圧力
結論から言うと
ジルとクロエの結婚は許してもらえなかったらしい。
家柄がどうこう言われたとか。もうこれでもかというくらい頑なに拒否されたらしい。
そのせいでクロエがずっと押し黙っている。
「圧力かけようか?」
俺がお茶を飲みながら微笑んで言うと
「え?どうやって??父上はこの国の相当な有力者なんですよ?さすがに主様がメグミ帝国の皇帝であっても他の国ですから・・・。」
「そうね・・・本来なら圧力なんて無理だけど・・・実はね・・・」
やっちゃんがヒソヒソとジルの耳元で説明している。
「え???」
やっちゃんの顔を凝視するジル。やっちゃんがニッコリと歯を出して笑う。
その顔を見てから俺の方を見る。俺も同じ顔をしてみる。
「主様・・・なんてことを・・・。まさか・・・この国が乗っ取られていたなんて・・・。」
ヒソヒソ話した意味がない。
その言葉を聞いて申し訳無さそうに座っていたジルの姉がお茶を吹き出す。
「ゲホゲホっ!!何の話?乗っ取られた??誰に??」
咽ているジルの姉の背中を擦る女兵士。
その言葉に反応して俺の方を指さすアホ3人娘。
「いやいや、俺は後始末をしただけであって、その結果そうなっただけだし。」
「どういうことですか??あなたは何をしたんですか??」
「説明が面倒だね・・・。この国の皇帝のところに行こうか?」
俺がよっこらせと立ち上がると
「待ちなさいよ!!意味がわからないわ?この国の皇帝??そんなに簡単に会えるわけないじゃない?お父様だってアポ無しで会えないわよ?」
「行けばわかるって。」
俺は笑顔で瞬間移動する。この部屋にいるものすべてを連れて。
「あ、恵様。来られるんでしたら一言言ってください。色々用意しないといけないですし。」
庭の手入れをしている女性が俺に話しかける。
「庭師風情がなぜあなたに気軽に声を掛ける?」
ジルの姉が少し不機嫌になる。
「まぁその辺は皇帝と話せばわかるよ。」
俺はズカズカと皇帝の間まで歩いて行く。ジルとジルの姉はかなりビビっている。
大きな扉を開いて俺が歩いて皇帝に近づくと
「これは恵様・・・。出迎えず申し訳ございません。」
俺の前に床に膝をついて頭を下げるシュローデヒルム帝国の皇帝。名前は何だったっっけ?まぁいいや。
「いや、いいよ。君はこの国の皇帝なんだし。で、どう??楽しくやってる?」
「いえ、ものすごくつまらないです。そろそろ誰か替わってくれませんか?」
やっちゃんとハウンに目をやるシュローデヒルム帝国の皇帝。
その瞬間に目をそらす二人。
「あの・・・これはどういうことですか??」
理解できず顔をヒクヒクと引き攣らせているジルの姉。
ジルはもう理解したみたいでクロエの肩を抱きしめている。
「実は・・・」
今まであったことを話す俺。それを聞いて卒倒するジルの姉。
「デュランに頼んで記憶を改ざんしておいたほうがいいわね。これ・・・ジルの姉さんにはおもすぎたみたいよ?」
やっちゃんがそう言うと、レイとハウンも頷いている。
「ジル・・・いいかな??」
「ええ、姉上の精神を保つためにもおねがいします。」
「じゃぁ、クロエとジルの結婚を許可するように圧力かけて。お願いね。」
「かしこまりました。」
この国の皇帝をやっている俺の従魔がいい仕事をしてくれるはずだ。
俺達はまたジルの実家である屋敷に帰ってくる。
ジルの姉はジルに任せて俺達は与えられた部屋でくつろぐ。
そうして日が変わり朝が来る。
地球での生活は割愛。
召使が血相を変えて俺達が泊まる部屋に飛び込んでくる。
「朝早く申し訳ございません!!すぐにザルバーグ様がお話したいと!!」
俺の姿を見て大慌てで後ろを向く召使。俺・・・真っ裸なんだけど・・・。
どうやらこの国の皇帝から何かしらの圧力がかかったのだろう。