな・・・。
「じゃぁ、やっちゃんには・・・。これでよし!!じゃぁ俺達もミューアスに行くよ!!あ!!俺、ミューアスで指名手配されてるからちょっと変装・・・。」
俺は願いでやっちゃんを以前ダリアが根城にしていた要塞へ瞬間移動させ、俺はチビ恵の姿に変わる。
「変装??何も変わってませんよ??」
シュムが頭を傾けて俺を不思議そうに見る。
「君たちには普通の姿だけど、周りから見たら12歳位だから。」
「ああ、たまに姿が変わっている時のアレですね・・・。」
リムはわかったようだ。
俺達はミューアスから少し離れた草原に立っている。
いきなり街に移動しても良かったんだけど、人に見られると困る。だからこの場所なのである。
「あそこがミューアス。色んなモノがあるから楽しもうね!!」
俺が笑顔でそう言うと皆、嬉しそうに飛び跳ねる。
そして魔物は街に入れないので虫カゴに移動・・・。
「私はこのまま堂々と入ります!!」
嬉しそうに自分のノートに頬摺りしながら微笑むダリア。
自分のノートを使うのが嬉しいようだ。
意気揚々と門の前に出来た入国待ちの列に並ぶ。
「恵様・・・。ワクワクします・・・。他の国に自分のノートを持って入るなんて!!」
眼を輝かせてウフウフ笑うダリア。人に戻れたことが相当嬉しいようだ。
「ノート拝見〜」
つまらなそうに列に並ぶ人々のノートを見て歩く衛兵。
俺達のノートを見るなり
「おい、お前ら・・・。子どもと獣人が何をしに来たんだ??親は??」
俺を見て立ち止まって怪訝そうな顔をしている。
「私が親代わりだけど??なんか文句あるのか??」
ちょっと不機嫌な口調で衛兵に言い返すダリア。
「あぁ?獣人ごときが俺様に楯突く気か?その気になれば入国拒否もできるんだぞ?」
「はぁ??入れないだと??ほほぅ〜〜。どうか・・・ミューアスに厄災が降り注ぎいますように・・・。」
いきなり天に手を広げてダリアがわけのわからないことを言う。
「はぁ〜〜!!おまじないが聞いてくれる日を心待ちにしているからな!!もし、厄災が起きたら私を見つけて謝ることだな!!そうしないといつまでもひどい目に合うからね!!恵様!!ね??」
あぁ・・・俺に何とかしろと・・・。君まで俺の願いで何とかする気なのね・・・。
「・・・」
「なんだ??このチビに様付??気持ち悪い奴らだな・・・。言った通りお前らは入れてやらな・・・」
ズズ〜〜〜〜〜〜〜ン!!
「「「「「「うゎぁァァ!!」」」」」
「「「「「「ぎゃぁぁぁ!!」」」」」」」
街の中でなにか大きな音がして、それと同時に悲鳴が聞こえる。俺はまだ何もしていない・・・。まだデュランに願っていないのだ・・・。
「さすが恵様!!」
ダリアが嬉しそうな顔をする。
「ダリア・・・俺・・・まだ何もしていないんだけど??」
俺の言葉に目を見開くダリア。
「海の魔物が〜〜〜!!!!」
「「「ぎゃぁぁぁ!!」」」
どうやら街に海の魔物がうじゃうじゃ現れて大パニックになっているようだ。
俺とダリアが虫カゴを覗きこむとそこには
「・・・・・・・。・・・・・・・。・・・・。・・・・・・・・・・・・・。」
声を発すること無く、顔を紅潮させてものすごい怒っているラウルの姿が・・・。
指差しながら何か言っているようだが俺達には聞こえない。
どうやら俺をバカにした衛兵対する怒りのようだ。
「あの・・・恵様・・・。ラウルを止めなくても??このままじゃ・・・街がどえらいことになりますよ??」
「あ・・・。いや・・・。ダリアはどうなって欲しかったの??厄災がどうこう言ってたじゃない??今、この街は厄災に包まれているけど・・・。これでよかったの??」
「いや〜〜〜。まさかラウルが怒るとは思いませんでした。このまま町の人に何かあっても嫌なんで恵様・・・。どうにかしてください。」
ドド〜〜〜〜〜〜〜ン!!
ズズ〜〜〜〜ン!!
ガッシャ〜〜〜〜〜ン!!
あちこちでなにか壊れる音と、悲鳴と怒号が響く街の中。
「ラウル??」
「はい??」
笑顔で俺の前に現れるラウル。キョロキョロしているがなんで??
「先ほどの愚か者はどこですか??縊り殺してやろうかと思っていたのに!」
髪の毛が怒りのオーラでふわふわ漂っている。
衛兵なら街の中の騒ぎですぐに門を閉めて応戦しに行ったけど??