準備完了
俺達はクロエとジルの結婚式の準備を終え、2人を呼び戻そうとする。
「ドラコ・・・今どこ??」
レイが多分ではあるがあのドラゴンに通信機を使って連絡している。
「ザザ・・・これ・・・どうやって話すの?」
ドラゴンの声と思われる話し声が聞こえる。
「多分私達のものと同じであればこれだと思うけど・・・。」
クロエと思われる声が聞こえる。
「あの・・・レイ様ですよね?今ジルバームです。」
どうやら無事に着いていたようだ。
連絡がないからかなり心配していたんだよね・・・。
「準備が整ったんだけど、帰ってこれる?ドラコが縮んだりしていない??」
俺もそれが気になる。かなり遠回りしたはずだからガス欠していてもおかしくない。
「縮んではいませんけど・・・今・・・大変なことになっています。」
何やらトラブルまっただ中のようだ。
「何かあったの??」
俺が横から声を出すと
「あのですね・・・大きなドラゴンが街に飛んできたからパニックになって冒険者たちに囲まれています。それをジルさんが説得しているところです。」
「レイ・・・街に直接到着したそうだよ・・・。いきなりあのサイズが襲来したらそりゃパニックになるよね・・・。早く行って解決してきて・・・。」
レイが露骨に嫌そうな顔をする。それでも俺の冷たい目に観念したようでやっちゃんの袖を掴んで一緒に行こうと説得している。
まぁあとハウンも連れて謝って来なさい。3人がやらかした後始末をキッチリ自分達で片付けてきてください。
俺も一緒に3人に同行してジルバームに瞬間移動する。
俺達の目の前には剣を抜いた冒険者たちがドラゴンを中心に距離をとって対峙している。
この帝国にしてはレベルの高い冒険者がかなり集まっている。
「あの〜〜〜〜」
レイが申し訳無さそうに冒険者の一人に声を掛ける。
「うわ!!レイ様??ここは危険です!!今すぐ離れてください。ドラゴンという超凶悪な魔物が襲来しました。早く下がってください!!」
顔を赤くしてレイを静止しようとする冒険者。
レイの存在に気づいたものはソッチのほうが気になってチラチラ見ては顔を赤くしている。
「ママ!!」
ドラゴンもレイの存在に気づいたようで眼を輝かせて尻尾を振っている。
その風圧で尻尾側の冒険者が吹っ飛ぶ。
「クッ!!このドラゴン暴れだしたぞ!!フォーメーションを組め!!」
「待って待って!!この子は私のペットなの!!ジルの里帰りに貸し出しただけなの!!悪い魔物じゃないから武器をしまって!!」
レイが慌ててドラゴンの前に立ち冒険者を制止する。
レイに顔をスリスリし始めるドラゴン。それを見て冒険者たちは震えながら剣を鞘に戻す。
「レイ様がそういうのであれば・・・。しかしNo.1・・・レイ様と仲がいいんですね・・・。」
ものすごい嫉妬の感情がこの場を支配している。
ものすごい殺気のようなものがジルに向けて放たれている。
「ハハハ・・・そりゃぁ俺はNo.1だからな・・・。ははは」
ジルも感じ取っているようで脂汗をだらだら流しながらレイの横に立っている。
「クッ!ハゲの分際で・・・」
「筋肉ダルマのくせに・・・」
「極悪人みたいな顔のくせに・・・」
「やっぱ裏切りモンだな・・・」
「残り少ない毛をむしってやりたいわ・・・」
ヒソヒソとジルの悪口が聞こえる・・・。結構ひどいな・・・。
「ドラコ!!戻りなさい!」
やっちゃんがドラゴンに命令するとピカっと光って小さいドラゴンになる。
そしてそのままやっちゃんの腕に抱かれて眠りにつく。
「この調子じゃジルの実家にはいけていないんでしょ?準備出来ているけど時間はまだ大丈夫だから寄って行けば??」
やっちゃんがクロエとジルを気遣って話をしている。
「ハイ。ありがとうございます。それじゃァ行きましょう、ジルさん。」
「お、おう!!」
手を曳かれてジルバームに入っていく2人。もう尻に敷かれているのか?
俺達も後を追て街に入る。レイの後ろにはぞろぞろと冒険者の行列ができている。
レイの布の少ない服装に真っ赤な顔をしてチラチラ目をやっている。
「ジルの実家はどこなんだろうね?ギルドで聞いてみるか?」
俺の提案でギルドに行くとそこにクロエとジルが受付の人に挨拶をしている。
そして・・・
「皆!!聞いてくれ!!俺はこの人と、クロエさんと結婚することになった!!それでだ!!No.1をギルフォード様に返上した!!そしてギルフォード様とレイ様のためにファンのメンバーではなく、運営する側になろうと思う。だからこれからもよろしく頼む!!」
その言葉にギルドに屯している冒険者兼ファンクラブ会員が大声を上げる。
「よ!!幸せ者!!」
「ハゲのくせに!!」
「奥さんで来たんだからハゲを隠すんじゃね〜!!」
「あんな可愛い奥さんをもらうなんて!!隅におけね〜〜な〜〜〜!!」
「この裏切り者〜〜!!!」
「ジル殿バンザ〜〜〜い!!」
皆嬉しそうだ。
「ジル。改めておめでとう。これからも頑張ってね!」
いつの間にかレイが大きな花束を用意していてそれをジルとクロエに渡す。
うぉぉぉぉぉぉぉ!!
と地響きのような声がギルドに響く。
「俺も結婚してレイ様に祝福されて〜〜〜!!」
そんな声が上がるが・・・多分無理だよ。
大歓声で見送られながらギルドを後にする。
そして・・・
「ちょっと・・・ここ・・・」
「え?なにか??」
ジルがやっちゃんの反応に困っている。
「ジル様・・・お帰りなさいませ。」
ここの皇帝に拘束される原因となった貴族の住む領域の門番。
その男がジルに深々と頭を下げる。
「ねぇ・・・もしかして・・・あんた・・・ボンボン??」
やっちゃんの冷たい目。レイは門番に威圧的な態度をとっている。
「え?俺がですか??いえいえ、そんなことはないですよ・・・。」
目を泳がせるジル。
「あ・・・あの・・・レイ様・・・なぜそんなに門番を睨んでいるんですか??」
ジルがレイが門番を威圧し続けていることに気付く。
「この人、以前にメグミに見窄らしいって言ったの!!」
「いや〜〜〜、あの時は申し訳ありませんでした。まさか・・・お忍びだったとは・・・。申し訳ない・・・。」
俺にヘコヘコしている門番。
「別にいいよ。君は仕事をしただけだからね。」
俺の言葉にほっと胸をなでおろしている門番。
「そんなことはどうでもいいのよ。ジル!!あんたボンボンょね?」
やっちゃんがジルを追い詰める。
「あ・・・いや・・・すみません・・・平民のフリして冒険者やってます。俺は・・・一応貴族です。」
「こんな形して・・・貴族・・・笑うしか無いわね・・・。」
やっちゃんがちょっとにやけてジルの胸にパンチしている。
「それでお父様との繋がりが?」
「・・・はい・・・昔からの知り合いでして・・・。俺の父とも旧知の仲です。」
「クロエは知ってたの??」
俺がクロエに振ると・・・あれ??クロエの顔色がものすご〜〜く悪い。
「クロエ??」
俺がもう一度声を掛けると我に返って
「あ!!はい!!え??えっと・・・知りませんでした。故郷も知りませんでしたし・・・。」
たしかに知ってなかったな・・・。